「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

BASEBALL 野のボール Long Good-bye 2023・04・13

2023-04-13 05:13:00 | Weblog



  今日の「 お気に入り 」は 、伊集院静( 1950年〈 昭和25年 〉2月9日 -  )さん
  の随筆「 旅だから出逢えた言葉 」から スクラップ 。備忘のため 。


  「 子規は幼名を升 ( のぼる ) と言った 。そののぼるをもじって 、
   彼は雅号に 、野のボール で " 野球 " というものを持っている 。
   この野球を命名したのが子規ではという説もあるが 、実際には
   彼が雅号に " 野球 " とつける四年後 、第一高等中学校の中馬
   庚( ちゅうまかのえ ) が名付けたと言われる 。しかし私は野の
   ボールの子規の命名の方にロマンを感じる 。そのせいでもないが 、
   我が家の新しい仔犬にノボルと名前をつけた 。
    子規は三十五歳の若さで亡くなっているが 、短い生涯の中で 、
   日本の近代文学における短詩型文学の価値 、位置付け 、方向を
   示した人である 。子規の日本の短歌 、俳句の評価 、批判には
   素晴らしいものがある 。この人が存在しなければ 、今日 、日
   本人に短歌 、俳句がこれほど認められ 、繁栄したかどうかわか
   らないほどだ 。
    子規の作品もしかりだが 、私が彼に関して読むたびに切なく
   なる一文がある 。それは子規のうれしきもの 、と称した一文だ 。
    " 小生 、今までにて最もうれしきもの 、初めて東京へ出発と
   定まりし時 、初めて従軍 ( 日清戦争 ) と定まりし時の二度に
   候( そうろう ) 。この上なほ望むべき二事あり候 。洋行 ( 西
   洋を訪ねること ) と定まりし時 、意中の人を得し時 " とある 。
    子規は二十一歳で喀血し病床に伏してしまうから 、西洋を旅す
   ることはかなわなかった 。そして " 意中の人を得し時 " とあ
   る人生の伴侶と出逢うことがなかったのである 。
    少年のようで 、情熱的な子規が意中の人と出逢っていたら 、
   どんなに彼の人生はゆたかなものになっただろうか 、想像する
   と 、この人の生涯が切なくもある 。 」





   「 エベレストの頂上は 、歩いて行ける宇宙です 。
                    ―― 三浦雄一郎 」



   
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