浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

おおみや市民吹奏楽団ジョイントコンサート2015 ~ウェストファーレン・ウィンズを迎えて~

2015-04-27 10:10:42 | 吹奏楽

「おおみや市民吹奏楽団」の演奏を初めて聴かせて頂いたのは、今年1月25日に行なわれた「さいたま市吹奏楽協会第8回合同演奏会」でのことでした。

そして、その時、今回のコンサートことも知りました。

何とクラシック音楽の本場ドイツから、吹奏楽団を招いてジョイントコンサートを開催するとのこと。

うーん、実に興味がワキマスネェ。

と言うことで、2015年(平成27年)4月4日の土曜日に今年2度目となる“さいたま市民会館おおみや”へと向かったのでした…。

 

「おおみや市民吹奏楽団」は、年2回の自主公演を中心に活動されている団体です。

『1993年に秋山紀夫先生を中心とした発起人の方々の呼びかけに旧大宮市内在住または在勤の音楽愛好者』が集まった吹奏楽団とのこと。

地域に根差した活動と同時に、海外への演奏活動もされているとか。

なかなか活発なバンドのようです。

ところが私にとって同じ“さいたま市内”の吹奏楽団、いわば地元の団体にもかかわらず、恥ずかしながら、最近まで存在をよく把握しておりませんでした…。

それは、私が“さいたま市”でも旧浦和市在住ということも影響しているでしょう。( “旧大宮市”と“旧浦和市”は、現在では合併して“さいたま市”と言う政令指定都市になっています。他にお住まいの方々は、なかなか理解できないでしょうが、“浦和”と“大宮”は、それぞれに地域性や住民の意識に独自の文化を持っており、お互い“相容れない”部分があるのです。そのため、なかなか情報が入ってこない。まるで、よその町なのですね…。)

ですが、それ以上に吹奏楽コンクールに出場していないことも大きい。

様々なバンド(特に一般バンド)は、演奏会等の告知をできる限り、やっておられるのでしょうが、私のような吹奏楽愛好者ですら全部を把握することは無理だと思います。

そんな中で吹奏楽コンクールは、私にとっては、楽団の“見本市”的な意味合いが強い。(表現が失礼な感じがする方は、どうかご容赦下さい。)

つまり、コンクールで知る団体が圧倒的に多いのです…。

 

その「おおみや市民吹奏楽団」を指導されているのが、秋山紀夫先生。

全日本吹奏楽連盟副理事長をはじめ、様々な要職に付かれ吹奏楽の発展のために多大な寄与をされた方です。

いわば、吹奏楽界の“レジェンド”ですね…。

個人的に言わせて頂きますと秋山先生と言えば、“ブラスのひびき”の印象が強い。

私が学生の頃、日曜朝のNHK・FMでやっていた番組で様々な吹奏楽作品を紹介していました。

その番組のパーソナリティが秋山先生。

朝の時間帯に似合う爽やかな声で理路整然とした曲の解説を行なう様子に私も毎週、楽しみにしていた番組でした。

今回、初めてお姿を拝見する機会に恵まれ、実に感慨深く思いました。

そして、“あの頃”と変わらぬ“美声”は、昔と些かもかわらず、私の意識まで学生時代にもどった心持ちになりました…。

これからも、お元気でご活躍されることを強く望みます…。

 

一方、今回のジョイントコンサートでドイツより来られた「ウェストファーレン・ウインズ」について。(私には、この楽団について全く知識がございませんので、プログラムの楽団紹介にもとづいて書かせて頂きます。)

このバンドは、『ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州ザウアーラントに本拠地を置く、アマチュアのプロジェクト吹奏楽団』。

『前身は1982年に創立されたホッホザウアーラント音楽学校所属の吹奏楽団』でしたが、『1996年に独立』したようですね。

『オリジナル曲の委嘱やプロの演奏家との共演などを精力的に行なっており、数々の国際コンクールで優秀な成績を収めてい』らっしゃるとのこと。

アマチュアながら、実力のある団体と推察できます。

 

指揮をされる芸術監督のウルリッヒ・シュミット氏は、『1970年生まれ。ドイツ・エッセン市のフォルクヴァンク音楽大学』でトランペットを中心に専門の音楽教育を受けられました。

その後、様々な団体、音楽学校にて、楽器奏者や指揮者、指導者として活躍してこられた方のようです。

現在は、『ブレーメン近郊のジューケ市内の公立学校にて音楽教師として勤務。』

『ウェストファーレン・ウインズにおいては、当初は客演指揮者として1年間芸術監督を務め、その後2005年にフランツ・シュルテ=ヒュールマンの後任として音楽監督に就任しました。』

 

【第1部】

[演奏]ファミリーウィンズ和

[指揮]秋山 紀夫

 

ようかい体操第一 (菊谷 知樹/arr. 宮川 成治)

Youkai Taisou Daiichi(A Specter Exercise First)/Tomoki Kikuya

日本民謡組曲 (ハロルド・ウォルターズ)

Japanese Folk Suite/Harold L. Walters

 

【第2部】

[演奏]おおみや市民吹奏楽団

[指揮]秋山 紀夫

 

楽劇「ニーベルングの指環」第1夜「ワルキューレ」第3幕第1場前奏曲

ワルキューレの騎行 (リヒャルト・ワーグナー/arr. ロバート・ロングフィールド)

The ride of the Valkyries from the “Valkyries”:The Ring of the Nibelung/Richard Wagner:Arr. Robert Longfield

三つのジャポニズム (真島 俊夫)

  Ⅰ.鶴が舞う Ⅱ.雪の川 Ⅲ.祭り

Les trios notes du Japon/Toshio Mashima

  Ⅰ.La Danse des Grues Ⅱ.La Rivière Enneigée Ⅲ.La Fête du Feu

歌劇「ローエングリン」第2幕第4場より

エルザの大聖堂への行列 (リヒャルト・ワーグナー/arr. ルシアン・カイエ)

Elsa’s Procession to the Cathedral from the “Lohengrin”/Richard Wagner:Arr. Lucien Calliet

 

【第3部】

[演奏]Westfalen Winds e.V.

[指揮]Ulrich Schmidt

 

吹奏楽のための序曲 (フェリックス・メンデルスゾーン/arr. ジョン・ボイド、ウルリッヒ・シュミット)

Overture for Winds – for 11 Wind Instruments or Symphonic Band/Felix Mendelssohn:Arr. John Boyd, Ulrich Schmidt

時代の終わり -予兆《日本初演》 (ロルフ・ルディン)

Vom Ende der Zeit -eine Vorahnung/Rolf Rudin

巫女の詠えるうた (大栗 裕)

Miko no Utaeru Uta/Hiroshi Oguri

 

【合同ステージ】

[演奏]ウェストファーレン・ウィンズ&おおみや市民吹奏楽団

    Westfalen Winds e.V.&Omiya Wind Symphony

 

[指揮]Ulrich Schmidt

歌劇「ヘンゼルとグレーテル」第2幕より

夕べの祈りとパントマイム (エンゲルベルト・フンパーディング/arr. 鈴木 英史)

Evening Prayer and Pantomime from “Hänsel und Gretel”/Engelbert Humperdinck:Arr. Eiji Suzuki

 

[指揮]秋山 紀夫

日本民謡組曲「わらべ唄」 (兼田 敏)

  Ⅰ.あんたがたどこさ Ⅱ.子守唄 Ⅲ.山寺の和尚さん

Japanese folk song suite “Warabe-uta”/Bin Kaneda

  Ⅰ.Where are you from? Ⅱ.Lullaby Ⅲ.An ancient priest in a mountain temple

 

第1部が始まりました。

まず、「おおみや市民吹奏楽団」の関連団体だという「ファミリーウィンズ和(なごみ)」の演奏から。

「ファミリーウィンズ和」は、『老若男女を問わず参加OK』『子連れ参加OK』の『昼間に活動する市民吹奏楽団』というコンセプトのもと『音楽を楽しんで』いるとのこと。

秋山先生を常任指揮者に沖田千佳氏をトレーナーに迎えて活動するアットホームな団体です。

最初は、今、子供たちに大人気の「ようかい体操第一」。(と言っても“浦和のオヤジ”はよくわからないのですが…。)

団員の皆さん方のお子様たち20~30名くらいが演奏に合わせて“たいそう”を踊りました…。

それがとっても愛らしかった…。

1曲目が終わり、すんなり2曲目に進むと思いきや、ここで突然、秋山先生がマイクを握られます。

よく見るとフルートパートの中のひとつの席に花束が飾ってある…。

そして、秋山先生が訥々とした口調で以下の事を話して下さいました。

このコンサートの日より、わずか3週間前の3月14日、練習中にフルートパートの木村さんと言う方が、たおれたのだそうです。(プログラムに書いてある楽団員の名前の中に“木村真希子”さんと言うお名前が見受けられます。多分、この方なのでしょうか?間違っていたら、ごめんなさい。)

すぐに自治医大に搬送されましたが、残念なことにお亡くなりになったそうです。

病名は“くも膜下出血”、まだ、37歳の若さでした…。

そんなお話を聞いたからではないのですが、「ファミリーウィンズ和」の最後の曲、「日本民謡組曲」は情緒あふれる演奏に聴こえました…。

正直言って技術的な部分では、甘いところもありましたが、そういう部分を越えたところにある丁寧さが光る演奏でした。

日本のメロディをちりばめた、この曲は時に郷愁をそそり、時に物悲しく、時に快活…。

なつかしさに心奪われるのは、私が日本人だからでしょうか?

木村さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 

さて、ここで初めての休憩です。

この“さいたま市民会館おおみや”は、緞帳(どんちょう)があるんですよねぇ。

最近、あまり見かけなくなりましたが…。(“緞帳”がわからない学生さん、若い方々は、ご自分でお調べ下さい…。)

 

さて、第2部は、コンサートの主役、「おおみや市民吹奏楽団」の登場です。

最初の曲は、「ワルキューレの騎行」。

一般的には1979年にフランシス・フォード・コッポラ監督の映画「地獄の黙示録」で劇中音楽として使用され有名になりましたよね。(ちなみに、映画で使われた演奏は、ショルティ指揮、ウィーン・フィルだったようです。)

全体的に上品でキレイな演奏でした。

ただ、この曲はやはり、荒々しくして欲しかったかな?

何か迫りくる“威圧感”があってもよかったと思います。

2曲目は、真島俊夫先生の名曲「三つのジャポニズム」。

演奏前に秋山先生が曲の解説をして下さいました。

“優れた楽曲は、たとえ吹奏楽の曲であっても管弦楽へと編曲されることがある。例えば、カレル・フサの「プラハのための音楽1968」。そんな中でも、この「三つのジャポニズム」は、日本の吹奏楽の曲で初めて、オーケストラにアレンジされた曲なのではないか。”

こんな内容だったと思います。

まずは、“鶴が舞う”ですね。

日本の楽団のせいか“和”的なメロディが似合います。

表現力も増したような。

“雪の川”は、とにかく、木管ソロパートが素晴らしかった。

“祭り”は非常に盛り上がってましたね。

“チャンチキ”感がよく出ていて華やかでした。

それにしても何度も聴いた「三つのジャポニズム」ですが、本当に名曲です!

と、感慨に浸っていたら、作曲者の真島先生が会場にいらしていて、ビックリ!

やはり、秋山先生の力がなせる技なのでしょうか?

第2部、最後の曲は、吹奏楽ファンなら定番の「エルザ」ですね。

静かで厳かな雰囲気をよく出していましたね。

曲全般を通して、金管楽器がよくまとまっていて、演奏を“リード”していました。

ただ、全体的にピッチが気になりましたが…。

 

第3部は、いよいよ「ウェストファーレン・ウインズ」の登場です。

アマチュアとは言え、本場ドイツの楽団がどのような演奏をしてくれるのか非常に興味があります。

指揮のシュミット氏の挨拶に続いて、最初の曲は、メンデルスゾーンの「吹奏楽のための序曲」。

滅多に聴けない曲ですけど、今年は2度目になりますね。(今年3月に芸劇ウインドオーケストラの演奏会で聴かせて頂いた以来です。)

前半のゆったりした部分、最初の方で少し、アンサンブルにぎこちなさを感じたところもありましたが、すぐに安定した演奏に。

それにしても、とても透明感のあるサウンドです。

後半の速いテンポのところに入るとエンジン掛かってきましたかねぇ。

曲のフレーズの流れが見事で自然な感じに聴こえました。

また、技術的な面でもアインザッツの処理とかが見事でステキな演奏でした。

さすがに「芸劇ウインドオーケストラ」での演奏には及びませんでしたが…。

2曲目は、日本初演の「時代の終わり -予兆」。

プログラムの曲目解説を見ますと、かなり哲学的なテーマを扱った曲ですね。

ざっくり言うと「死」に対する考え方を扱った曲と言う事でしょうか。

作曲者のロルフ・ルディンは、彼自身の『宗教的、およびスピリチュアルな思考や神学的なテーマについての探求を反映』した作曲活動を行なわれているようです。

難しい曲でした。

いわゆる“現代曲”です。

私のような素人には、どう評価して良いか、わからない曲でした…。

ただ、素晴らしく練習を積んだ演奏だなと思いました。

きっと、やり慣れている曲なのでしょう。

独特の世界観を醸し出していましたね。

第3部も最後の曲となりました。

これは、大栗裕先生の「巫女の詠えるうた」。

大栗先生の作品ですが、私にとっては、初めて聴く曲でした。

曲名からもわかるように土俗的雰囲気がプンプンの神秘的な曲でした。

プログラムに曲の解説が載っていなかったので、調べてみましたら、1979年に作曲されたようです。

青森県の恐山の風景と霊場の“イタコ”を題材にした曲とのこと。

1980年3月26日に尼崎市吹奏楽団第15回定期演奏会で辻井清幸先生の指揮により、委嘱作品として初演されました。

この日の演奏も雰囲気が出ていて、とても良かったと思います。

それにしても、「ウェストファーレン・ウインズ」は、前の曲といい、暗い曲が好きなんでしょうか…。(指揮のシュミット氏が今回の演奏会で日本の曲を入れたかったとおっしゃっておられましたが、日本人の作曲した日本的な曲でも、もっと明るい作品があるのにと思ったので。蛇足ながら…。)

 

祝電の紹介の後、最後は合同ステージです。

最初はシュミット氏の指揮で歌劇「ヘンゼルとグレーテル」。

全体的に楽しんで聴けました。

それと、合同演奏と言う事で、大味なカンジになるのかなと危惧する気持ちもありましたが、驚くほど、ふたつの楽団のサウンドが融け合っていて聴きやすかったように思いました。

大トリの曲は兼田敏先生の曲ですね。

日本人だったら、幼い頃から慣れ親しんでいるメロディが次々と出てきます…。

会場の観客の皆様も大いに楽しまれたのではないでしょうか?

やさしいサウンドにとても温かい気持ちになりました…。

 

アンコール曲は、記憶があいまいなのですが、「旧友」だったでしょうか?

こうして、ジョイントコンサートは盛大に終了しました…。

 

テロだ、内戦だと物騒な世の中ですが、こういう国の垣根を越えた文化交流は、とっても大切だと思いますし、大賛成です。

音楽をはじめとした芸術やスポーツを楽しむことこそが、人間の心を豊かにし、真の平和な世界を作り出す力になるのではないか。

と、真面目に考えてしまった“浦和のオヤジ”でした…。

(また、時間がかかってしまった…。)



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