小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

レンジファインダー BESSA-R2M

2006-07-30 22:14:29 | 写真
この週末、初めてレンジファインダー(RF)カメラというものを使いました。
RF機としては、Zeiss Ikon を買いたいと思ってたのですが、値段の問題と、シャッターが電子制御式でAEということなので、機械式シャッターでフルマニュアルのBESSA-R2Mの50mm/F2.0付きセットにしました。
デジタル全盛の今の時代に、このようなものが新製品として出てくるのは嬉しいです。
レンズ1本では寂しいので、35mm/F2.5のパンケーキレンズも購入。
いざ撮影となると、慣れないもので、35mmのフレームのまま50mmのレンズで撮ってしまったり、ピントや露出合わせに手間取ったりしながら、土日でポジ1本分試し撮りしました。
フルマニュアルは、何かと面倒ですが、面白さも増えたような気がします。
いろいろと失敗しつつ、楽しんでいきたいと思います。
こちらは、50mmでの撮影ですが、本館の方には、35mmのも載せてみました。

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萩原朔太郎 「およぐひと」(『月に吠える』より)

2006-07-29 23:39:37 | 
今日は、真夏日になったので、涼しげな詩を。

 およぐひとのからだはななめにのびる、
 二本の手はながくそろへてひきのばされる、
 およぐひとの心臓(こころ)はくらげのやうにすきとほる、
 およぐひとの瞳(め)はつりがねのひびきをききつつ、
 およぐひとのたましひは水のうへの月をみる。

この詩をはじめて読んだのは、たぶん、小学生のときの国語の時間だったと思いますが、ずっと印象に残っています。
泳ぐ人の美しいフォームと、水の中の静かで透明な世界が、目に浮かんでくるようです。

角川文庫のリバイバル復刊『詩集 月に吠える』で読みましたが、岩波文庫の『萩原朔太郎詩集』には入っていませんでしたので、『月に吠える』が全編収録されている本などでお読み下さい。
詩集 月に吠える

日本図書センター

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夏目漱石 芥川・久米宛「牛になる事」(大正5年8月24日)

2006-07-27 23:43:09 | 書簡
芥川龍之介と久米正雄に宛てて、「牛になれ」と書いた有名な手紙です。
若い門下生を相手に、漱石も溌剌としている様子が文面から感じられます。
文学の話ばかりではなく、古道具屋で絵を買おうとしたら、高い値段を言われて、それなら自分で書いてやると思ったなど、笑わせる余談も差し挟まれています。
そして、終わりの方で、
「牛になる事はどうしても必要です。…
 あせっては不可せん。頭を悪くしては不可せん。根気ずくでお出でなさい。
 …うんうん死ぬまで押すのです。
 …何を押すかと聞くなら申します。人間を押すのです。」
とアドバイスをしているのですが、芥川は牛のように進むことができなかったんですね。
最後に、「これから湯に入ります。」などとあると、書いている人の姿が浮かんで、親しみが湧きます。
岩波文庫『漱石書簡集』などで。
漱石書簡集

岩波書店

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内田百 「河童忌」

2006-07-24 23:59:58 | 内田百
百と芥川は作風が全く異なりますが、なぜか気が合ったようです。
芥川の死因について、いろいろと想像されているが、それに加えて、「あんまり暑いので、腹を立てて死んだのだらう」と、死の二日前に会っている百は書いています。
そして、8年目の河童忌に、百が手向けた一句。
 「河童忌の庭石暗き雨夜かな」

「竹杖記」にも芥川と海軍機関学校の思い出が書かれています。

「河童忌」は、ちくま文庫『百集成(6)』に収録。
間抜けの実在に関する文献―内田百けん集成〈6〉 ちくま文庫

筑摩書房

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芥川竜之介 「天才」(『侏儒の言葉』より)

2006-07-23 23:59:02 | 箴言・断片
『侏儒の言葉』の中の「天才」についてのアフォリズムは、作家としての芥川の悩みが出ているようです。
例えば、
「民衆も天才を認めることに吝かであるとは信じ難い。しかしその認めかたは常に頗る滑稽である。」
とか
「天才の悲劇は『小ぢんまりした、居心の好い名声』を与えられることである。」
など、孤独感が強かったんでしょうね。
「同時代はそのために天才を殺した。後代はまたそのために天才の前に香を焚いている。」
などと書いているのは、あまりにもはまりすぎです。
岩波文庫などで。
侏儒の言葉・文芸的な、余りに文芸的な

岩波書店

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吉本隆明 「過去についての自註」(『初期ノート』あとがき)

2006-07-21 23:59:57 | 箴言・断片
週末の今日は、仕事帰りに本屋に寄って、何日か前に新刊文庫の広告に出ていた、吉本隆明の『初期ノート』を買ってきました。
はじめの数十ページをざっと読んでから、「あとがき」に相当する「過去についての自註」を読んでみました。
自分の過去の思想の歩みを(未成熟な時代を含めて)、堂々と、隠すことも飾ることもなく、ごく自然に公刊できるというところに、著者の大きさを感じました。
現実や体験によって思想を作り上げてきたことに裏付けられたものでしょう。
この「自註」には、青春時代の思想形成の源泉となるような思い出も語られていて、『初期ノート』への興味を深めてくれます。
ボリュームがありますが、これから、少しずつ読んでいきたいと思います。
光文社文庫から出ています。
初期ノート

光文社

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武田百合子 「富士日記」(昭和42年7月18日)

2006-07-18 23:56:42 | 日記文学
日々の暮らしを綴ったこの富士日記ですが、長い間には、いくつかの大きな出来事があります。
愛犬ポコの死もその一つ。
7/18に山小屋へ向かう途中、車のトランクの中で、ポコは死んでしまいます。
「ポコ死ぬ。六歳。庭に埋める。
もう、怖いことも、苦しいことも、水を飲みたいことも、叱られることもない。魂が空へ昇るということが、もし、本当なら、早く昇って楽におなり。
…(略)…ポコは死んでいた。空が真っ青で。冷たい牛乳二本私飲む。主人一本。すぐ車に乗って山の家へ。涙が出っ放しだ。前がよく見えなかった。」
当日は、悲しみのあまり日記も書けなかったようで、「(七月十九日に書く)」と注記してあります。
その後一週間、ポコのこと触れない日はありません。
翌7/19は、大岡昇平が、自分の飼い犬が死んだときの話をしてなぐさめてくれます。その話が、ちょっぴりおかしみも含んでいて、かえって読む者を泣かせます。
7/20になると、ようやくポコの死の状況が日記に書かれます。
「トランクを開けて犬をみたとき、私の頭の上の空が真っ青で。私はずっと忘れないだろうなあ。犬が死んでいるのをみつけたとき、空が真っ青で。」
7/21には、夫の泰淳が散歩に出かける足音を聞いては、いつも後をついていたはずの犬の息が聞こえないことを思い、布団をかぶって泣いています。
7/24は、朝方、娘の花にポコの死を伝えなければならないことを泰淳と話し合います。さすがの泰淳もその役目を嫌がって妻に押し付けると、仕事部屋へ入って襖を閉めて泣いている様子。
娘を迎えに行って山小屋へ帰るときに、着いたら話さなければいけないということで、車をゆっくり走らせる、というところが何とも切ないです。
悲しい話ではありますが、武田夫妻のポコに対する愛情の深さがよく伝わってきます。
中公文庫でどうぞ。
富士日記〈中〉

中央公論社

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内田百 「牛」

2006-07-16 23:59:21 | 内田百
造り酒屋の一人息子である百先生は、子供の時からワガママいっぱい育ってきています。
なぜか牛好きということで、牛の玩具をたくさん並べているくらいはよかったのですが、そのうち本物の牛を飼いたい、とねだり出しました。
しかし、実際に牛を飼い始めると、すぐに飽きてしまったようです。
ご自身でも「自分ながらいやな子供であつたと思ふばかりである」とおっしゃってます。
スケールの大きいワガママですねえ。(笑)
子供の時から筋金入りということでしょうか・・・
旺文社文庫『鬼苑横談』で2ページ。
ちくま文庫『内田百集成12 爆撃調査団』に収録。
爆撃調査団―内田百〓集成〈12〉

筑摩書房

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正岡子規 「…昼寝哉」

2006-07-14 23:59:59 | 短歌・俳句
「世の中の重荷おろして昼寝哉」

「昼寝」は夏の季語なんですね。
夜が短いばかりでなく、暑さで寝苦しく睡眠不足になるので、昼寝をする人が多いからとのこと。

ところで、この句には、「布袋の杖袋など打ち置きて眠りたる図に」と添え書きしてあります。
昼寝というのは、それだけでのどかな感じですが、「世の中の重荷おろして」という言葉によって、厳しい日常からのがれている束の間の安楽な時間という意味合いが生じてますね。
ユーモアも含まれていて、子規のセンスのよさが光ってます。

岩波文庫『子規句集』などで。
子規句集

岩波書店

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芥川竜之介 「輿論」(『侏儒の言葉』より)

2006-07-12 23:59:59 | 箴言・断片
河童忌が近づいてきました。

アフォリズム集『侏儒の言葉』から、「輿論」です。
「輿論は常に私刑であり、私刑はまた常に娯楽である。
 たといピストルを用うる代わりに新聞の記事を用いたとしても。」

コワイことです。

岩波文庫・新潮文庫などで。
侏儒の言葉・文芸的な、余りに文芸的な

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