情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について」答申案へのコメント例

2009-12-10 06:28:06 | インターネットとメディア
 気づいたら今日が期限だった、東京都ネット「検閲」条例答申案への意見書提出、ある方のご意見を参考に次のような意見を出すこととした。まだの方は、ぜひ、ご一緒に!

提出方法など→http://www.metro.tokyo.jp/INET/BOSHU/2009/11/22jbq200.htm

■■提出意見■■
第28期東京都青少年問題協議会答申素案「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について」について、次のとおり、意見を述べます。


「2 青少年とネット・ケータイとの適切な関係づくりを支援するための具体的方策」
「(1) ネット・ケータイでの被害・トラブルの防止」
「イ 青少年へのアプローチ」
「(ア)青少年の意図的な不健全行為に対し,指導・勧告を行う」
  答申案は,不健全な行為を意図的に行う青少年に対して,保護者を通じて勧告等を行い責任の自覚を促すべきである旨提案している。
  
 しかし,仮に都がこのような指導勧告を行うとした場合,刑法上の詐欺等の犯罪,刑事上又は民事上の名誉毀損の成立,児童買春・児童ポルノ法,出会い系サイト規制法等関係諸法規違反行為を対象とする場合には,法律の規制に加えてさらに行政が実質的な不利益処分を行うこととなる。この場合には,告知聴聞の機会などの手続き保障が十分に与えられるかが疑問であるうえ,表現の自由の分野における行政による二重処罰は過度な侵害というほかない。

 また,「不健全な行為」がどのようなものであるかについて明確に定義されておらず,その時々の判断者により恣意的な運用が行われることにより,青少年及び保護者に対して不公平な取扱いが行われ,委縮効果が生じるおそれがある。

 ネット・ケータイを利用して自己表現を行うことは憲法21条の表現の自由の保障の下にあり,また,すでにインターネットやケータイは社会全体に普及している。したがって,青少年はこれらを使いこなしながら社会生活を営んで行かなければならないのであり,その成長発達権の観点からも原則として主体的かつ自由に利用できることが保障される必要がある。従って,青少年が主体的に学びながらネット・ケータイを利用し,その弊害を克服していくためには,保護者,教育関係者,地域,事業者等の自主的な取り組みによるべきであり,行政の一方的な介入は謙抑的であるべきである。このような観点から,不明確な要件の下,しかも手続き的な保障に大きな疑問がある本提案には反対である。

「ウ 保護者へのアプローチ」
「(ア) 青少年にとって安全で安心な機能を備えた携帯電話等を都が推奨する制度を創設する」
 当該提案は,行政が,青少年が携帯電話を利用する場合,青少年にとって必要かつ安全・安心な機能が何であるかを把握できることが前提となっている。
 しかし,青少年といっても年齢によって,また,家庭環境や就労状況等によって携帯電話を利用する状況や必要性,有用性は様々なのであって,その個別性に目を向けることなく,総体的に青少年に推奨できる携帯電話を推薦できるはずがない。
 そもそも,青少年が未成年者である場合,当該青少年の状況に応じて,いかなる機能を有する携帯電話を与えるからは,原則として保護者の責任によるのであり,保護者と子どもがよく話し合って決めるべき問題である。行政が特定の携帯電話を推奨することは,間接的ではあれ,表現の自由,経済的自由に介入することであって許されるべきではない。
 更に,特定の機能を備えた携帯電話の推奨は,携帯電話事業者の営業の自由に対しても制約を加える可能性がある。
 よって,本提案には賛同しがたい。

「(イ) 他人に迷惑を与えた青少年の保護者に対し,指導・勧告等を行うなどして責任の自覚を促す」
 上記イ(ア)で述べたところ同様の趣旨で,反対する。

「オ 事業者へのアプローチ」
「(ウ) 青少年がネット・ケータイに絡んで被害・トラブルにあった事件において利用されたサイトやフィルタリングの利用状況を公表する」
 青少年がネット・ケータイに絡んで被害やトラブルに遭った場合,その被害の原因が当該ネット・ケータイサイトやフィルタリングが十分でなかったことに起因するのか,或いは,青少年の利用の仕方自体に問題があったのか,または他に原因があるのかについての判断は必ずしも容易ではない。個別の事案には個別の原因や当事者らをめぐる状況があるのであって,そのような個別の要素を考慮することなく,舞台となったサイトやフィルタリング状況等のみを公開することは,関係者や社会一般に不要な混乱を与えるおそれがある。
 仮に,当該サイトやフィルタリングにトラブルの原因がないような場合には,当該サイトの営業の自由に対する不当な侵害となる。恣意的な公表による弊害も考えられる。
 また,青少年のネット・ケータイの利用は,憲法上保障された表現の自由,意見表明権,知る権利,自己決定権,成長発達権の実現のため重要な地位を占めているのであり,その弊害に対する対策は,保護者と青少年の話し合いによる自主性を重重視するとともに,地域,事業者による自主規制によるべきである。本提案のように,不明確な要件で,一定のサイトの問題性を一方的に決めつけて公表するような行政の介入には問題がある。よって本提案には反対である。

「(2) フィルタリングの実効性の向上」
「イ 事業者へのアプローチ」
「(イ) 青少年が使用する携帯電話等については,原則としてフィルタリングを解除できないようにするとともに,保護者によるフィルタリング解除の申し出を受け入れるべき正当な事由を限定的に定め,容易にフィルタリングを解除できない仕組みを制度化する」
 フィルタリングを解除できる「正当な事由」を行政が一方的に規定することは,青少年の表現の自由,意見表明権,知る権利,自己決定権に反するから断固反対する。
 青少年が携帯電話を利用する必要性,状況は個別的なものであり,そのような個別事情を度外視して一般的な「正当な事由」を定め,正当な事由がなければフィルタリングを解除できないという枠組みを作ることは,携帯電話の利用が憲法上の表現の自由等の保障のもとにあるという原則に反する。
 また,青少年は,インターネットや携帯電話が普及している現代社会において,その正しい利用方法を学ぶことは必須であって,その学習は,子どもの成長発達権に鑑みても,青少年本人,保護者,事業者等の自主的取り組みによって実現されるべきであり,行政の介入は自重されるべきである。
 本提案は,このような自主的な取り組みや青少年の成長発達権,保護者の監督権に対する介入として不当であり,問題である。

「(エ) フィルタリングから除外されるべきサイトの基準について,実態に照らし,青少年が実際に被害に遭わないものにするため,条例への規定や第三者機関への要請等を行う」
「(オ) 第三者機関認定サイトを標準設定で閲覧可能にしてしまうフィルタリング方式のあり方について,携帯電話等事業者に対して見直しを求める」
 サイトの基準について行政が介入すること,第三者機関認定サイトを閲覧不能とすべきとする都の要請は,違法有害情報の定義,選別基準,具体的判断について公権力が直接関与するものというほかない。
 答申案が提案している「望ましいフィルタリングの基準」の例として,条例に「実社会において,青少年にとって違法・有害な行為が行われる機会を最小限に留めること」という文言を挙げることなどが提案されているが,その内容は不明確であり,運用者によって判断が異なる可能性がある。
 インターネット・ケータイをきっかけに青少年が被害者・加害者となる事例は,個別具体的な事情によるところも多く,当該サイトのみが原因と一律に評価して,当該サイトの閲覧を禁止することは,そのような規制を支える社会的事実の存在に疑問がある。
 また,このような規制は,青少年の保護を目的としたとしても,広範かつ不明確な基準による制約として不当である。
 このような問題のある規制によって,行政が,自主規制機関のフィルタリングの基準に介入することは,青少年の表現の自由,知る権利,自己決定権,成長発達権を不当に侵害し,また,憲法上保障されているサイトの表現の自由,営業の自由に対する不当な制約となる危険性がある。
 更に,当該答申案は,現在,総務省が,直接的な法規制に安易に頼ることなく,事業者の自主規制支援やペアレンタルコントロールの促進支援,フィルタリング技術開発支援など側面的支援を行うこととしているという国の基本スタンス(「安心ネットづくり」促進プログラム)にも反して,公権力による規制を強化しようというものであり,国の施策とも矛盾していると評価しえる。
 現在,「安心ネットづくり」促進プログラムの方向性にも沿った自主的取り組みが展開されており,違法有害情報から青少年を保護するという観点から,EMA等の自主規制機関が積極的に対応しているのであるから,青少年の違法有害情報からの保護は,これら自主規制機関の自主的な取り組みによるべきである。
                                以  上



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