陸自訓練死 国に過失 6500万円支払い命令
2013年3月30日 沖縄タイムス
判決後、「勝訴」の幕を手にする弁護団と遺族ら=29日、札幌地裁
【札幌市で下里潤】札幌市内の陸上自衛隊駐屯地で2006年11月、沖縄市出身の1等陸士、島袋英吉さん=当時20歳=が格闘訓練中に死亡した事故で、両親が国に約9200万円の損害賠償を求めた「命の雫」訴訟の判決が29日、札幌地裁であった。石橋俊一裁判長は国の安全配慮義務違反を認め、約6500万円の支払いを命じた。原告弁護団は「自衛隊の格闘訓練の危険性を初めて認めた判決で、画期的な勝訴」としている。
訓練は「徒手格闘訓練」と呼ばれ、相手の急所などを突き、投げ技や関節技などを総合的に駆使して相手を殺傷する戦闘手段を身に付けるためのもの。
石橋裁判長は判決理由で「島袋さんは3回しか受け身を訓練していなかった。投げ技に適切に対応できる技能はなく、指導教官は危険性を予見できた」と認めた。指導に当たる者は常に安全面に配慮して、事故の発生を未然に防止する義務を負うが、「(指導教官には)注意義務に違反する過失があり、それによって島袋さんを死亡させた」と、国の過失を認定した。
一方で、指導教官らが訓練を逸脱した「暴行」を故意に加えたという原告の主張は認めなかった。島袋さんの遺体にあった肋骨(ろっこつ)骨折や肝臓損傷などの外傷は「通常の訓練やその治療行為で生じた可能性がある」と述べるにとどめた。
原告弁護団は判決後、「訓練に関与した教官らの故意責任を排斥したことは遺憾」としながらも「自衛隊の徒手格闘訓練の危険性を初めて判断し、高額な賠償金を認めた画期的な勝訴判決」とする声明を発表した。
防衛省は「国の主張について一部、裁判所の理解を得られなかった。判決内容を慎重に検討し、関係機関と調整の上、適切に対処していきたい」とコメントした。
訴訟は、島袋さんの両親が10年8月に起こした。国は損害賠償請求の時効消滅を主張していたが、認められなかった。
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*島袋英吉さんのご両親は自衛隊側への情報公開請求などを経て、死亡の経緯を不審に思い、10年8月に提訴した。軍隊の隠ぺい体質である。
島袋さんも殉職者として靖国神社に祀られているのだろうか。(普)