小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

夏目漱石 「ケーベル先生」

2005-11-30 22:50:37 | 随筆・エッセイ
住んでる家や、室内の様子、着ている物、数少ない会話などによって、ケーベル先生の人となりを見事に浮かび上がらせる名文です。
一度は読んだことのある方が多いと思いますが、またじっくり読み直してみると静かで満たされた気持ちになります。
新潮文庫「文鳥・夢十夜」(6ページ)、岩波文庫「思い出す事など 他七篇」等に収録。
文鳥・夢十夜

新潮社

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思い出す事など 他七篇

岩波書店

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カフカ 「バケツの騎士」

2005-11-29 23:08:55 | 小説
冬の夕、石炭の尽きた金のない男が、空っぽのバケツに跨り、高々に飛んで、石炭屋へとやってくる。
石炭屋の女房は、客である「バケツの騎士」に気づきながらも、知らぬふりを決め込む。
切羽詰った深刻な状況のはずですが、何ともつかみどころのない軽さが不思議に感じられます。
岩波文庫「カフカ短篇集」で、6ページ。
カフカ短篇集

岩波書店

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マーク・トウェイン 「その名も高きキャラヴェーラス郡の跳び蛙」

2005-11-28 23:17:20 | 小説
友人の依頼で訪ねて行った老人に聞かされるむだ話。
立て板に水のごとく語られる賭事好きの男についての物語が、とてもおかしくて笑えます。
岩波文庫「バック・ファンショーの葬式 他十三篇」(15ページ)に収録されていますが、こちらは品切れの模様。
新潮文庫「マーク・トウェイン短編集」にも、「噂になったキャラベラス郡の跳ぶ蛙」(11ページ)として収録されていますが、岩波の訳の方が雰囲気が出ていてよいと思います。
マーク・トウェイン短編集

新潮社

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リング・ラードナー 「アリバイ・アイク」

2005-11-27 22:51:06 | 小説
失敗してもうまく行っても言い訳をせずにいられない野球選手を、チームメイトの口を借りて語る。
よくもまあ、こんな言い訳が思いつくなと、呆れながらも憎めない。
久しぶりに読み返してみましたが、やっぱり面白いですね。
白水uブックス「アメリカ・ユーモア文学傑作選 笑いの新大陸」に収録。(36ページ)
笑いの新大陸―アメリカ・ユーモア文学傑作選

白水社

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ヴァルター・ベンヤミン 「写真小史」

2005-11-26 23:35:06 | 評論・批評
写真というメディアを、社会学的・政治的に論じた基本的批評。
文庫本(ちくま学芸文庫「ベンヤミン・コレクション1」)で30ページ足らずながら、よく本質を突いています。
ちくま学芸文庫「図説 写真小史」なら、アジェ等の図版が小さいながらも載っているので、理解の助けになります。
写真に関連するものとして、ロラン・バルトの「明るい部屋」は、楽しく読める写真についてのよき哲学的エッセイですね。
図説写真小史

筑摩書房

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室生犀星 「陶古の女人」

2005-11-25 23:16:55 | 小説
古陶の美しさに溺れて、陶磁器がまるで人間(女性)であるかのような、深い思い入れを持つ作家の話。
馬鹿馬鹿しいほどの耽溺ぶりがおかしい。
講談社文芸文庫「蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ」に収録。(18ページ)
この文庫の表題作2つは「小品」ではないので、ここではとりあげませんが、とても面白い、ヘンな老人文学です。
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ

講談社

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コメント (2)
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バルザック 「グランド・ブルテーシュ綺譚」

2005-11-24 21:42:28 | 小説
田舎町のはずれにあるうち捨てられた館に秘められた悲劇が、かつてそこの小間使いだった女性により、その地に滞在した医者に語られる。
館には以前、伯爵夫妻が住んでおり、夫人が、仮釈放中の捕虜であるスペイン人と密会していたが、折悪しく、伯爵が突然部屋にやってきたので、スペイン人はあわててクローゼットに隠れる。
そして、その気配を感じた伯爵は、残酷な復讐を行う。
謎を提示して、それを次第に明かしていき、人間の恐ろしさをまざまざと見せつける話の作り方が実にうまいです。
この短編は、後に改作されて、「続女性研究」という中篇になったとのことです。
94年復刊の岩波文庫「海辺の悲劇 他三篇」に収録。(38ページ)
品切れですが、古本は安く手に入りそうです。
海辺の悲劇 他3篇

岩波書店

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谷崎潤一郎 「美食倶楽部」

2005-11-23 22:38:23 | 小説
旨いものを追求する男たちが集う美食倶楽部の会長格であるG伯爵が、新たな御馳走を求めてさまよっていると、偶然に、中国人が極上の料理を味わう秘密クラブ的な会館にたどりつく。
そこで見た不思議な料理を美食倶楽部の会員に振る舞うのだが、なかでも「火腿白菜」というのがすごい。
会員たちは暗闇の中に立たせられ、そこに、人の近づく気配がして・・・。
どんな料理かは、読んでのお楽しみということで。
ちくま文庫「美食倶楽部-谷崎潤一郎大正作品集-」に収録。(54ページ)
こちらは在庫切れのようですが、中公文庫「潤一郎ラビリンス7 怪奇幻想クラブ」で読めます。
(「潤一郎ラビリンス」シリーズも、そのうち品切れになるかも・・・)
美食倶楽部―谷崎潤一郎大正作品集

筑摩書房

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潤一郎ラビリンス〈7〉怪奇幻想倶楽部

中央公論社

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樋口一葉 「十三夜」

2005-11-22 23:23:30 | 小説
十三夜に、嫁ぎ先の家を飛び出して実家に戻ってきたお関。
実家での両親とのやりとりが切なく心に沁みてきます。
文章がとっつきにくく思われるかもしれませんが、地の文に会話が多く組み込まれていて、リズムもあり、読み進むうちに、その人情味あふれる世界に自然と入っていくことができます。
岩波文庫で23ページ。
大つごもり・十三夜 他5篇

岩波書店

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田山花袋 「少女病」

2005-11-21 22:59:54 | 小説
毎日欠かさず電車に乗って、お気に入りの少女たちを見つめて楽しむ妻子持ちの中年男。
明治時代のストーカーに、呆れるばかりです。
もう一度会いたいと思った少女を見ることができて、夢中になったあまり、電車から落ちて轢かれてしまった男は、本望だったものでしょうか?
集英社文庫「私小説名作選」で、17ページ。
文庫では、絶版・品切れとなっているようですが、青空文庫で電子データが読めます。

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