小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

内田百 「素人写真」

2006-09-28 23:56:12 | 内田百
人事異動などで宴会の多い時期です。
たまにカメラを持ってきて写真を撮るように頼まれることがあるのですが、どうも苦手です。(写されるのも)

百先生は大の写真嫌いで、この文章では、宴会で写真を撮られることの不愉快さを語っています。まことに、ごもっともな意見です。
しかしながら、こんなに頑なに拒否されると、逆に、どうしても撮りたくなってしまうのも人情かも知れません。

「百鬼園写真帖」を見てみると、やはり不機嫌そうな表情のものが多いです。
でも、そういうところがいいですね。
数少ない笑顔の写真もいっそう引き立ちます。

旺文社文庫『鬼苑横談』で、2ページ。
ちくま文庫『集成12 爆撃調査団』に収録。

「内田百集12 爆撃調査団」

ちくま文庫

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「内田百集成24 百鬼園写真帖」

ちくま文庫

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土堤みち

2006-09-26 23:18:52 | 写真
なかなかすっきりした青空は拝めませんね。

こちらは、先の土曜日に散策した、小貝川の土堤での風景です。
東の海上にある台風のせいで雲が多い中、晴れてるうちにということでしょうか、河原にお出かけの人々がちらほら見かけられました。


BESSA-R2M ・ Biogon 2.8/25mm ・ PROVIA100F
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チェーホフ 「ロスチャイルドのバイオリン」

2006-09-24 23:35:30 | 小説
年老いた棺桶職人であるヤーコフは、副業として、時折、ユダヤ人のオーケストラでバイオリンを弾いていたが、フルート担当のロスチャイルドとは、犬猿の仲であった。
ヤーコフは、毎日、自分の「損」を計算して帳面に書き込んでいるというような人生を送ってきたが、ある時、妻が病気になって死んでしまい、ヤーコフは、過去を振り返って、人生の虚しさを思う。
やがて、彼自身にも死が近づく中、バイオリンを弾くと、哀しく感動的な調べを奏でた。
それを聴いたロスチャイルドが感動し、「ワッフフフ!…」と呟く。
そして、ヤーコフは、そのバイオリンをロスチャイルドに与えるよう、遺言する。

感動と哀しみから来る何とも言えない感情を表現する、ロスチャイルドの「ワッフフフ!…」という呟きがとてもいいです。
この小説は、けして厭世的なものではなく、人間存在に対する深い愛情が込められているように思います。
人生の哀しみが描かれているにもかかわらず、それでも生きていくのだ、と元気を与えてくれます。

みすず書房『チェーホフ 短篇と手紙』に収録、17ページ。

チェーホフ 短篇と手紙

みすず書房

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対照

2006-09-23 23:59:22 | 写真
なぜか気になって撮った被写体です。
金属とプラスチックでできた人工物が、緑の小木の仲間のように並んでいたところに惹かれたのかも知れません。
取り合わせの妙、と言ったところですね。



BESSA-R2M ・ HELIAR classic 50mm/F2.0 ・ Velvia100F
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菊池寛 「入れ札」

2006-09-20 23:54:58 | 小説
自●党総裁選にちなんで、今日のお題は、菊池寛の「入れ札」です。

国定忠治が乾児とともに、捕方に追われて逃げる途中、大勢では目立つので、乾児のうち、二、三人だけ連れて、別れ別れになろうとする。
忠治の心の中では、連れていきたい三人は決まっていたが、ここまで命がけでついてきた乾児たちを自ら選別するのは忍びがたく、乾児の「入れ札」(投票)により、誰を連れていくかを決めることになる。
そこで、九郎助という乾児は、虚栄心から自分の名前を書いてしまうが、深く後悔することになる・・・

九郎助の虚栄心が批判的に書かれているようでもありますが、なかなか可愛いところもあるように思います。
自分ではっきり言わずに、乾児たちに委ねた忠治が一番ずるいのではないでしょうか?

柄谷行人は、投票よりも籤引きがよいと主張して、この短篇を引用していました。
(『日本精神分析』)

恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇

岩波書店

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日本精神分析

文藝春秋

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敬老の日

2006-09-18 23:20:03 | 写真
今日は、敬老の日。

「戦中派天才老人・山田風太郎」(ちくま文庫(品切?)・単行本はマガジンハウス)は、関川夏央が、山田風太郎のもとを一年半にわたって訪ね、そこでの会話を座談的物語にしたもの。
この天才老人の話は、機知に富み、飄逸であって、時には健忘も混じって、実に楽しいです。

谷崎潤一郎の「瘋癲老人日記」(新潮文庫)、室生犀星の「われはうたえどもやぶれかぶれ」(講談社文芸文庫)なども、恐るべき老人たちと出会えます。

戦中派天才老人・山田風太郎

マガジンハウス

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BESSA-R2M ・ Biogon 2.8/25mm ・ Velvia100F
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コムラサキ(ムラサキシキブ属)

2006-09-17 22:05:52 | 写真
三連休いかがお過ごしでしょうか?

今日は、曇り空の下、秋を探しに公園へ。
紫色の小さな実をびっしりと付けた小木を見つけました。
ムラサキシキブの仲間のコムラサキのようです。
実りの秋ですね。
マクロレンズと一眼レフを持って来なかったのが残念。


BESSA-R2M・HELIAR classic 50mm/F2.0・Velvia100F
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内田百 「秋扇」

2006-09-16 23:59:59 | 内田百
百先生、ラヂオを廃すの巻。
ラヂオをつけると、つまらない事を言っているとか、演奏があまりに下手くそだったりして、却って聴き入ってしまい、腹を立ててしまうことになるというのが、その理由です。
そして、ラヂオを聴いていて一番困るのが天気予報を聴くことで、これは、病人が自分でしきりに体温や脈拍を測るようなものであって、実際の天気がどうなるものでもないから、何の役にも立たないとの御説です。
ラヂオを止めて先進的になった百先生、「なんだ、君の家には、まだラヂオがあるのか」と言ってみたくて仕様がない。

現代で言えば、テレビを廃す、ということになるのでしょうが、私にはとてもできそうにありません。
天気予報なども気になって何度も見てしまいますし・・・(笑)。

旺文社文庫『有頂天』で2ページちょっと。
ちくま文庫「百集成(12) 爆撃調査団」に収録。

爆撃調査団―内田百〓集成〈12〉

筑摩書房

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田村隆一 「保谷」(『言葉のない世界』より)

2006-09-13 23:59:59 | 
突然に秋がやってきて、この詩を思い出しました。

「保谷はいま
 秋のなかにある ぼくはいま
 悲惨のなかにある」
とはじまり、(中略)

「ちいさな部屋にちいさな灯をともして
 ぼくは悲惨をめざして労働するのだ
 根深い心の悲惨が大地に根をおろし
 淋しい裏庭の
 あのケヤキの巨木に育つまで」
と結ばれます。

孤独と、一見、絶望を思わせますが、全体を読むと、それを原動力にして、世界を作り上げていこうとする、ある種の強さを感じることもできます。
(まったく勝手な読み方かも知れませんが・・・)

ともかく、武蔵野の秋にぴったりの詩だと思います。

講談社文芸文庫「腐敗性物質」に収録。

田村隆一「腐敗性物質」(講談社文芸文庫)

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龍ヶ崎市・諸岡邸の赤レンガ

2006-09-11 23:07:52 | 写真
竜ヶ崎駅近くにある邸宅の赤レンガ塀が今日から解体されるということで、昨日まで、敷地内での撮影が自由にできるようになっていました。
最終日の昨日、見納めに出かけていったところ、カメラを手にした多くの人が訪れていました。
風格のあるたたずまいで、バルザックなら、小説の一つでも書いてしまいそうです。
移築・保存の計画が進められているので、再びその姿を目にすることのできる日が来るかも知れません。


BESSA-R2M ・ Biogon T* 2.8/25mm ・ Velvia100F
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