国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

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『ポートレイト・イン・ジャズ』について語ろう 4 軽い肩慣らしで呼吸を合わせよう

2011年08月20日 | ビル・エヴァンスについて
「ペリズ・スコープ」のミドルテンポを維持したまま
2曲目の「ウィッチクラフト」(アルバムでは4曲目)の録音に入る。
ここからスコット・ラファロが本格的にその姿を現し始める。
この曲ではラファロのソロもあり、ゴリゴリとしたベース音がしっかりと耳の残る。
モチアンのブラッシュ・ワークが自己主張をせずにリズムを刻み、
その中でラファロがエヴァンスと同等に演奏を繰り広げることができている。
2曲目という事で全体的に肩慣らしの感もある演奏だ。

3曲目に「スプリング・イズ・ヒア」(アルバムでは8曲目)の演奏に入る。
たっぷりと間を取りながら、エヴァンスがソロを弾く。
ラファロが寄り添うように演奏をするためベースの音が目立たなくなるが、
それでもソロの合間を縫うように「ブン、ブン」と低い音をうならせる。
モチアンはあまり注目されないが、こういった静かな曲で聴きいってみると
普通にテンポを取るのではなく、流れるエヴァンスのピアノの音の間を聴きながら、
絶妙なバランスでシンバルを弾き、ブラッシングしているのが分かる。
この後でもそうだが、モチアンのドラム一つで演奏の流れがガラッと変わることもあり、
全体を支えているのがモチアンであることにも気付かされる。

4曲目は「ホワット・イズ・ディス・シング・コールド・ラヴ」(アルバムでは7曲目)
である(ちなみに邦題は「恋とは何でしょう」)
ここでガラリと印象が変わり、テンポがグッと上がる。
アップとまで言えなくとも、この日初めてスピードのある演奏となっている。
鍵盤の上を滑るかのようにエヴァンスは指を動かし、
そこにラファロとモチアンがついていくような感じがする。
ラファロがこの日2度目のソロを取り、エヴァンスがそれを盛り上げるかのように
強引な鍵盤さばきを見せると、それに合わせるようにモチアンも力強く乗る。
その後、モチアンの簡単なソロが入り、一気にエヴァンスが曲を引き締める。

5曲目は「カム・レイン・オア・カム・シャイン」(アルバムの1曲目)となる。
(邦題は「降っても晴れても」)
収録も半ばにさしかかり、それぞれがかなり自由に演奏を広げていっている。
この曲は後々もライブでよく取り上げたようで、
小曲として3人が演奏しやすかったのかもしれない。
前の曲からまたグッとテンポが落ち、スローな出足である。
アルバムの1曲目に配置するには少々の違和感もあるのだが、
実はこの後の曲とのつながりを考えるとやはりこの曲が1曲目で正解ということになる。

エヴァンスはこのアルバムを作る際にどうしてもこだわった部分が
ジャケットに見られる。
タイトルの下に「BILL EVANS TRIO」とある。
それまでのアルバムにはエヴァンスの名前しかなかった。
だが『ポートレイト・イン・ジャズ』では初めて「TRIO」と付く。
つまりはエヴァンスだけの作品ではないと言うことを意味しているのだ。
ここまでの5曲はワンテイクで録音された。いよいよここからが山場となる。

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