国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

バクロク!(ライブという場で生まれるかも知れない最高の音源を録音すること)

2011年07月11日 | ビル・エヴァンスについて
ミュージシャンというのはスタジオとライブでは
全く違う顔を見せる。
そもそもスタジオでは音づくりが入念に行うこともできるため
スタジオでしか生まれない音楽というものもある。
ビートルズがコンサートを開いても観客が誰も聴いてくれないということと共に
スタジオでの音づくりに熱中していったということが
ツアーを止めてしまった理由だという。

ライブというのは観客の熱気にノセられて
普段では考えもつかないようなアイディアが生まれることもあるのも事実だ。
つまりライブ盤というのは、かなりバクチに近いアルバム製作であったと考えられる。
事実、ブルーノートのアルフレッド・ライオンも
ライブ盤を作るのはかなり渋ったというエピソードもある。
(ライオンの性格上、ぴっしりとしたリハーサルまでしたアルバムが作りたかったのだ)

とはいっても、ミュージシャンならば
自分のライブの演奏を残しておきたいという気持ちも起きるらしい。
漫談家、綾小路きみまろ氏も自分のライブは、カセットに録って保管をしておき、
それを聴き直しながらネタの修正を行っているそうだ。

1979年10月30日、
ボストンの『ルル・ホワイツ』でエヴァンスもそう思ったのか?
その日のライブをとりあえず録っておいた。
エヴァンスの最晩年のトリオでの録音というのが公式では少ない。
ベースがマーク・ジョンソン、ドラムがジョー・ラバーベラというラスト・トリオ。
一時期はほとんど音源が出回らずに、
その実態はよく分からないものであったため、評価も高いものではなかった。

エヴァンスはこの日のライブを公式発売しようと考えていたようで、
このアルバムの曲順もかなり練られたものになっている。
1曲目「リ・パーソン・アイ・ニュー」で軽やかに水面を滑るかのような
エヴァンスのピアノが歌い出す。
そこに果敢に挑みかかるかのようなジョンソンのベースがあり、
ラバーベラのブラッシングがある。
エヴァンスの場を支配するかのような音の積み重ねは
どこまでも儚く、それでいてツンと冷たかったりもする。

同じ曲を何度も何度も取り上げていく中で、
エヴァンスは曲の可能性を練り上げていく。
それはやはりスタジオでは生まれない、
ライブという生の緊張感が育んでいくものなのかもしれない。