小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

田村隆一 「保谷」(『言葉のない世界』より)

2006-09-13 23:59:59 | 
突然に秋がやってきて、この詩を思い出しました。

「保谷はいま
 秋のなかにある ぼくはいま
 悲惨のなかにある」
とはじまり、(中略)

「ちいさな部屋にちいさな灯をともして
 ぼくは悲惨をめざして労働するのだ
 根深い心の悲惨が大地に根をおろし
 淋しい裏庭の
 あのケヤキの巨木に育つまで」
と結ばれます。

孤独と、一見、絶望を思わせますが、全体を読むと、それを原動力にして、世界を作り上げていこうとする、ある種の強さを感じることもできます。
(まったく勝手な読み方かも知れませんが・・・)

ともかく、武蔵野の秋にぴったりの詩だと思います。

講談社文芸文庫「腐敗性物質」に収録。

田村隆一「腐敗性物質」(講談社文芸文庫)

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