越谷サンシティホールを訪れるのは、この日が初めてのことでした。
JR南越谷駅あるいは東武鉄道新越谷駅から歩いて2~3分の距離ですね。
佇まいは地方都市の市民会館といった風情でしょうか?
中に入りますとオーケストラピットも備えた立派なホールが姿を現します。
客席数も1675(車椅子席8席含む)で、なかなか大規模な陣容です。
この日(2013年4月7日、日曜日)は埼玉県にキャンパスのある大学吹奏楽部がジョイントコンサートを行うと言うので武蔵浦和から武蔵野線を使って、ここ越谷までやって参りました。
私は初めて知ったのですが、このような埼玉県内の大学のジョイントコンサートは20回目だとのこと。
なかなか地道な活動をしていたのだなあと感心することしきり。
今回のコンサートは大学生の皆さんの自主活動なので指揮も学生の方がするのだと思いますが本当に頑張って頂きたいですなあ。
また、今年のコンサートのテーマは「Let’s enjoy joint concert!」ということらしく、われわれ観客をどこまで楽しませてくれるか期待が膨らみます。。
コンサートは2部構成で前半が埼玉大学と文教大学の単独演奏、後半が合同演奏でした。
「“埼玉県大学によるジョイントコンサート2013”参加大学」
埼玉大学、文教大学、城西大学、東京国際大学、日本工業大学、駿河台大学、芝浦工業大学
【第一部〈各校ステージ〉】
■埼玉大学吹奏楽部
THE HIGHLANDER (D.コート)
NESSUN DORAMA! 歌劇「トゥーランドット」より 誰も寝てはならぬ (G.プッチーニ)
The rebirth《復興》 (保科 洋)
■文教大学吹奏楽部
スノーキャップス (リチャード・L・ソーシード)
サスパリラ (ジョン・マッキー)
[休 憩]
【第二部〈合同ステージ〉】
カーニバルのマーチ (杉本幸一/arr.小長谷宗一)
Fly High (星出尚志)
ニュー・シネマ・パラダイス (エンニオ・モリコーネ)
バレエ音楽「エスタンシア」 (アルベルト・ヒナステラ)
第1楽章 開拓者たち
第2楽章 小麦の踊り
第3楽章 牧童
第4楽章 終幕の踊り(マランボ)
[学生指揮]小野田弘崇、島崎智寛、黒木裕太、小池勇也
1部は埼玉大学のステージから。
プログラムを拝見しますと埼玉大学がこの日の演奏会を主導的立場で運営しているように見受けられます。
そう言った意味で注目される演奏です。
1曲目の「THE HIGHLANDER」はスコットランド民謡をモチーフしているとの事で、大変素朴で美しい曲です。
埼大の音色に良くあってました。
お馴染みのトゥーランドットのあとは、昨年のコンクールで大流行りだった保科先生の「復興」です。
合奏の時は良いのだけれど、ソロや各パートのtuttiの所では不安定に感じる場面がありました。
とても、やわらかくて素敵なサウンドなのだけど欲を言えば、若干、色彩感が欲しい気がしました。
あと、もう少し低音楽器に力強さがあれば、私の好みに近いなあと思った次第。
次は、西関東支部では向かうところ敵なしの文教大学の登場です。
やはり、サウンドといい技術といい、抜きん出ていますな。
重厚であるのに明るい音色は曲を引き立たせます。
特に2曲目に演奏した「サスパリラ」は面白かった。
西部劇のような愉快な曲で文教大学は躍動感あふれる好演でした。(司会者の解説によりますと、「サスパリラ」とは、アメリカ西部のお酒の名前だとの事です。)
さすがに著名な作曲家ジョン・マッキーの作品だけあって構成力の高さに脱帽です。
2部に入って合同演奏です。
演奏者がグッと増え、180名だとのこと。
舞台上の大勢の若者たちの姿は壮観です。
正直な話、やはり、各大学間に技量の差があると推測されたので演奏レベルが落ちるのではという不安がありました。
しかし、それは杞憂に終わりました。
やはり、サウンドの中核が王者“文教大学”とそれに続く存在の埼玉大学だったからでしょうか、明るい音色でハツラツとした演奏でした。
ただ、180名という人数は如何なものでしょうか?
もう少し、響くホールだったら、たまらん音量に聴こえる様な気がしました。(半分以下の人数で“選抜”的なモノのほうがいいのかなあ…。)
演奏の方ではトリの曲、「エスタンシア」がイチバン印象に残りました。
若者らしい躍動的な演奏が素敵でした。(私が初めてこの曲を聴いたのは、“シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ&ドゥダメル”でしたが、躍動感あふれる演奏は若者らしくて非常にインパクトがあったのを覚えています。)
以前に鹿児島情報高校吹奏楽部顧問の屋比久勲(やびくいさお)先生の記事をネットでみたことがあります。(どこの新聞社だったか忘れました。多分、地方紙?)
屋比久先生は、自分の学校だけではなく、地域の吹奏楽の活性化が全体のレベルアップにつながるという考えをお持ちで、近隣の中学校等を指導されることがあるという記事でした。(実際に昨年、鹿児島情報高校のすぐ近くの中学校が全国大会に出場しました。)
同じように地域内の団体、学校で吹奏楽と言う共通の“言語”を使って交流を持つことが全体の底上げにつながっていくのだと思います。
幸い埼玉県は吹奏楽のレベルの低い県ではありません。
特に高校や一般では全国トップレベルの水準があると思います。
しかしながら、大学では文教大学が圧倒的に抜きん出ている気がします。
こういった現状から思うに、この日のようなジョイントコンサートは非常に有意義なのではないでしょうか!
去年の東関東大会の大学の部、非常に感銘を受けた団体がありました。
茨城県代表の流通経済大学。
わずか24名という人数でしたが、倍以上の数の他の団体をいろんな意味で圧倒している演奏でした。(支部代表となり全国大会に進みました。さすがに全国大会は甘くはありませんでしたが…。)
人を引き付ける演奏と言うのはやはり、自分たちのサウンドを作っていくことが肝要かと思います。
流通経済大学のように人数が少なくてもオリジナルサウンドを持つ事は可能です。
音楽性を高めるには、強力な指導者が存在すればよいのですが、全ての団体がそういうわけにもいきません。
ですから、多くの吹奏楽団と交流を深めて切磋琢磨して頂きたい。
埼玉県の大学生の皆さんには、そのことを切に望みます。
埼玉県民として…。