
ちいさな哲学者たち
面白い映画でした。
そして、すごく勉強になりました。
フランスの*ZEP(教育優先地区)にあるジャック・プレヴェール幼稚園で実施されている「哲学の授業」のドキュメンタリー。
映画では、3歳で哲学を始めた子供たちが、5歳で卒園するまでの2年間に渡る成長の様子を追っています。
*ZEP(教育優先地区):小学校、中学校、高等学校で教育の成果が上がりにくい地域で生活する2歳から16
歳までの子供たちを援助するさまざまな対策。1クラス25
名以下の少人数制で、芸術文化に関するプログラムを充実させること等が決められています。
「みんなは頭の中で何をしてる?」
「…、考える!」
「それは、他の人に見える?」
「見えない」
「どうすれば、それは他の人にわかるようになるのかしら?」
「話せばいいんだよ!」
こんな風にして始まった哲学の時間は、
「友達とは?」
「友達は、一緒に遊ぶ。」
「恋人とはキスをするんだよ!友達とはキスはしない。」
「喧嘩はする?」
「するよ。」
「喧嘩したら友達じゃなくなる?」
「ううん、謝ったら友達。」
「ごめんなさいを言わないと、友達じゃなくなる。」
「豊かさとは?」
「貧しい人は、どうして貧しくなるの? 知りたいわ。」
「愛とは?」
「結婚はよくないよ。」
「いいえ、結婚はいいわ。私のパパとママは幸せよ。」
「よくないよ。ボクはママと住んでる。パパとママは結婚してない。愛はずっとじゃないからパパとママは別れるかもしれない。パパとママが別れても、ふたりが結婚してなかったら、ボクは今まで通りママと暮らす。でも、結婚してたらパパとママはボクを取り合うんだ。だから結婚はよくないときもある。」
注:フランスはシングルマザーへの保障が手厚いので、事実婚カップルが多いのです
最初の授業の日は わけがわからず沈黙していた子供たちが、こんなふうに どんどん自分の考えを話すようになる様が記録されています。
子供たちの成長と同じくらい「素晴らしいな」と思ったのは、先生の対応。
唯一無二の正解を導くために発言をさせるのではなく、子供たちの思うままに話をさせ、話が飛躍した時も それを否定することなく、
「今の話と今日のテーマは、どこに関係があるのかしら?説明してちょうだい。」
と投げかけ、その子の持つ「個」を理解しようと働きかけます。
こんな先生の姿勢のおかげで、子供たちは思うままに意見し、時に論理的に他人に説明しなければ受入れられないことを学んで行くのです。
子供たちの発する言葉の数々に「はっ」とし、この授業の運営のあり方に人材育成に関わる者の原点を見る映画でした。
これは、DVD出たら買うな。
んで、私のバイブルになるかも。
幼稚園で「考えること」を知った子供たちが、この後 どんな大人になるのかが楽しみに思えました。