浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

国立音楽大学 第42回 シンフォニック ウインド アンサンブル 定期演奏会

2013-12-16 21:32:22 | 吹奏楽

2013年(平成25年)12月15日、日曜日。
私は、西武鉄道拝島線、玉川上水駅に降り立ちました。
この駅に来るのは何年振りのことでしょう?
確か多摩都市モノレールがこの駅を通るようになって間もなくくらいだと思うので10年以上前だと思います。(後で調べましたところ、多摩モノレールが開通したのは2000年だそうです。)
仕事で訪れたその駅は、「武蔵野」の風情を色濃く残すような印象がありましたが…。
とても“賑やかに”なってましたね。

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さて、今回、ここ玉川上水まで遠征してきた訳は、「国立音楽大学 第42回シンフォニック ウインド アンサンブル 定期演奏会」を聴かせて頂くためです。
国立音大の吹奏楽団としては、去年、今年と“ブラスオルケスター”の演奏会には足を運びました。
パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の首席指揮者のフランソワ・ブーランジェ氏を指揮に迎えた演奏会は、「パリ・ギャルドの伝統をくにたちの響きで」というコンセプトのもと、私を含めた観客をギャルド風の甘く透明感のあるサウンドで魅了してくれました。
非常に楽しめた演奏会でした。

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ところが今回の“シンフォニック ウインド アンサンブル”はアメリカのイーストマン音楽学校の教授でイーストマン・ウインド・アンサンブルの指揮者マーク・スキャッタデイ氏を迎えた演奏会です。
ある意味、対極ににあるスタイル(管弦楽編曲モノと吹奏楽オリジナル)を得意とする指揮者をそれぞれ迎えて、どのような演奏を聴かせてくれるのか興味津々です。(しかも同じ大学の学生さんが。)

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ここで、イーストマン音楽学校について。
ニューヨーク州にあるロチェスター大学の音楽専門学校で1921年創立。(余談ながら、ロチェスター大学は、ノーベル物理学賞を受賞された小柴東大名誉教授も学ばれたことがあるそうです。)
アメリカではニューヨークのジュリアード音楽院、ボストンのバークリー音楽院と並ぶ名門の音大で数多くの一流演奏家を輩出しているそうです。
また、1952年にフレデリック・フェネルによって作られたイーストマン・ウインド・アンサンブルはイーストマン音楽学校の在校生、OB、OGによって編成されている吹奏楽団です。(私が学生の頃、既にフェネル&イーストマンといえば憧れの吹奏楽団でありました。)

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玉川上水の駅から徒歩5分もかからないくらいで国立音大の講堂に到着。
外観もシックで地方の県庁所在地の堂々たる市民会館といったカンジですかね。
中に入るとロビーも広くて、天気が良いせいか、大きなガラス窓から入って来る日差しがとても暖かく感じます。
ホール内に入ります。
座席数1290の大ホールです。
2階席はないものの実際の座席数よりは広く感じますね。
さすが、音大のホールだけあって良い演奏が聴けそうです。

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開演の25分程前にホール内に入ったのですが、既に舞台正面に鎮座ましますパイプオルガンによるプレ・コンサートが始まっておりました。
冬の凍てつく空気をパイプオルガンの音色で暖かくしてくれるようでした。
いやあ、沁み入りますなぁ。(曲名、演奏者は以下のとおりです。)

『オルガン・プレ・コンサート』
● 「神の御子は今宵しも」による変奏曲 (M.デュプレ)
[パイプオルガン独奏]斉藤 春佳

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パイプオルガンの優しい音色の余韻に浸る間もなく、コンサートが始まりました。
“ブラスオルケスター”とは、どのように違うパフォーマンスなのでしょう!
非常に楽しみです。

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[演奏]国立音楽大学シンフォニック ウインド アンサンブル
[指揮]マーク・スキャッタデイ
[マリンバ]塚越 慎子

ファンファーレとアレグロ (C.ウィリアムズ)

● マリンバと吹奏楽のための協奏曲「睡蓮の花」 (真島 俊夫)
  Ⅰ.庭園
  Ⅱ.夜の池
  Ⅲ.開花

● 交響曲 変ロ調 (P.ヒンデミット)
  Ⅰ.Moderately fast, with vigor
  Ⅱ.Andantino grazioso
  Ⅲ.Fugue

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=休憩=

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● シンフォニア第3番「ラ・サルサ」-Ⅰ.トゥンバオ 
(R.シエッラ/arr. M.スキャッタデイ)

● プラハのための音楽 1968
    Ⅰ.序奏とファンファーレ
    Ⅱ.アリア
    Ⅲ.間奏曲
    Ⅳ.トッカータとコラール

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最初の曲は、クリフトン・ウィリアムズの曲です。
クリフトン・ウィリアムズ、懐かしいです。
いかにもアメリカの吹奏楽曲といった風情が漂います。
そして、曲にあったサウンドです。
都会的で歯切れのいい演奏は心地よく感じました。
ただ、トランペットがひな壇中段にいたせいか、はたまたホールのせいか多少、響いてこなかったような?(前半は、他の曲でも若干、そう感じました。後半は思わなかったですけど。)
2曲目は真島先生の作品の「睡蓮の花」。
マリンバ独奏は、国立音大OGでもあり、多数のコンクールで優秀な成績を残し世界的に活躍されている塚越慎子氏です。
真島先生の書かれた美しいメロディは、心を安らかにしてくれます。
また、各楽章のテーマを塚越氏のテクニックで情緒豊かに表現していて素晴らしかった。
ブラヴォーです。
前半最後は、ヒンデミットの変ロ調。
この曲も懐かしい。
今でもメロディを口ずさめる程、何回も聴いた曲です。
国立音大の演奏も熱演でした。
青春時代にもどったようで楽しいひとときを過ごせました…。

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休憩中に思った雑感。
7月に聴いた「ブラスオルケスター」とこの日の「シンフォニック ウインド アンサンブル」は同じ大学の学生さんですよね?
もしかしたら、同じ大学でもメンバーが全く違うのかなと思い、帰宅してから両方のプログラムにあったメンバー表を見比べてみましたが、多くの方がどちらのメンバー表にも名前が載っていました。
しかし、サウンドが全く違っていた。
前者は弦楽器を意識したサウンド。
後者は吹奏楽独特のリズムや表現を生かせるサウンド。
もちろん、学生の皆さんのテクニックや努力もスゴイのだと思いますが、やはり、一流の指揮者の手にかかるとサウンドすらも変えてしまうんだなと感心する事しきりです。(ブーランジェ氏、スキャッタデイ氏に脱帽!)
つまり、どんなバンドでも指導者の役割が大きい事をつくづく思い知らされますね。

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後半、最初は初めて聴かせて頂く曲でした。
プログラムの解説によると曲名の「トゥンバオ」とはサルサの基本的リズム、パターンだそうで、カリブ系ラテン音楽の雰囲気満載の曲ですね。
しかも、吹奏楽版である今回の演奏は指揮のスキャッタデイ氏の編曲とのこと。
素敵なものにならないわけがありません。
堪能させて頂きました!
さあ、いよいよトリの曲、「プラハのための音楽1968」です。
いわゆるチェコスロヴァキア共産党の自己改革運動「プラハの春」がソビエト連邦(名目上はワルシャワ条約機構軍)の軍事侵攻(チェコ事件)によって灰燼に帰してしまったこと描いた曲です。
特に最後の楽章「トッカータとコラール」はチェコ・プラハ出身である作曲者フサの“とてつもない怒り”を感じ取る事ができる名曲だと思います。

今まで、何回か生演奏でこの曲を聴く機会がありました。
その上で敢えて言わせて頂くならば、今回はイチバン印象に残る演奏でした。
サウンドから来るものなのか、説得力が凄かった。
表現力を強く必要とするこの曲を見事なまでの完成度で聴かせてくれました。
特に打楽器の皆様には、ブラヴォーです。
忘れられない“プラハ”になりそうです。

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演奏が終わっても、しばらくは拍手が鳴り止みませんでした。
指揮のスキャッタデイ氏は何度も歓声に応えていらっしゃいました。
終演後、西武線の車中でも私の心の中で、いろいろな事を考えました。
私のようなロクな音楽教育も受けていない人間でも、こんなに愛せる“音楽”。
そして、それを何の障害もなく楽しめる平和な世の中。
こんな時代、国に生まれたことに感謝です。
「“プラハの春”が潰されずに永遠に続きますように!」と願いながら…。

“ブラスオルケスター”も“シンフォニック ウインド アンサンブル”も聴かせて頂きますね、今後も!