小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

R・パワーズ 「舞踏会へ向かう三人の農夫」

2018-12-30 23:57:18 | 小説
以前から気になっていたのですが、今年文庫化されたので読んでみると、非常に面白くて、もっと早く読んでおけばよかったと思いました。

物語をつなぐのは、1枚の写真。
ここから現代と1914年の人々の人生と世界の歴史が描かれていきます。
哲学、経済、テクノロジーなどもちりばめながら、小説という形式の魅力を存分に堪能させてくれます。
読み進めていくほど、面白さが加速していきます。

歴史や社会に翻弄されてしまう人間という存在ですが、何か希望を感じさせてくれる、よい読後感が残りました。


舞踏会へ向かう三人の農夫 上 (河出文庫)
リチャード・パワーズ
河出書房新社
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斎藤美奈子 「日本の同時代小説」(岩波新書)

2018-12-29 23:38:40 | 評論・批評
暫くぶりの更新となってしまいました。

本書は、1960年代から2010年代までの日本において、どんな小説が書かれ、また、読まれたかを検証したものです。
そのカバー範囲は、純文学からエンターテイメント、タレント本までかなり広く、自分が読んだ作品もあれば、題名だけは知ってるもの、存在に気がつかなかったものまであります。
(昔の時代のものの方が、馴染みがあったり・・・)
これだけ多くの情報量が新書一冊にまとめてあるのはありがたいです。

1960年代が「知識人の凋落」、1980年代が「遊園地化する純文学」、2000年代が「戦争と格差社会」などというような、章のタイトル付けにも概ね納得です。

そして、小説というものは、時代に敏感で、ときに時代を先取りしているということを、あらためて感じます。
もっと小説を読んでみようという気になりました。

日本の同時代小説 (岩波新書)
斎藤 美奈子
岩波書店
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