エル・パーク当面存続へ 仙台市、反発根強く方針転換
9月5日6時12分配信 河北新報
エル・パークとの統合が検討されていた男女共同参画の姉妹施設「エル・ソーラ仙台」(青葉区中央)も存続し、2館体制が維持される。ただ、エル・ソーラに関しては現在の施設を一部縮小する方向で今後、関係団体などと協議していく。
エル・パークは、梅原克彦市長が昨年1月、行財政改革の一環として運営方針の見直しを表明。施設を利用している女性団体や文化団体などが存続を求めて署名運動を行うなど、激しい反発を招いた経緯がある。
市が両施設の2005―06年度の利用実態を調査した結果、エル・パークは市民の利用度が高かった。全国でも先駆的な男女共同参画のシンボル的存在として20年以上の歴史もあり、市は現状のままでの存続は致し方ないと判断した。
エル・ソーラは、企業が会議目的で利用する割合が比較的高い。同じ複合ビル「アエル」内には、市の「情報・産業プラザ」もあることから、縮小も含めた見直しが可能とみている。
2007年度の市予算によると、両施設の管理運営費はエル・パークが約2億4600万円、エル・ソーラが約3億円。存続により、エル・パークに関しては 08年度以降も同水準の予算が確保される見通し。仙台市は「二館体制は維持しながら、より効率的な運営に向けて今後、関係団体と話し合いたい」としてい る。
[エル・パーク仙台の廃止検討問題]エル・パーク仙台は1987年、青葉区一番町4丁目の141ビルに開館。女性の自立と社会参画を 促進する場として活用されてきた。2003年に姉妹施設エル・ソーラ仙台(青葉区中央)ができ、主要な機能が移ったことなどを理由に、市が昨年1月に廃止 を含めた検討を表明した。存続を求める市民が、約1万4000人分の署名を集めるなど、反対運動が広がっていた。
◎市民感情行革より優先/梅原イズムは分岐点に
ただ、市が昨年1月に廃止検討を打ち出すとともに、梅原克彦市長が「男女共同参画関連事業のプライオリティー(優先順位)は低い」と明言するなど、施設の存続を求める女性団体などとの間で、少なからぬあつれきが生じているのも事実だ。
今回の判断が「英断」か、それとも「変節」かの評価が定まるのは、方針決定に至った過程や施設の必要性について、市側が納得のいく説明をできるかどうかにかかっていると言える。
仙台市は、廃止に対する市民のアレルギーが予想以上に強いと受け止めてから、検討の対象を「エル・パーク仙台」の廃止にとどめず、姉妹施設「エル・ソーラ仙台」(同)との統合も含めて、意識的に問題のウイングを広げ、着地点を探ってきた。
しかし今年7月には、同根の問題とも言える市男女共同参画推進審議会委員に、「新しい歴史教科書をつくる会」の元副会長、高橋史朗氏を任命。女性団体などと市の関係は、落としどころを見いだせないほど悪化し、あい路からの脱出が喫緊の課題となっていた。
梅原市長は、8月22日で就任から丸2年を迎え、任期の折り返しを過ぎた。3日に開会した定例市議会には、市民に新たな負担を強いる「ごみ有料化」に伴う 条例改正案を提出。市議会のあるベテラン議員は「『これ以上、火種を抱えるのは得策でない』との心理が、政策判断に微妙な影響を与え始めている」とも分析 する。
いずれにせよ、任期の前半で随所に見られた「梅原イズム」が、今後どう変化、あるいは進化していくのか、市民は注目している。今回、存続方針が固まったエル・パークの問題は、その象徴的な分岐点になる可能性がある。
(報道部・丹野綾子)