近年よく耳にする「体幹」。トップアスリートだけの話と思っていないだろうか。体幹は人のあらゆる動きを支える幹の部分。体幹がしっかりしていれば手足の動きが安定し、姿勢も美しくなる。しっかり鍛えておきたい。(以下、日経ライフから一部抜粋)
『 そもそも体幹とは体のどの部分のことだろうか。スポーツ医学の観点から体幹を研究している法政大学スポーツ健康学部の泉重樹准教授を訪ねた。
「簡単に言うと、腕・脚と首より上を除いた胴体全部が体幹」と泉さん。体幹がしっかりしていると体がブレないといった表現から、背骨の周辺と勘違いする人も多そうだが、もう少し広い概念を指す。 注目したいのは筋肉、特に体の表面ではなく深いところにある体幹深層筋だ。これが「インナーマッスル」とか「コア」と表現される部分といっていい。
■脊椎につながる
体幹深層筋は文字通り体のやや内側にあり、脊椎につながっている。代表的なのが腰をコルセットのように包んで支える「腹横筋」や、背骨の椎骨一つ一つをつなぐ「多裂筋」だ。特に腹横筋は人間の様々な動作を支える縁の下の力持ち。例えば腕や脚を素早く動かす時、実は最初に動くのは腹横筋だ。腕や肩、脚の筋肉よりほんの一瞬速く動いて腰回りを支え、体が手の動きにつられてぐらつかないようにしている。
つまり「腹横筋や多裂筋がしっかり働かないと腰に負荷がかかって腰痛が起きたり、バランスを崩して転倒しやすくなったりする」(泉さん)。体幹深層筋がアスリート以外にも重要なのはこのためだ。
ところが従来の筋力トレーニングでは体幹深層筋はほとんど鍛えられない。筋トレでマッチョな体になっても体幹深層筋は弱っている人も少なくないという。そこで登場するのが「体幹トレーニング」だ。「よつんばいになって片手片足を上げるポーズ」を連想する人が多いだろうが、その連想は正解でもあり不正解でもある。泉さんは「体幹深層筋ではなく表面の筋肉の力でポーズをとってしまうケースも多く見かける」と指摘する。
このポーズにたどり着く前に体幹深層筋、特に下腹の奥にある腹横筋がしっかり働いているかを実感できるようにならないといけない。確実に体幹深層筋に働きかける方法を覚えよう。まずは体幹トレーニングの基本「ドローイン」から。あおむけになる。腰に手を当て、骨盤のコリコリしたところから指2本分、下へ指をあて、そこから指2本分内側へずらしたところをそのまま引き込む。それから、指をお腹で押し返すように力を入れる。この時、お腹の中心が出っ張らないように注意する。
この状態で腹式呼吸をしていく。呼吸は力が抜け過ぎないようにする。特に吸う時に注意しよう。「これだけで体幹深層筋がしっかり働くようになる」と泉さんはいう。体の安定感が増すだけでなく、お腹周りを引き締め、姿勢を美しくする効果も期待できる。横たわらず、立ったまま指も当てず力が入るようになれば、布団の上でもデスクワーク中でも、いつでもトレーニングができる。慣れてきたら体位を横向きからよつんばいへと変えてドローインしてみよう。手足に動きをつける応用編は基本形を習得してから。
スポーツクラブなどでも体幹トレーニングを取り入れるところが増えている。コナミスポーツクラブでは昨年から、個人レッスンとして「コアトレーニング」というプログラムを開始。体幹トレーニングの応用編まで教わることができる。
■専門家に相談を
「受講者のレベルに応じ、プロのトレーナーが段階を踏んで指導する」と同社プログラム統括部の内山忠夫さん。あおむけのドローインからスタートして、上達するとバランスボールなどを活用して不安定な状況でも体幹深層筋で体を支えられるようトレーニングする。
ヨガやピラティス、太極拳なども効果的だ。ただ、体幹深層筋を使わずポーズだけを真似すると、かえって体を痛めるリスクがある。「できれば専門家の指導を一度受けると効果的」と内山さんは勧めている。
■高齢者、骨折などの予防も
高齢化社会の現代、元気に暮らせる「健康寿命」をなるべく延ばしたいもの。体幹深層筋を鍛える体幹トレーニングは、そんな希望をかなえる手掛かりになるかもしれない。腰痛や膝関節の痛み、転倒による骨折などのけがは、高齢者を自宅に引きこもりがちにし、認知症の遠因になったりする。そうしたけがも「深層体幹筋を鍛えていれば予防できる面がある」と泉さんは力説する。
東京都八王子市の高齢者あんしん相談センターめじろは昨年実施した「簡単エクササイズ教室」で、体幹トレーニングを取り入れた。参加者は60歳代後半から80歳代。基本のドローインから始め、体位を変えて難易度を上げていった。講座を重ねるうちに、参加者はスクワットのような体勢で重さ6キロほどある道具を持ち上げられるまでになった。参加したある男性は70歳代後半で一人暮らし。講座が終了した今も「起床時と就寝前のドローインが日課になった」と笑顔をみせる。 』
『 そもそも体幹とは体のどの部分のことだろうか。スポーツ医学の観点から体幹を研究している法政大学スポーツ健康学部の泉重樹准教授を訪ねた。
「簡単に言うと、腕・脚と首より上を除いた胴体全部が体幹」と泉さん。体幹がしっかりしていると体がブレないといった表現から、背骨の周辺と勘違いする人も多そうだが、もう少し広い概念を指す。 注目したいのは筋肉、特に体の表面ではなく深いところにある体幹深層筋だ。これが「インナーマッスル」とか「コア」と表現される部分といっていい。
■脊椎につながる
体幹深層筋は文字通り体のやや内側にあり、脊椎につながっている。代表的なのが腰をコルセットのように包んで支える「腹横筋」や、背骨の椎骨一つ一つをつなぐ「多裂筋」だ。特に腹横筋は人間の様々な動作を支える縁の下の力持ち。例えば腕や脚を素早く動かす時、実は最初に動くのは腹横筋だ。腕や肩、脚の筋肉よりほんの一瞬速く動いて腰回りを支え、体が手の動きにつられてぐらつかないようにしている。
つまり「腹横筋や多裂筋がしっかり働かないと腰に負荷がかかって腰痛が起きたり、バランスを崩して転倒しやすくなったりする」(泉さん)。体幹深層筋がアスリート以外にも重要なのはこのためだ。
ところが従来の筋力トレーニングでは体幹深層筋はほとんど鍛えられない。筋トレでマッチョな体になっても体幹深層筋は弱っている人も少なくないという。そこで登場するのが「体幹トレーニング」だ。「よつんばいになって片手片足を上げるポーズ」を連想する人が多いだろうが、その連想は正解でもあり不正解でもある。泉さんは「体幹深層筋ではなく表面の筋肉の力でポーズをとってしまうケースも多く見かける」と指摘する。
このポーズにたどり着く前に体幹深層筋、特に下腹の奥にある腹横筋がしっかり働いているかを実感できるようにならないといけない。確実に体幹深層筋に働きかける方法を覚えよう。まずは体幹トレーニングの基本「ドローイン」から。あおむけになる。腰に手を当て、骨盤のコリコリしたところから指2本分、下へ指をあて、そこから指2本分内側へずらしたところをそのまま引き込む。それから、指をお腹で押し返すように力を入れる。この時、お腹の中心が出っ張らないように注意する。
この状態で腹式呼吸をしていく。呼吸は力が抜け過ぎないようにする。特に吸う時に注意しよう。「これだけで体幹深層筋がしっかり働くようになる」と泉さんはいう。体の安定感が増すだけでなく、お腹周りを引き締め、姿勢を美しくする効果も期待できる。横たわらず、立ったまま指も当てず力が入るようになれば、布団の上でもデスクワーク中でも、いつでもトレーニングができる。慣れてきたら体位を横向きからよつんばいへと変えてドローインしてみよう。手足に動きをつける応用編は基本形を習得してから。
スポーツクラブなどでも体幹トレーニングを取り入れるところが増えている。コナミスポーツクラブでは昨年から、個人レッスンとして「コアトレーニング」というプログラムを開始。体幹トレーニングの応用編まで教わることができる。
■専門家に相談を
「受講者のレベルに応じ、プロのトレーナーが段階を踏んで指導する」と同社プログラム統括部の内山忠夫さん。あおむけのドローインからスタートして、上達するとバランスボールなどを活用して不安定な状況でも体幹深層筋で体を支えられるようトレーニングする。
ヨガやピラティス、太極拳なども効果的だ。ただ、体幹深層筋を使わずポーズだけを真似すると、かえって体を痛めるリスクがある。「できれば専門家の指導を一度受けると効果的」と内山さんは勧めている。
■高齢者、骨折などの予防も
高齢化社会の現代、元気に暮らせる「健康寿命」をなるべく延ばしたいもの。体幹深層筋を鍛える体幹トレーニングは、そんな希望をかなえる手掛かりになるかもしれない。腰痛や膝関節の痛み、転倒による骨折などのけがは、高齢者を自宅に引きこもりがちにし、認知症の遠因になったりする。そうしたけがも「深層体幹筋を鍛えていれば予防できる面がある」と泉さんは力説する。
東京都八王子市の高齢者あんしん相談センターめじろは昨年実施した「簡単エクササイズ教室」で、体幹トレーニングを取り入れた。参加者は60歳代後半から80歳代。基本のドローインから始め、体位を変えて難易度を上げていった。講座を重ねるうちに、参加者はスクワットのような体勢で重さ6キロほどある道具を持ち上げられるまでになった。参加したある男性は70歳代後半で一人暮らし。講座が終了した今も「起床時と就寝前のドローインが日課になった」と笑顔をみせる。 』