地味ログ東洋硬化.うろつき雑記

寒い時も暑い時も、寒い場所も暑い場所も、処かまわず神出鬼没な東洋硬化の表面処理を、ポップに語ります。

それなりに信憑性のある...

2006年01月12日 16時55分00秒 | 時事ネタ


中国の経済的膨張・軍事的脅威が国内でいわれる様になって久しいです。

当社も中国を市場として位置づけており、実際に営業活動を行なってもい
ます。

ここへきてかの国については、富の再分配に対する不公平感から各地で発
生する暴動、社会を下支えし公(おおやけ)に資する意識が欠如すること
から多発する水質汚染や大気汚染等の公害問題、社会主義国であるはずな
のに歴然と存在し、より顕在化していく社会階層格差、アイデンティティー
やオリジナリティーの原動力となる個々人の発想や独自性を尊ぶ気構えが
全くなくレプリカ・コピー商品ばかりが氾濫していることなど、ここ数ヶ
月は、特にネガティブな印象となる報道が多くなされているのも事実です。

年に数回は中国へ行くのですが、実際にその様な矛盾の発露に行き当たる
ことも往々にしてあります。それら、矛盾や不正義については、後々少し
ずつ述べていくこともしたいと思っております。


しかし、人口・面積ともに大きく、将来的には経済の伸びシロが大きく見
込まれるこの中国をはじめとしたインド・ロシア・ブラジルまで含めた4ヵ
国を、『BRICs』と名づけ、従来の「巨大な発展途上国」としてのみの定義
から脱した見方をすることが、数年前からなされる様にもなってきました。

これらの諸課題を内包させつつも、事実を認めた上で、少しでもポジティ
ブな心持ちでありたいと、一昨年発行の
『日本硬質クロム工業会誌 Vol.19,No.2 2004(平成16)年10月15日号 』
巻頭言に、我々を取り巻く中長期的将来の状況予測を投稿しました。

でたらめを書きなぐったつもりは毛頭ありませんが、かと言って、精度の
高い科学的予測というわけでもありません。無難に順当にいけば、こんな
感じになる可能性も結構あるかもね、というぐらいなものです。

ここであらためてお目にかける試みを致しますが、お読みいただいた方々
から、ご意見を頂戴できるとするならば望外の喜びです。

よろしく、ご高覧くださいませ。




     ●それなりに信憑性のある...●

 東欧の共産主義国家が次々と瓦解し、ベルリンの壁が崩れ、ソ連が分裂
した十数年前のおりは、全く驚いたものだった。
ほんの二~三十箇月のうちにそれまでの国家間秩序と国際常識がみるみる
崩れて
いく様は、それまでの閉塞し鬱屈した時代の空気が開放されていくかの様
に思えたものだ。
現実には、その前後に発生した旧ソ連・旧ユーゴスラビアの内戦に代表さ
れる民族主義の台頭や、タガの外れた宗派宗教間のテロリズム、と、別の
問題を内包してはいたのだが。

 我々を含めた西側諸国民にとっては、ある種対岸の火事だったそれらで
きごととは異なり、憂慮しながらも、今から少しずつ準備を始めねばなら
ないロングスパンの課題がいくつもある。

 ゴールドマン・サックス社が、21世紀の”成長株”として、ブラジル・
ロシア・インド・中国(チャイナ)の頭文字をとり、「BRICs」との新造語を
報告書で取り上げた。(※1) それによると、(諸般の事情がうまく運べば)
向こう35年でBRICs諸国のGDP合計はカナダ・ロシアを除いたSUMMIT6ヶ国の
合計を大きく上回り、2050年にはGDP序列は ①中国 ②米国 ③インド
④日本 ⑤ブラジル ⑥ロシア ⑦英国 の順になるとのことだ。(※2)
下図を見ての通り、世界経済は中国をその中心に据え、日本を含めた既存
先進諸国の相対的地位の低下が著しい。



(ゴールドマン・サックスが2003年秋に出した「BRICsとの夢・2050年への
道」と題したリポートでは、BRICs4ヵ国は2039年には経済規模で米日独仏
英伊の6ヵ国合計を抜く。2050年の時点では、GDP(国内総生産)の順位
も上位6ヵ国は中国、米国、インド、日本、ブラジル、ロシアになると予測。
現在とは全く異なる世界経済の姿を描いている)


 一方、視点を国内に置き換えてみると、その時点での国内情勢を不気味に
想像させるのは、年齢別人口ピラミッドグラフかもしれない。
現時点で最も可能性が高い2050年中位推計図では、年齢別の棒グラフで最大
なのが、75歳前後のいわゆる団塊ジュニアと呼ばれる人々である。この世代
については各年齢あたり160万人ずついる。
零歳児が80万人を割っているのに、である。
この人口構成をもって、我国は2050年にはBRICsをはじめとした諸国と対峙し
なければならないのだ。
国内の社会制度や財政制度をうまく整え直せたとしても、これら人的アゲイ
ンストを背負って国家間競争に臨まねばならず、外国人労働者導入の全面解
禁や人型ロボットの開発などである程度しのげたとして、かなり辛い日々に
なりそうな予感がある。



(年齢別人口ピラミッドグラフ  上段:2000年実勢図  下段:2050年
中位推計図)


 ただ、我国の産業技術に関して、頼もしく思える事例が多々あるのも事実
だ。例えば、人体の狙った部位に薬剤を送り込む「DDS(ドラッグデリバリー
システム)」、体組織や臓器を再生修復する「再生医療」、更にその根幹を
なす「クローン技術」、前述した「人型ロボット技術」、世界最高位の変換
効率を誇る太陽電池や瞬間的大規模放蓄電を可能とするキャパシター、そし
てNEC基礎研究所の飯島博士によって発見された「CNT(カーボン・ナノチュー
ブ)」等々、枚挙に暇が無い。

 特にCNTは、まだまだその実用化には紆余曲折が予想されるとは言え、破
断長(ある物質の密度あたりの引っ張り強さの度合い)がスチールワイヤーの
10倍(ことによると40倍以上かもしれない!)もあり、結晶構造をいじってや
ると金属的特性を持ったり、半導体とすることができ、アルカリ蒸気をイオ
ン注入することで超伝導性さえ付与することもできるらしく、こうした性質
をうまく引き出して実用化できれば、通信機器・情報媒体から輸送機械・
大規模建造物まで様々な産業界にコペルニクス的変革を起こし得る可能性を
持っており、日本発のこの技術は世界中の注目を集めている。

 期待されているそれら実用化案の中でも、最も効果が期待され、また最も
大規模なのが「軌道エレベータ」構想だ。

 軌道エレベータとは、赤道上約35800kmの静止軌道から張力に優れたワイ
ヤーを地表に向けて垂下し、地上に固定連結することによって、ロケットな
どとは比較にならないほどのローコスト・低環境負荷で、静止軌道と地上と
を連絡する交通機関のことである。
垂直方向に地球1週分に近いほど長く伸ばしたエレベータなんて、単なる法
螺か与太話のように捉える向きもあるだろうが、現時点のCNT技術の進捗があ
と数年続けば充分にキャッチアップすることができ、その他、新たにブレー
クスルーせねばならない技術的課題もほとんどないとのことで、2050年どこ
ろか今後20年程度で建設について具体化の道筋を見ることになるかもしれな
い構想なのだ。
元々、ワイヤ材料として炭素系ウィスカーがその候補とされていたのだが、
残念ながら実用化に必要な強度に不足したものだったのが、1991年に破断長
が格段に大きな素材としてCNTが登場し、更なる改良が加えられつつある現
在、軌道エレベータ実現に必要な材料強度の最低ライン突破に向けて、刻々
とその技術の水準線は上がりつつある。



(軌道エレベータ想像図)


 作家で科学評論家でもあるA・C・クラークによれば、静止軌道下の赤道各
処においても、地形上の制約や重力場均一性の優劣からインド洋のモルディ
ヴ諸島南端に近いガン島が、軌道エレベータ建設地として最適の場所に位置
しているらしい。
この構想がどの時点で実現に向けてスタートするのかは神のみぞ知るわけだ
が、数十年後にこの孤島が、静止軌道へのゲイトウェイとして世界一の不動
産価値を持った島と呼ばれる様になる確率は、結構高いのではないかと思わ
れる。


 現在すでに生きている人々がまだ充分に生存しているはずの2050年とは、
こんな時代なのだそうだ。
SFでも夢想でもなく、世の良識的な人々がかなりの信頼を寄せる「ゴールド
マン・サックス社」「国立社会保障・人口問題研究所」「NEC基礎研究所の
研究員」が描いた四十数年後がこうなのである。

 明るいとも暗いとも簡単には形容できないが、少なくとも現在に比較して
恐ろしく異なった世界であるのは間違いないだろう。

 私など、順調に生き続けたとして九十歳になっており、すでに社会を憂い
慮る年齢でもない。
ただ、諸情勢に驚いていたいが為に生き残ってはおきたい、と少し考え始め
ている。
                               【 了 】



上記記事は『 日本硬質クロム工業会誌 Vol.19,No.2 2004(平成16)年10
月15日号 』に投稿掲載されたものを、転載しました。


※1 「BRICsと夢見る――2050年への道」ゴールドマン・サックス社投資家
向けレポートから


※2 GDP比較グラフは朝日新聞2004年6月12日号経済欄より抜粋したも
のを改良


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    平面研削も行います。
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