国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

着物を縫う「針」と黒い円盤をなぞる「針」

2011年07月19日 | マスターの独り言(日々色々なこと)
最近、コンビニのコミック本で
石森章太郎の『佐武と市捕物控』(小学館)を楽しみにしている。

そもそもコンビニでコミック本を買うことはあまり無いのだが、これは別物だ。
元々、平岡正明氏の『昭和ジャズ喫茶伝説』の中で
『佐武と市捕物控』に触れられていたのが知ったきっかけであったが、
実際に手にとって見ようとは思わなかった。
それがコンビニの棚にぽつねんと並んでいるのだから、
「手に取るべし」と読んでみたのが面白かったわけだ。

下っ引き(岡っ引きの子分のようだ)の佐武と
盲目でありながらも剣の達人である市が江戸で起こる不思議な事件を解決していく。
ミステリアスでありながら、アクションもあり、
しかも人間ドラマもあるというかなり濃厚なマンガだ。

月に一度コンビニに並ぶのだが、買っておいた最新刊をようやくこのごろ読んだ。
その中に「針」という話があった。
針をきっかけに起こる事件に市が巻き込まれていくのだが、
やるせない終わり方で物語が終わる。
それがたまたま先日、レコード針を買い換える前日に読んだものだから、
すぐに結びついてしまった。

レコードを聴くまでは「針なんて何を使っても同じだろう」という意識でいたが、
やっぱり使ってみると針一つででも音が違って聞こえてくる。
『ベイシー』のマスター、菅原氏の著作の中にも出てくるが、
同じメーカーの針でも一本一本で聞こえた方が違ってくるそうだ。
だから同じメーカーの同じ針を買っても、「アタリ」と「ハズレ」があるという。

もちろん僕にはそこまでする財布がないためそれなりに悩むことをする。
今まではデノンの「DLー103」を使っていた。
これも一般的だし、お手ごろ価格なのでいい。
だが、やっぱり最高峰といわれる音も聴いてみたい。
となればオルトフォンといくのが自然の流れだろう。

使っているデノンのプレイヤー「1300M」の
カウンターウエイトも重いものが手に入った。(オルトフォンの針は重い)
そこでオルトフォンの「Cadenza Red」にしてみた。
シェルリードも奮発してオーグライン社のものにしてみる。

聴いて一聴瞭然である。
それまでよりもくっきりと音が分かれて聞こえてくる。
圧倒的に情報量が増えた感じがしてくるのだ。
「なるほど、これがオルトフォンか…」と妙に納得できてしまう音だ。

それまで使っていた針はケースにしまう。
これまでの苦労を考えれば、当然ながら然るべき形で供養も必要になるだろう。
そんな「針」の話である。