ウィキペディア 省庁から修正次々 長妻議員の悪口も
2007年09月08日08時22分
誰でも自由に執筆・編集ができるオンラインの無料百科事典「ウィキペディア」日本語版で、複数の省庁のコンピューターから、役所に都合のいい修正が行わ れていた実態が、次々と明らかになってきた。指摘を受けた各省庁は「職員個人の職務外行為」と釈明する一方で、「犯人」を捜し出し「厳重注意」するなど火 消しに躍起だ。
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ウィキペディアは書き込み日時、変更内容、使用したコンピューターのIPアドレス(ネット上の住所)が自動記録される。
今年8月、米国の技術者がこの記録を利用、特定の組織からの書き込みが分かるプログラム「ウィキスキャナー」をネット上で公開。同月末には日本語版も始 まった。団体名を入力すると、その組織内のコンピューターから、いつ、どんな書き込みが行われたかを一覧表示してくれる。
ネット利用者らが検索した結果、官公庁や企業内のLAN(構内通信網)につながったコンピューターから、次々に内容が書き換えられている実態が分かった。
厚労省で検索すると、100件ほどの結果が表示される。趣味に関する書き込みも多いが、06年4月には「ミスター年金」の民主党・長妻昭衆院議員の項目に、「行政官を酷使して自らの金稼ぎにつなげているとの指摘もある」と書き加えられていた。
宮内庁からの書き込みでは、06年4月、「天皇陵」の項で、研究者の立ち入りが制限されていることを巡り、「天皇制の根拠を根底から覆しかねない史実が発見されることを宮内庁が恐れているのではないかという見方もある」とあった部分が削除されていた。
このほか、法務省からは05年10月、「入国管理局」の項目で、難民認定に関し、「外務省・厚生省ともに面倒な割に利権が全くない業務を抱えるのを嫌がり」と他省の「悪口」を追加。
また文部科学省からは今年1月、前政府税制調査会会長の本間正明氏の項目で、「出張旅費の二重取得があった」とする記述を削除していた。
各省庁は、公用パソコンの業務外使用は、訓令や内規違反にあたるとしている。
宮内庁では、調査を始めたら本人が名乗り出たため、口頭で厳重注意した。厚労省は省内の通信履歴を解析、「犯人」を特定する作業中だが、「業務外使用に当たるので、処分を検討することになる」という。
厚労省はすでに06年9月から、ウィキペディアへの書き込みをできないよう省内のシステム設定を変えており、「以後の書き込みはない」という。文科省も今回の騒動を受けて同様にシステムを変更、宮内庁や内閣府も検討中としている。
長妻議員は「役人は暇なんだなとあきれている。厚労省は、本業の年金問題もちゃんとやっていないのに」と話す。
国立情報学研究所客員教授で弁護士の岡村久道氏は「ネットでは匿名が保障されるという幻想があった。ウィキスキャナーは、匿名ゆえの無責任な書き込みに対する一定の抑止力になる可能性がある」と話している。
ウィキペディア日本語版は、項目が40万件以上あり、利用者は700万人を超すという。