体に良い食品の正しい選び方(以下、日経プラスワンから一部抜粋)
『 雑誌や新聞、テレビ、インターネットなどで健康食品の広告を目にする機会は多い。だが、健康の維持や増進にかかわる機能性を表示することが認められている製品は一部に限られる。自分に必要かどうかを判断するためにも、広告を見極める目を持つことが重要だ。取り入れるなら、正しく知ろう。
「○○が気になる方へ」「加齢に伴い減少する成分」。いかにも体に良さそうなキャッチコピーに、つい目を留めてしまう健康食品の広告。目の疲れや膝の痛みなど、何かしら体の悩みを抱える中高年にとってはなおさら気になるだろう。
■あくまで食品
だが、健康食品はあくまでも食品であり、病気の治療効果などを確かめた医薬品ではない。そのため、健康食品の広告では、高血圧や糖尿病といった特定の病名を出したり、病気予防や治療効果をうたったりすることは一切できない。
そもそも健康食品という名称に、科学的、または法律上の定義はない。健康食品というだけでは「健康によい」のかどうか、必ずしも分からないのだ。それだけに健康食品を選ぶ際は、判断材料がほしいところだ。
まず、チェックしたいのが、国から健康の維持や増進に役立つ働きを表示することが認められている「保健機能食品」かどうかだ。これはさらに「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3つに分類される。
その他は、健康補助食品や自然食品など、どんな呼び方であっても、「いわゆる健康食品」として区別される。広告でさも体に良さそうな言葉を並べても、商品パッケージに表示することは認められていない。
トクホなど先の3つが働きを商品に表示できるのは、科学データで根拠が示せるからだ。「トクホ」は商品ごとに試験を実施、安全性と有効性を国が審査して表示を許可する。「栄養機能食品」は働きが明らかなビタミンやミネラルなど栄養成分が対象。「機能性表示食品」はトクホと似ているが、商品ごとに国の審査を受けなくても企業などの責任で、体への働きを表示できる。
例えば、キリンビールのノンアルコールビール「パーフェクトフリー」は、缶上部に「脂肪の吸収を抑える」「糖の吸収をおだやかにする」と表示され、広告でも同じ表現が使われている。
国の審査がないかわりに、事業者は根拠となる情報を、販売前に消費者庁に届け出なければならない。情報は、消費者庁のウェブサイト(http://www.caa.go.jp/)に公表され、誰でも確認できる。
■誤解生む表現も
もっとも、トクホや機能性表示食品であっても、消費者に誤解なく機能性が伝わっているか、首をひねりたくなるような広告もある。
医師や薬剤師など医療従事者と報道関係者などによる「メディアドクター研究会」は6月、健康食品の広告を題材にワークショップを開催、実際の広告を見ながら話し合った。例えば、あるトクホの広告。食べた人とそうでない人とで、食後の血糖値の変化を比べた臨床試験の結果が折れ線グラフで示されている。食べた人の方が、血糖値の上昇が緩やかだった。
問題として指摘があったのは、その見せ方だった。血糖値を示す縦軸の下端がゼロから始まっていない。血糖値はゼロにはならないが、ある部分だけを拡大すると差が大きく見えやすい。全体の中でどれほどの影響かを考えるには、グラフ下端はゼロで示すのが親切だ。また、縦軸の数値の間隔を大きく取って横軸を狭くすれば、差が強調されて見える。
講師を務めた帝京大医学部の大野智特任講師は「『ビタミンC2000ミリグラム配合』より、『ビタミンCレモン100個分』の方が多く感じるという、心理をうまく利用した表現が使われる」と指摘する。レモン1個といっても、大小あり含まれるビタミン量も異なる。さらに飲料業界で統一基準があるわけではない。消費者自身もきちんと考える必要がある。
お茶の水女子大生活科学部の赤松利恵教授は、健康食品の広告を分析した結果を基に注意するポイントをまとめた(上表)。こうした点を念頭に、広告を見ることで、曖昧な表現や誤解を招く表現にまどわされず、その食品が自分に本当に必要かどうかが見えてくるのではないだろうか。
■良くない体験は表に出ない
健康食品に限らないが、商品広告には「○○を使ったら良かった」といった購入者の体験談が使われることが多い。体験談の影響力が大きいからこそ、多くの広告で使われているわけだ。
商品を売る側の言葉ではなく、買った側の言葉であるからこそ、信ぴょう性が増し、影響力が大きくなる。マーケティングの世界では、このような現象をウィンザー効果という。口コミの応用とも考えられる。
ただし、体験談はあくまでその人の感想。「良かった」体験それ自体は本当でも、同じことが自分に必ず起こる保証はない。そもそも「良くなかった」体験は、広告には出てこない。 』
『 雑誌や新聞、テレビ、インターネットなどで健康食品の広告を目にする機会は多い。だが、健康の維持や増進にかかわる機能性を表示することが認められている製品は一部に限られる。自分に必要かどうかを判断するためにも、広告を見極める目を持つことが重要だ。取り入れるなら、正しく知ろう。
「○○が気になる方へ」「加齢に伴い減少する成分」。いかにも体に良さそうなキャッチコピーに、つい目を留めてしまう健康食品の広告。目の疲れや膝の痛みなど、何かしら体の悩みを抱える中高年にとってはなおさら気になるだろう。
■あくまで食品
だが、健康食品はあくまでも食品であり、病気の治療効果などを確かめた医薬品ではない。そのため、健康食品の広告では、高血圧や糖尿病といった特定の病名を出したり、病気予防や治療効果をうたったりすることは一切できない。
そもそも健康食品という名称に、科学的、または法律上の定義はない。健康食品というだけでは「健康によい」のかどうか、必ずしも分からないのだ。それだけに健康食品を選ぶ際は、判断材料がほしいところだ。
まず、チェックしたいのが、国から健康の維持や増進に役立つ働きを表示することが認められている「保健機能食品」かどうかだ。これはさらに「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3つに分類される。
その他は、健康補助食品や自然食品など、どんな呼び方であっても、「いわゆる健康食品」として区別される。広告でさも体に良さそうな言葉を並べても、商品パッケージに表示することは認められていない。
トクホなど先の3つが働きを商品に表示できるのは、科学データで根拠が示せるからだ。「トクホ」は商品ごとに試験を実施、安全性と有効性を国が審査して表示を許可する。「栄養機能食品」は働きが明らかなビタミンやミネラルなど栄養成分が対象。「機能性表示食品」はトクホと似ているが、商品ごとに国の審査を受けなくても企業などの責任で、体への働きを表示できる。
例えば、キリンビールのノンアルコールビール「パーフェクトフリー」は、缶上部に「脂肪の吸収を抑える」「糖の吸収をおだやかにする」と表示され、広告でも同じ表現が使われている。
国の審査がないかわりに、事業者は根拠となる情報を、販売前に消費者庁に届け出なければならない。情報は、消費者庁のウェブサイト(http://www.caa.go.jp/)に公表され、誰でも確認できる。
■誤解生む表現も
もっとも、トクホや機能性表示食品であっても、消費者に誤解なく機能性が伝わっているか、首をひねりたくなるような広告もある。
医師や薬剤師など医療従事者と報道関係者などによる「メディアドクター研究会」は6月、健康食品の広告を題材にワークショップを開催、実際の広告を見ながら話し合った。例えば、あるトクホの広告。食べた人とそうでない人とで、食後の血糖値の変化を比べた臨床試験の結果が折れ線グラフで示されている。食べた人の方が、血糖値の上昇が緩やかだった。
問題として指摘があったのは、その見せ方だった。血糖値を示す縦軸の下端がゼロから始まっていない。血糖値はゼロにはならないが、ある部分だけを拡大すると差が大きく見えやすい。全体の中でどれほどの影響かを考えるには、グラフ下端はゼロで示すのが親切だ。また、縦軸の数値の間隔を大きく取って横軸を狭くすれば、差が強調されて見える。
講師を務めた帝京大医学部の大野智特任講師は「『ビタミンC2000ミリグラム配合』より、『ビタミンCレモン100個分』の方が多く感じるという、心理をうまく利用した表現が使われる」と指摘する。レモン1個といっても、大小あり含まれるビタミン量も異なる。さらに飲料業界で統一基準があるわけではない。消費者自身もきちんと考える必要がある。
お茶の水女子大生活科学部の赤松利恵教授は、健康食品の広告を分析した結果を基に注意するポイントをまとめた(上表)。こうした点を念頭に、広告を見ることで、曖昧な表現や誤解を招く表現にまどわされず、その食品が自分に本当に必要かどうかが見えてくるのではないだろうか。
■良くない体験は表に出ない
健康食品に限らないが、商品広告には「○○を使ったら良かった」といった購入者の体験談が使われることが多い。体験談の影響力が大きいからこそ、多くの広告で使われているわけだ。
商品を売る側の言葉ではなく、買った側の言葉であるからこそ、信ぴょう性が増し、影響力が大きくなる。マーケティングの世界では、このような現象をウィンザー効果という。口コミの応用とも考えられる。
ただし、体験談はあくまでその人の感想。「良かった」体験それ自体は本当でも、同じことが自分に必ず起こる保証はない。そもそも「良くなかった」体験は、広告には出てこない。 』