小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

斎藤美奈子 『忖度しません』 (筑摩書房)

2020-11-23 22:08:03 | 評論・批評

 2015年から2020年まで掲載分の、政治、社会、地方問題、文学に関する、書評を通じた同時代批評を、再編集したものです。
ひとつの項目ごとに3冊の本が取り上げられ、これを基に、鋭く問題提起がなされていきます。
対象となる本や出来事は次々と過去のものとなっていくわけですが(問題は続く・・・)、それをどうとらえていくかは、これから先につながるはずです。
本の帯には、「あなたもわたしも、この国の当事者。自分の言葉で、ちゃんと語るために。」と書かれています。
本の見開きには、『続・裸の王様』という、地下出版された本についてのコラム記事(2020.4.1掲載)が、こっそり?載ってました。

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佐藤優・宮家邦彦 『世界史の大逆転』(角川新書)

2019-03-09 22:55:52 | 評論・批評
元外務省勤務の二人が、急変する国際情勢について語ります。
朝鮮半島、トランプ政権の米国、プーチン大統領のロシア、習近平主席の中国、中東の混迷、自国優先主義が潜む欧州、さらにはAIについてなど、新書一冊の中に、広範な論考が繰り広げられています。
その内容は冷静、現実的で、中長期的な視点からのものです。
ニュースの読み方も変わるかもしれません。

世界史の大逆転 国際情勢のルールが変わった (角川新書)
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KADOKAWA
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橋爪大三郎・大澤真幸 『アメリカ』 (河出新書)

2019-02-06 23:43:04 | 評論・批評
 アメリカという、特殊でありながら世界のスタンダードを作っている国について、キリスト教やプラグマティズムなどを切り口として、対談形式で分析していきます。
 第1部では、建国から現在に至るまで、社会の基礎となっているキリスト教に関して論じています。各都市や大学の成り立ちにまで深く関係しているんですね。
 続く第2部では、プラグマティズムを糸口として、「アメリカ的とはどういうことか」を語ります。高校のとき、倫社で「プラグマティズムって哲学らしくないなぁ」という印象を受けたのですが、やはり、ヨーロッパ発祥の哲学とは全く異なるもののようです。
 第3部は「私たちにとってアメリカとは何か」ということで、読者に考えるきっかけを与えてくれるものです。
 新書にしては厚めですが、興味深く最後まで読むことができました。
 


アメリカ(河出新書)
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河出書房新社
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斎藤美奈子 「日本の同時代小説」(岩波新書)

2018-12-29 23:38:40 | 評論・批評
暫くぶりの更新となってしまいました。

本書は、1960年代から2010年代までの日本において、どんな小説が書かれ、また、読まれたかを検証したものです。
そのカバー範囲は、純文学からエンターテイメント、タレント本までかなり広く、自分が読んだ作品もあれば、題名だけは知ってるもの、存在に気がつかなかったものまであります。
(昔の時代のものの方が、馴染みがあったり・・・)
これだけ多くの情報量が新書一冊にまとめてあるのはありがたいです。

1960年代が「知識人の凋落」、1980年代が「遊園地化する純文学」、2000年代が「戦争と格差社会」などというような、章のタイトル付けにも概ね納得です。

そして、小説というものは、時代に敏感で、ときに時代を先取りしているということを、あらためて感じます。
もっと小説を読んでみようという気になりました。

日本の同時代小説 (岩波新書)
斎藤 美奈子
岩波書店
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カール・マルクス 『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日[初版]』(平凡社ライブラリー)

2012-11-11 22:05:20 | 評論・批評
アメリカ大統領選は終了して、日本では解散風が強まっているようですね。

代表を選ぶ選挙によって民主主義が行われることになっていますが、投票した人にとっては、どうも思ったようになってないということも多いのではないでしょうか?

本書は、男子普通選挙が行われた共和制下のフランスで、ルイ・ボナパルト(ナポレオン3世)のクーデターが成功し、国民投票で圧倒的支持を得たのはなぜかということを考察しています。
経済的状況に基づく各階層の人々の思惑、代表するものと代表されるものとのズレ、など様々な側面が浮かびあがってきます。

冒頭の有名な一節
「ヘーゲルはどこかで、すべての偉大な世界史的事件と世界史的人物はいわば二度現れる、と述べている。彼はこう付け加えるのを忘れた。一度は偉大な悲劇として、もう一度はみじめな笑劇として、と。」(植村邦彦訳)

古いと思わずに一度読んでみるとなかなか面白いです。
歴史は繰り返す、とも言われますし。

ルイ・ボナパルトのブリュメール18日―初版 (平凡社ライブラリー)
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平凡社
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長山靖生 『日本SF精神史』

2012-05-12 23:59:50 | 評論・批評
幕末・明治から戦後までの日本におけるSF(的)作品を、文学史・社会史的にたどった本です。
2009年12月の出版で、日本SF大賞と星雲賞をW受賞したということですが、その当時は知りませんでした。

ジュール・ヴェルヌの移入が意外に早かったり、それに刺激を受けた作品が多く出るなど、日本人はなかなかSF好きだったんですね。
様々な作品が紹介されていて面白いです。

明治の文学者もところどころに出てきて、SFファンのみならず、文学好きにも楽しめると思います。

明治の法学者・加藤弘之が、恒星間移民に言及していたというのには驚きました。

SF精神はいいですよ。

日本SF精神史----幕末・明治から戦後まで (河出ブックス)
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河出書房新社
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本田和子 『異文化としての子ども』

2007-05-05 23:20:57 | 評論・批評
今日は「こどもの日」。

子供時代もはるか遠い日々となってしまいました。

『異文化としての子ども』(本田和子著)を、文庫化されたときに読んで、子供って全く別の世界を生きていたんだなあ、とあらためて思わせられました。(自分も昔はそうだったはずですが…)

「べとべと」、「ばらばら」、「わくわく」、「もじゃもじゃ」、「ひらひら」などをキーワードに、大人の秩序社会を挑発する子ども世界を見せてくれて、興味深いです。

ちくま学芸文庫で出ています。

異文化としての子ども

筑摩書房

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大杉栄 「生の拡充」

2006-09-01 21:20:02 | 評論・批評
関東大震災から15日後の1923年9月16日、アナーキスト大杉栄は、憲兵隊に拘引され、甘粕大尉により(異説アリ)、妻の伊藤野枝および幼い甥とともに虐殺されてしまう。

1913年に発表された本論では、人類の歴史は征服者と被征服者の両極からなる社会を作り、その双方に腐敗と堕落を引き起こした、と述べています。
そして、人の上の人の権威を排除して、みずからが主宰することが、生の拡充の至上の手段である、と主張しています。

「征服の事実がその頂上に達した今日に於ては、階調はもはや美ではない。美はただ乱調に在る。階調は偽りである。真はただ乱調に在る。」

大逆事件後の抑圧的な時代に、こんなことを言えるのはスゴイです。

岩波文庫『日本近代文学評論選 (明治・大正篇)』で、8ページ。

日本近代文学評論選 (明治・大正篇)

岩波書店

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夏目漱石 「文展と芸術」

2006-08-27 23:59:04 | 評論・批評
漱石が1912年の文展(文部省美術展覧会)を見た際の批評です。
はじめに、「芸術は自己の表現に始まって、自己の表現に終わるものである。」として、芸術一般について述べています。
続いて、実際に文展で見た個々の作品の批評をしているのですが、ずいぶん辛辣なところもあって、漱石の率直な意見が書かれています。
また、以前に他の展覧会で見た作品への言及もあり、漱石が美術に対して大いに関心を抱いていたことがわかります。
「それから」の中でも、青木繁の絵に触れていましたね。
本館読書室で取り上げた「日本近代美術史論」にも、漱石の文章が引用されています。

この批評を読むには、文展出品作の絵画がどのようなものか知ることが必要と思います。以前(1980年)、講談社文庫ATで、「夏目漱石・美術批評」というのが出ていて、本作に加えて、出品作の図版や会場の見取り図などが収められていて、便利だったのですが…

日本近代美術史論

筑摩書房

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坂口安吾 「堕落論」

2006-08-19 23:59:59 | 評論・批評
安吾は、終戦の翌年に書かれたこの文章で、人間は元来墜ちていくものであるところ、政治的に作られた価値観によって抑えられていたが、それから自由になることが必要だと、「生きよ墜ちよ、その正当な手順の他に、真に人間を救い得る便利な近道が有りうるだろうか。」と書いています。
しかし、墜ち続けることはとても苦しいことですから、人間は、そういう分かりやすい枠を求めてしまうわけなんですね。
作られた枠に従えば、ある意味で楽かも知れませんが、その術中にはまって後悔しないためには、自らよく考えていくことが必要ですね。
ところで、「堕落論」の中にも、靖国神社のことに触れられているのですが、世論調査で、首相の参拝に賛成する人が半分以上だったというのは、驚きでした。
(実際には、私の周囲の人に聞いてみると、そんなことはなさそうなのですが…)
ちくま文庫『坂口安吾全集14』で、12ページ。
堕落論

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