情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

匿名化の議論,今後も起きない~ロンドン大学教授断言!

2006-01-28 10:22:58 | 匿名発表問題(警察→メディア)
毎日新聞が海外での警察発表の実態をシリーズで紹介している。今回(ここ)は,英国と北欧が取り上げられ,被害情報が公共性を帯びているという観点から実名発表が原則とされている旨紹介されている。(英国では生存している被害者には発表するかどうかを確認するが,匿名を希望した場合,警察はその理由をメディアに説明する義務を負う,という)詳細は,ぜひ,毎日新聞をご覧いただきたいが,ロンドンの専門家のコメントだけは引用しておきたい。


ロンドン大学シティー校のマーセル・ベルリンス教授(メディア法)のコメント引用

■■引用開始■■

 警察が事件・事故の被害者名をメディアに伝えるのは、少数の例外を除けば当然の習慣になっている。「被害者の情報は公共が共有すべきだ」という考え方を我々は受け入れている。被害再発防止の観点からも被害の実態を伝えることは重要だし、報道・表現の自由の根幹でもある。私の長いジャーナリスト(高級紙ガーディアンの法律担当記者)、弁護士経験でも、これに異議を唱えた例は知らない。

 被害者が自分の情報を言いたがらない心情は理解できる。私でも事件に巻き込まれ、名前を公表されたら不愉快になるだろう。しかし、そうした個人感情と公共の利益は分けるべきだ。我々は「開かれた社会」の国に住み、「報道・表現の自由」を定めたEU(欧州連合)人権条約の下で暮らしている。それを制限する動きを我々は受け入れられない。匿名化の議論は今後も起きないだろう。

 日本でこうした議論になったのは、被害者に多数の報道陣が殺到する「報道被害」のためだろうが、報道被害と被害者の匿名化とは問題が全く異なる。報道被害はメディアが節度ある報道姿勢を取れば改善できることで、自主的なガイドラインで対応すべきだ。報道被害が匿名化で解決できると考えるなら、大きな誤りだ。

■■引用終了■■

被害者の痛みは分かる。報道被害者の怯えきった声での電話を受けることもあるし,昔の被害について振り返って泣かれることもある。

しかし,人はほかの人との関わりの中で生活をしている。犯罪を防止するためには,ほかの人も含めて収入の中から税金を支払っている。その税金を使って犯罪防止活動や捜査が行われている。この活動が適正化どうかがチェックされうるんだ,という緊張感がないシステムでは,適正な活動は期待できない。実名発表は,緊張感を生じさせるために必要なシステムだと思う。


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