小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

内田百 「記念撮影」

2007-03-29 23:59:04 | 内田百
大学で教えていた百先生が、卒業する学生たちに請われて、写真館で記念撮影をすることに。
百先生を真ん中に、学生たちが並んで、写真屋が撮影するのを待っていると、写真屋のせかせかした動きが、だんだん可笑しくて堪らなくなってきます。
じっとこらえていた先生ですが、若い学生たちは、笑いが今にも破裂しそうになっている様子。
写真屋がレンズの蓋を取ろうとすると、ついに吹き出す者がいて、一同爆笑。
写真屋さんは、さも情けないという表情をしています。
何度やり直しても、笑いが止まらず、写真屋がムキになるほど、可笑しさも増大してしまいます。
何とか撮影した写真では、みんな曖昧な表情をしていました。

最後に、「当時の連中はみんな大きくなつて、方方の役所や会社で尤もらしい顔をしてゐるから、今みんなを集めてレンズの前に列ばしても、もう笑はないだらう」と、若かりし時代を懐かしく思う気持ちが述べられています。

旺文社文庫『随筆新雨』で、3ページ。
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カフカ 「十一人の息子」

2007-03-27 23:59:38 | 小説
十一人の息子を持つ父親が、それぞれの自慢(?)をしつつ、欠点を次々と挙げていく、という超短篇です。

長男・・・真面目だし、頭もいいが、単純すぎる。
次男・・・男前でスラリとしており、切れ者だが、左目をいつも瞬きしている。
三男・・・美男だが、世間知らず。
といった具合に、11人分の愚痴がならんでます。

要するに、父親というものは、息子に対して、自分が上だと思って、権威を振りかざしていたいだけなのかも知れませんね。
そんな父親自体がどうなんだろうと、ちょっと可笑しくなってしまいます。
しかし、これが高じると、「判決」の父親のように恐るべきものになってしまうわけなんですね。

カフカ寓話集

岩波書店

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蔵(舞台セット風?)

2007-03-24 23:59:56 | 写真
街を歩けば、時々ちょっと不思議な建物に出会います。



BESSA-R2M ・ Biogon T* 25mm/F2.8 ・ PROVIA100F
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森田草平 『煤煙』

2007-03-22 23:53:38 | 長編つまみ食い
明治41年3月、文学士・森田米松(草平・満27歳・作中では「要吉」)と会計検査院検査官の娘・平塚明子(満22歳・作中では「朋子」)が、塩原温泉郷の山奥で心中を企てたところ、未遂に終わって警官に保護される、という、いわゆる「煤煙事件」が起きました。
この「心中」未遂は、実は、まったく、男女の心中らしくないんですね。
そもそも、二人の間には恋愛感情があるのかも疑問です。
会話も芝居じみていて、とってもヘン。

朋子の自我の強さに驚いて、要吉が「ど、何うしてこんな女が出来た?」と問えば、朋子は、「私--ひとりでこんなになつちやつた。」などと答えます。
しまいには、「私は女ぢやない。」とまで言って、要吉を蒼ざめさせます。(『煤煙』十九)

朋子が心中決行前に書いた手紙には、
「われは決して恋のため人のために死するものに非ず、自己を貫かんがためなり、自己の体系(システム)を全うせむがためなり、孤独の旅路なり。」(同三十二)などと記されています。

やはり、らいてう、タダ者ではないですね。
草平、ちょっと可哀そう・・・

昔読んだ「『新しい女』の到来ー平塚らいてうと漱石-」(佐々木英明著・名古屋大学出版会・1994年刊)が、なかなか面白かったです。

煤煙

岩波書店

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いささ群竹(小雨冷たき神楽坂にて)

2007-03-19 23:52:15 | 写真
せっかく出かけても雨の日もあります。
この日は3カットにて終了・・・
それもまたよし。


BESSA-R2M ・ C Sonnar T* 50mm/F1.5 ・ PROVIA100F
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神楽坂にて

2007-03-18 23:00:20 | 写真
先週、あいにくの天候の中での散策で見つけた、自然と融合したなかなかお洒落なお宅です。


BESSA-R2M ・ Biogon T* 28mm/F2.8 ・ PROVIA100F
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星野智幸 『植物診断室』 

2007-03-17 23:59:56 | 読書
本館<読書室>更新しました。

今回の本は、星野智幸『植物診断室』です。

主人公の寛樹は、植物になる催眠療法を行う「植物診断室」に通い、ベランダにミニジャングルを作る、40過ぎの植物好きなシングル男性です。
子供に好かれることから、離婚して男の子を育てている女性から、男性の手本となるよう、子供の相手をしてほしい、という依頼を受けます。
その仕事はうまく行っていたのですが、ある時、寛樹がその家族の中での地位を主張してしまうと・・・

はじめは、単なる「癒し」系の小説かと甘めに見ていましたが、最終部での転回によって、小説が意味づけられたように思います。
「お山の杉の子」の歌詞は知らなかったのですが、忠君報国的な歌だったんですね。
「スギノコ」にはご注意を・・・


植物診断室

文藝春秋

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若山牧水 「植木屋は無口・・・」

2007-03-15 23:59:59 | 短歌・俳句
「植木屋は無口のをとこ常磐樹の青き葉を刈る春の雨の日」(牧水)

黙々と、植木を剪定していく職人さんは絵になりますね。
雨の中なら、さらにシブそうです。
哀愁を帯びた静かな時間の流れを感じます。
それもまた悪くない。

若山牧水歌集

岩波書店

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コメント (2)
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石川啄木 「手套を脱ぐ手・・・」

2007-03-12 23:48:14 | 短歌・俳句
ここのところ寒さが戻ってきて、手袋はまだしばらく必要なようです。
ということで

「手套を脱ぐ手ふと休む
 何やらむ
 こころかすめし思い出のあり」 (啄木)

映画のワンシーンが浮かんで来るような、印象的な一首ですね。

新編 啄木歌集

岩波書店

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バランス

2007-03-10 23:55:02 | 写真
いやー、お見事です。 (3/4上野公園にて)


BESSA-R2M ・ HELIARclassic 50mm/F2.0 ・ PROVIA400X
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