情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

橋下弁護士の口車に乗って光市事件弁護団の懲戒請求をしたあなたへ取り下げるべきだとアドバイス~その2

2007-06-23 19:55:28 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 橋下弁護士の発言を真に受けて懲戒請求したことには問題があるというエントリー(ここ←クリック)にたくさんの方にアクセスしていただき、瞬間的に「人気ブログ」となりましたが、偶然、先週、多忙で(ここ←クリック)、コメント、TBの反映・TBバックができずに失礼しました。。【追記:その3その4その5あり。それぞれをクリックして下さい】

 反論もたくさんいただいたのですが、正直、改めて再反論しなければならないようなご意見は見あたらなかったように思います。少し整理してみましょう。

 平成19年4月24日、最高裁第3小法廷は、懲戒【請求をする者は,懲戒請求を受ける対象者の利益が不当に侵害されることがないように,対象者に懲戒事由があることを事実上及び法律上裏付ける相当な根拠について調査,検討をすべき義務を負うものというべきである。そうすると,同項に基づく懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において,請求者が,そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに,あえて懲戒を請求するなど,懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには,違法な懲戒請求として不法行為を構成すると解するのが相当である】としている(ここ←クリック)のは、前回述べたとおりです。

 そして、本件の論点は2つ、①弁護人が被告人の言い分をそのまま述べることについて懲戒事由になりうるのか、②もし、弁護人が被告人の言い分を述べていないとすれば、懲戒事由になりうるとしても、本件では弁護人が被告人の言い分を述べていないことをうかがわせる合理的理由があるのか、です。

 第1に、弁護人が被告人の言い分を公判で主張することが懲戒理由に該当するか否かが問題となるが、なるはずがない。もし、被告人の言い分について、一定の内容について、その言い分を主張できないというのならば、それは被告人の主張する権利を奪うことになる。いかなる言い分であっても主張すること自体は保障しなければ、自らを弁護することが保障されているとは言えない。そして、そうであれば、その被告人の言い分を弁護人が公判で主張することが制限されてよいはずがない。もし、「いやいや、例外がある。こういう内容の主張は被告人はしてはならない」とか、「被告人が主張するのはいいが、弁護人がそういう内容の主張をしてはならない」という法的に合理的な意見があるならば、再反論します。いまのところはないようです。

 第2に、弁護人が被告人の言い分以外のことを公判で主張した場合には、懲戒事由に該当する場合もあり得るのは事実です。例えば、本人は無罪だと主張しているのに、有罪だと主張したら、懲戒になる可能性が大きいでしょう。
 では、本件は、弁護人が被告人の言い分以外のことを主張している可能性が懲戒申立するほどに大きいといえるのでしょうか。本件の差戻審には、被告人も出頭しています。つまり、被告人は、自分の弁護人がいかなる主張をしているかを十分に知っているわけです。もし、自分の言い分と違う主張をしていたとしたら、自分が死刑になるかどうかが問題となっているのだから、当然、その主張は自らの言い分とは違うということを、法廷で、あるいは、法廷外で述べるでしょう。しかし、そういう話は聞かない。一部の方は、「差戻審になって初めて主張した言い分もある。自分の意見ならもっと早く主張したはずだ」というが、その程度のことで、被告人本人の目の前でなされた主張が被告人本人のものと違うなんていえるだろうか。その可能性はほとんどないと考えるのが合理的でしょう。この点についても今までのところ、的確な反論はないようです。

したがって、反論を踏まえても本件の懲戒申立に懲戒に該当する事由がないのは明らかです。



※参考:富山冤罪事件の経緯
【近年、耳を疑うような無罪判決が相次いでいる。その多くは、自白の偏重と物証の軽視が招いたものだ。その構図は、今回の事件にも共通する。
 男性は3度目となる任意の聴取の際に犯行を“自白”した。取調官は母親の遺影を持たせ「死んだお母さんも泣いているぞ」と関与を認めるよう迫ったという。つくられた自白。整合しない客観的事実は無視された。さらには電話の通話履歴によるアリバイが見落とされた。捜査はずさん極まりないものだったと言わざるを得ない。
 だが、この事件がなによりも司法の危機を示しているのは、その虚構が真実として通じてしまったことにある。被告の側に立つはずの弁護人。虚実を見極めるべき裁判所。いずれにも見放され、控訴する気力さえ失った男性はそのまま刑に服し、2年余り後に仮出所した。
 誤認逮捕だったことが明らかにされたのは、それからさらに2年が経過した後のことだ。真犯人が発覚するという偶然がなければ、男性の名誉が回復される機会は永遠に失われていたはずだ】(iza













★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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40 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ひどい話ですね (kaetzchen)
2007-06-23 20:31:26
トラックバックをども.ネットゴキが弁護団を訴追するなんて話は聞きましたけど,さらにこれですか.

書きかけの人権と死刑に関する自分の考え方がなかなかまとまらなくて,私も困っています.法学は専門じゃないけど,動物や人間の死にはリアルで立ち会っているだけに;弁護人の懲戒請求なんてありえるの? なんて法律のすき間をぬったやり方に怒りを隠し切れません.

今日は沖縄の日であると共に,1941年プロテスタント諸派が「日本基督教団」として,国家命令により無理矢理まとめられた日でもある.つまり,キリスト教徒の信仰の自由が奪われ,かつ現行日本基督教団の創立記念日でもあるわけだ.偶然にも同じ日に宗教の自由が奪われ,沖縄県が米軍に占領されたことは,恐らく神の采配,何らかの意志だと考えたりもする.新日鉄の社員によるお涙頂戴の演劇と,北朝鮮拉致に対する統一協会≒朝日新聞のお涙頂戴の写真展とが重なって見えてしまうのはなぜだろうか.
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トンデモ人権派? (ふらふら)
2007-06-23 21:20:56
これ↓を読みましたところ、いくつか質問したくなりまして、ご回答下されば幸いです。
http://tail.s68.xrea.com/blog/2007/06/post_99.html
被告人が、「被害者家族を指差して「バーカバーカ!死ね!」と弁護士に要求した場合、どうなるんでしょう。

そのとおりにには実行するんでしょうか?

それとも「被告人は「被害者家族を指差して「バーカバーカ!死ね!」と言えと弁護士に要求しました」と証言するのでしょうか。

その様な不利な証言を弁護士が採択するとは思えないのですが、被告人が、「絶対言え、必ず言え」といった場合、どうなるんでしょうか?

今回の件について、ああいう、失笑モノの、到底裁判所が受け入れるはずのない主張を弁護人がするのはいかにも不可解で、疑問に思った次第です。

他に弁護のしようがないから、とりあえず、被疑者の言い分を伝えているんでしょうか。

あるいは弁護人がコチコチの死刑廃止論者で思想に凝り固まった挙句にトンデモにはまってしまったとするほうが、まだ解ります。

しかし安田弁護士は廃止論者とはいえ、死刑賛成論者からも評価されるくらい地道な活動をしている人で、ちょっと納得できません。

どうでしょう?安田弁護士は人権派の枠を飛び越え、トンデモの領域に入ったと考えられますか?
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当該不法行為について (不燃旧悪)
2007-06-23 23:34:47
ここで言う「懲戒請求が不法行為」とは、民事上のものですよね?

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富山冤罪事件にて。 (anone)
2007-06-23 23:52:34
法に関して全くの素人です。
ごく素朴に抱いた疑問です。
権力の意図に謀られ、男性は陥れられた。
無実の為の裁判でさえ、名誉の回復どころか、加害側の過ちを正す場面さえ持たない。
すっとぼけ勝ち なんて許せないよ。

この取調べ官は 何も問われることなく終わるのですか。
大きな罪を罪と知りながら犯した人間ですよね。
納得がいかないんです。 教えてください。

肩痛の具合 いかがですか?
私も一年 苦しんでおります。なので
※欄にいい解決方法、どなたか寄せてくれないかと 期待してたのだがなあ。

とりあえず、 暖めたり ツボ押したり インドメタシン化したり ビタミンB・E採ったりです。
効果? じぇんじぇんなし です。

長くなりました。 ご自愛のほどを。 
    失礼します。 
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Unknown ()
2007-06-24 00:20:11
ふらふらへ
まるで、「おまえは死ねといわれれば死ぬんか」みたいな言い方だね。
あなたコドモ?
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gooブログは、コメントの訂正できません (ヤメ蚊)
2007-06-24 00:28:57
従いまして、訂正をしたい方は、再度コメント欄で訂正して下さい。

管理人にも訂正できないのです。「公開」のほかは、「削除」か、「保留」しか、ありません。

 ところで、「ふらふら」さんは、一度刑事裁判の中で弁護人がどういう場面でどういう発言をするのかをチェックしてみて下さい。弁護人は、「証言」はできません。ご指摘のようなことをいう場面は基本的には、不規則発言として行うしかありません。不規則発言をすることは、弁護人の役割ではないですから、このような発言をした場合は、懲戒になりうるでしょうね。でも、そのような「不規則発言」は、光市事件の弁護団の「主張」とはまったく異なるものです。

 なお、弁護団が被告人の主張についていかに判断したか、なぜそのような主張をしたのかをここでは問題にしていません。本件における懲戒請求が相当性を欠き、民事上不法行為となるかどうかを問題としているのです。

返信する
ご回答ありがとうございます (ふらふら)
2007-06-24 07:56:59
猫さんへ
コドモではありませんが、無知ゆえに、ひょっとしてその様な(被告人の強い要求があれば弁護士は従わなければならない)義務があるのかな?と疑問に思った次第です。

ヤメ蚊さんへ
お忙しいところすいません。訂正に関してはそのままで結構です。ご面倒をおかけして申し訳ありません。
忙しさにかまけて刑事裁判というものを拝見したことがありません(阿蘇山大噴火のコラムは結構読むのですが(^_^))。何とか暇を作って行きたいと思います。ちょっとずれますが、裁判員制度に向け、メディアが模擬裁判をもっと取り上げるべきだと思います。「行列のできる法律相談所」などで刑事事件を扱って欲しいものです(あの番組は基本的にフィクションを題材にしていますから、問題ないと存じます)。

不規則発言についてはよく解りました。ありがとうございました。
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Unknown (Unknown)
2007-06-24 11:54:06
あーあ、カッコつけて米欄開放するから荒れるんだよ。
以前のようにニートみたいに狭い世界でひきこもって持論を展開して『ボクのいうことにまちがいはないんだ!愚民はだまってろ!』の姿勢でチラシの裏に書くように運営してりゃよかったのにwwwwwwww
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マスコミが (taro)
2007-06-24 12:28:19
橋下さんのみならず、マスコミ全体が一方的な報道で煽ってしまったわけだから、マスコミが責任を取って欲しいですね。
きちんと説明を放送すれば、法律を専門に勉強してない人にも分かる話ですから。
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unknownと云う弱さ (imacoco)
2007-06-24 16:30:56
人を中傷する書き込みをするならば、最低限、自分のblogを作って、同じ様な書き込みをされても構わない、と云う覚悟をもって、するべきだ。



「ヤツ」を死刑にしろ!と息巻く、正義を勘違いしている輩にしても、結局は 怒りのぶつけ処を間違えているんだと思いますね。



また、終身刑と云う一生自由を束縛される刑罰は「軽い」のだろうか?

自分が、死ぬ迄監獄の中に入れられる事を想像すれば、容易に判ると思うけど。



殺せ、と云う感情に支配される人間の心。 犯罪者でも、そうでなくても、殺すと云う意識が人間に与えるダメージを、深く識るべきですね。



死刑をもって被害者が生き返るのなら、死刑制度も、アリかも知れませんが。
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