政府、処罰要求を検討 武力弾圧は3日連続に 邦人銃撃
2007年09月29日01時09分
ミャンマー(ビルマ)軍事政権による武力弾圧で、市民たちによる反政府デモを取材中に銃撃されて死亡したカメラマンの長井健司さん(50)は、至近距離から撃たれた可能性が強まっている。日本政府内にも軍政への厳しい声が広がっており、政府は責任者の処罰要求なども辞さない姿勢だ。最大都市ヤンゴンでは28日、デモの市民への武力弾圧が3日連続で続き、治安部隊は威嚇発砲や警棒での殴打を繰り返した。デモや弾圧の様子を伝えてきたインターネットなどの通信規制も厳しくし、強硬姿勢を一層強めている。
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ヤンゴン中心部で28日、反政府キャンペーンのデモをする人たち。即時の国連制裁を求める紙を掲げている=ロイター
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日本政府は、長井健司さんがミャンマーの治安部隊に至近距離から故意に撃たれた可能性があることを重視し、現地に派遣する藪中三十二外務審議官を通じて真相解明に努め、「故意」が確認されれば、軍事政権に対し、責任者の処罰や謝罪、補償を求めることを検討する方針だ。反政府デモへの武力弾圧が今後も続く場合は、国際社会の動向も踏まえ、何らかの制裁措置を検討することも視野に入れている。
福田首相は28日夜、首相官邸で記者団に「(藪中氏の派遣で)向こうの政府に真相究明を求め、善後処置をしてもらう。同時にG8の国々の要請を受け、ミャンマー政府にいろいろと話しかけをしていく。一日も早く、こういう状況は止まってほしい」と述べた。
藪中氏は30日にも現地入りし、ミャンマー政府に対して事実関係の説明を求めるとともに、遺憾の意を伝えるものとみられる。
長井さんへの銃撃をめぐっては、在ミャンマー日本大使館の医務官が「流れ弾というより、近い距離から撃たれた傷跡に見える」と言及した。政府内では「故意に銃撃したとも伝えられており、大変憤激を覚える」(高村外相)との声が上がっており、外務省幹部は28日、銃撃が故意とわかれば、「国際法上はミャンマー政府に責任者の処罰や謝罪、補償を求めることも考えられる」と語った。
一方、制裁の可能性について、町村官房長官は28日午後の記者会見で、「国連安保理の議論もこれからで、国連人権理事会の対応もある。そうした動きを見ながら我が国として独自に検討していく必要がある」との考えを示した。政府高官も同日、「あらゆる頭の体操をしている」と語った。
外国メディア監視強化 記者次々退去処分 ミャンマー(朝日新聞) - goo ニュース
大規模な反政府デモが続くミャンマー(ビルマ)で、軍事政権が外国メディアへの監視を強めている。国営紙で「事実をゆがめている」と非難する一方、携帯電話などの通信を妨害。外国人が多く宿泊するホテルへの立ち入り検査も始め、取材ビザを得ていない外国人記者を次々に国外退去処分にしている。
26日にデモの弾圧に乗りだした軍政の実態を各国メディアが一斉に伝えると、27日付の国営紙は欧米などの外国メディアが「事実をゆがめて報道している」と非難。この日から外国人の多いホテルの各部屋に当局者が立ち入って身元確認をするなど、記者のあぶり出しを徹底し始めた。
これに先立ち、軍政はデモが激しくなり始めた今月中旬ごろから、一部の外国報道機関の現地通信員らの携帯電話やメールを遮断するなど通信への妨害をし始めた。
ミャンマーでは外国メディアの取材が厳しく規制されており、国軍記念日など軍政側が公開したい行事の際にしか許可が出ないのが実情だ。今回の一連のデモにあたっても各報道機関が取材ビザの申請をしているが、軍政は許可していない。
このため目的を隠して観光ビザで入国し、取材にあたるジャーナリストも多い。27日にヤンゴンのデモを取材中に死亡した長井健司さんも観光ビザでの入国だった。
27日夜のミャンマー国営テレビは、長井さんが「観光ビザで入国し、デモの取材をしていた」とわざわざ言及。ジャーナリストへの牽制(けんせい)との見方も出ている。軍政は26日にも、観光ビザでデモ取材をしていた日本の通信社など2社の記者を強制退去処分にしている。
流血のミャンマー ネット駆使し世界へ情報発信(産経新聞) - goo ニュース
■軍政の締め付け 市民が風穴
ついに流血の惨事に発展したミャンマー情勢。しかし、今回の民主化要求デモと1988年のデモとの決定的な違いは、携帯電話やインターネットを通じ、同国内の情勢が逐一、世界に発信されていることだ。かつて西側のラジオ放送が、旧ソ連圏の共産主義体制を崩壊に追い込む一因となったように、ネットを駆使した市民らの情報発信が、やがて軍政そのものに風穴を開けることになるかもしれない。
英BBC放送のサイトなどによると、ミャンマーの「報道の自由度」は世界168カ国中164位で、インターネットにアクセスできるのは国民の1%以下という。
しかし、フランス通信(AFP)が伝えたところでは、ミャンマー最大都市のヤンゴンでは26日現在、200前後のインターネットカフェが営業しており、大学生らが携帯電話やデジカメで撮影した写真や映像を送っている。検閲を避けるためヤンゴンだけでなく、中部のマンダレー経由で送られることも。
英紙デーリー・テレグラフ(電子版)によると、市民は長いリポートを小分けにし、ネット上の「グリーティングカード」を使って送ってくるという。
こうした情報を受け取りサイトに載せたり、ユーチューブなどへの投稿の手助けをしているのが海外に住む亡命ミャンマー人らだ。彼らの一人がインドで運営するミャンマー情報専門のサイト「Mizzima・News」には、民主化運動指導者のアウン・サン・スー・チーさんが僧侶と対面する写真が掲載された22日、5万件以上のアクセスがあったという。
また、英BBCによると、ミャンマー生まれでロンドン在住の「Ko Htike」と名乗るブロガーは、ミャンマー国内のさまざまな地域にすむ10人前後の“記者”から送られてくる写真や映像をブログに掲載したところ、ページビューが10倍に増えた。ただ、ここに来て「軍がデモ参加者を弾圧」などといった内容のメールを受け取ることが多い。大抵の場合、軍政側が流す偽メールだという。
軍政側はさらにヤンゴンなどでインターネットへのアクセスを遮断するなど締め付けを強めているという。ネット上での市民と軍政側との闘いは始まったばかりだ。(佐藤貴生)
ミャンマー軍政、インターネットへのアクセスを遮断したもよう(ロイター) - goo ニュース
[ヤンゴン 28日 ロイター] ミャンマー軍政当局は28日、過去約20年で最大規模の反政府デモの鎮圧のもようを伝える映像や画像、情報へのアクセスを避けるため、公共のインターネットアクセスを遮断したもよう。
インターネットカフェは閉鎖され、主要プロバイダーへの電話もつながらなくなっている。
市民らは、ソーシャルネットワークサイトのフェースブックを利用するなどして、デモの様子や悪化した生活水準を世界に伝えようとしていた。