小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

司馬遷 『史記』 (徳間文庫カレッジ)

2020-05-08 23:56:32 | 歴史
今般の新型コロナウイルス感染症に関して、「歴史的緊急事態」として公文書管理がなされることとなっています。

だいぶ以前、武田泰淳の『司馬遷-史記の世界』を読んでから、史記を読みたいと思っていたのですが、紀伝体の形式で大部のため、なかなか手を出せずにいました。
3、4年くらい前に、徳間文庫カレッジの『史記』が書店に並んでいたのを購入し、その片鱗に触れることができました。
この文庫では、史記の要所を、本紀、世家、列伝から時代順に切り取って整理しており、読みやすくなっています。
まず翻訳があり、その直後に原文(句読点のみ付与)と書下し文があるので、ストーリーをつかみつつ、原文の雰囲気も味わえる構成となっています。
巻を読み進めるほど面白くなって、通読することができました。
長い歴史も、短い間に活動する個々人の連なりから作り上げられていることを強く感じました。
本篇は一~七巻までで、第八巻は、概要、古事名言、人物小辞典を収めたガイドとなっています。
次は、本格的に完全版を読んでみようかという気にもさせてくれます。



 
 
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武田博幸 『古典つまみ読み 古文の中の自由人たち』 (平凡社新書)

2020-05-06 21:29:49 | 読書
これは、昨年読んだ本ですが、面白かったので、紹介させていただきます。
予備校の講師を長年務めた著者が、大人向けに、古文に登場する「自由人」たちを、紹介しています。
ここに云う「自由人」は、広い意味を持っているように思われます。
取り上げられた古文は14作で、誰でも書名を知っているものから、それほど読まれていないであろうものまで、様々です。
まず、それぞれの作品についての概説と、取り上げた節の内容についての解説があって、最後に脚注付きの原文が掲げられていて、読みやすくなっています。
一番心に沁みたのは、『更級日記』の、姉妹と猫との触れ合いの場面です。
一方で、『芭蕉翁頭陀物語』の一節で、支考のたくらみがバレても飄々としている様子も面白かったです。
また、出家者たちの生き方も興味深く読みました。
古文の中に自由人たちを探してみるのはいかがでしょうか?


 
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鴨長明 『方丈記』

2020-05-05 19:04:19 | 読書
例年とはだいぶ異なるゴールデンウィークとなってしまいました。

今年のお正月に、書店で方丈記の文庫本を目にして久しぶりに読んでみようと思い、購入しました。
岩波文庫で、脚注、補注付きで、現代語訳はついてないものの、元の文がリズミカルで、短いものですから、意外とスムーズに読めました。最古の写本(大福光寺本)の印影も付されていて、往時の雰囲気も味わえます。
広く知られている「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゝ"まりたるためしなし。」との冒頭に代表されるように、無常観(感)に満ちています。
大火、辻風(竜巻)、福原遷都(人災?)、飢饉(その上疫病も)、震災など、都を襲った数々の災害に、無常を痛感し、後年には、都を離れた里山に、一丈四方の小屋を建てて住むというわけです。
しかし、悟りきっているわけではなく、いろいろな思いが交錯して、それが滲み出ているところが、かえって人間くさくてよいと思います。
都を離れて清々しているようでありながら、都の情報はしっかりフォローしていたりします。
いまも災厄の時代ですが、人間は昔から様々な困難に晒されてきていながらも、人の営みは続いていることを再認識しました。
後で購入した角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスの方は、意訳的な現代語訳がメインとなっていて、現代人に合った親切(ある意味で過剰な?)解説が付いているので、これも併せて読むと、様々な見方ができて一層興味深いです。







 
 
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