「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

究極の真理 Long Good-bye 2023・10・17

2023-10-17 04:30:00 | Weblog

 

  今日の「 お気に入り 」は 、山田太一さんのエッセイ「 夕暮れの

 時間に 」から 、「 いきいき生きたい 」の一節 。

  備忘のため 、抜き書き 。

  引用はじめ 。

 「  ・・・ たしかに人の一生なんて 、天から見下ろせば 小さくて

  束の間だし 、いつ なにがあって すべてを失うかもしれず 、死ぬ

  かもしれず 、見栄をはって豊かさを競うのも 権力に身を寄せる

  のも 、はじかれて苦しむのも 、むなしいといえば むなしい 。

  人が生きて行くために必要なものは 、結局『 方丈 』 ―― つ

  まり畳五枚ぐらいの住いで 、おさまってしまうのではないか 、

  といわれると 、ああムダなものを抱えているなあ 、捨てなきゃ

  と思いながら 、いろいろ処分できないでいる私などは 、反省ば

  かりという気持になる 。 」

 「 たしかに死んでしまえば万事が終りなのだから 、むなしいと

  いえば すべてがむなしい 。なにかに執着するのは愚か といわれ

  れば その通り愚かである 。しかし 、どこに住んでも文句をい

  われない 土地 のある平安時代に 、お坊さんで 、家族もなく 、

  人ともつき合わず 、稼がなくても自給自足できる 、老境の近

  い人のいうことは 割り引いて聞いた方がいいと思う 。お坊さん

  への教訓としてはよく分るが 、俗人には無理があると思う 。死

  ぬことを考えたら 、たしかにむなしいことばかりだが 、すぐ死

  ぬわけではない人間は 、そんな啓示で身をつつしんでいたら 、

  生きているうちから 死んだようになってしまう 。

  大災害は 、ぎりぎり一番大切なものを教えてくれる 。生きて

  いるだけでありがたいとか 、絆が大事だとか 、たしかにそれ

  は真実だが 、究極の真理だけで 、私たちは 日々を いきいき生き

  ていけないのだと思う 。哀しいといえば哀しいが 、それが生き

  ているということなのだと思う 。

  ( 多摩川新聞 2012年1月1日 )  」

  引用おわり 。

  東北の大震災の翌年の元旦日付の新聞に掲載された文章 。

  文中に出てくる お坊さん は 、方丈記 の 鴨長明 のこと 。

 ( ´_ゝ`)

  歌手の谷村新司さんが亡くなった 。一度だけお会いしたことがある 。

  20年ほど前 、朝の銀行のATMの前で 出会いがしら 、軽く頭を

 下げて目礼して 怪訝な顔をされた 。一面識もない相手から 、いきなり

 挨拶されたのだから当然である 。ホテル泊まりの 、寝起きの 、不機嫌

 そうなお顔だった 。一方 、筆者は 、その日一日 小さな喜びで 、いきいき

 幸せだった 。

  谷村さんは 、筆者と同じ 昭和23年 ( 1948 年 )  のお生まれで 、関西人 。

  合掌 。

 

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