小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

萩原朔太郎 「陽春」(『月に吠える』より)

2007-02-16 23:59:23 | 
この「陽春」という詩は、「春は遠くからごむ輪のくるまにのつて来る。」と、春を擬人化して、人力車にのってくる様子を描いているのですが、その車夫とお客の春の頼りなさげなところがとっても面白いです。

後半部を抜き出すと、

 「ぼんやりした景色のなかで、
  白いくるまやさんの足はいそげども、
  ゆくゆく車輪がさかさにまわり、
  しだいに梶棒が地面をはなれ出し、
  おまけにお客さまの腰がへんにふらふらとして、
  これではとてもあぶなさうなと、
  とんでもない時に春がまつしろの欠伸をする。」

ということで、春の足取りのおぼつかなさが、ユーモアたっぷりに、実にうまく出ていますね。

萩原朔太郎詩集

岩波書店

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