新聞協会は、「『放送法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令等の整備』に関する日本新聞協会メディア開発委員会の意見」(※1)の中で、新聞、FM、テレビの同時支配(クロスオーナーシップ)を、新聞、AM、テレビの三事業支配と同様に原則禁止することに反対する意見を述べている。現実には、新聞、AM、テレビの三事業支配の禁止は、原則と例外がひっくり返り、事実上解禁されているおり、新聞、FM、テレビの三事業支配についても同様に扱われるだろうから、新聞協会が今回、意見を述べることにどれほどの意味があるのか、分からない。意見を述べるまでもなく、事実上は、解禁されてしまうからだ。
しかし、新聞協会が反対意見の中で述べた理屈に対しては、問題点を指摘しなければならない。
新聞協会は、
【マスメディア集中排除原則が制定された1959年には、数多くの人たちにニュースや情報を伝えるメディアの主役は新聞、雑誌、ラジオ、テレビに限られていました。しかし今日では、人々が情報を入手する手段は当時と比べて格段に増えています。ケーブルテレビやBS、CSなどの放送メディアはもとより、インターネットの急速な普及に伴ってパソコンや携帯電話などの通信メディアを通じても、多種多様な情報が世界中で大量に流通しています。加えて、検索エンジンをはじめとする情報通信技術の進展で、必要な情報を簡便かつ瞬時に取り出すことも可能な時代になってい】ること、
【地域に密着したフリーペーパーの発行部数は今や3億部に迫り、コミュニティーFM局も200局を超え、コミュニティーや生活情報が中心のSNSやブログも隆盛を極めてい】ることから、
【「三事業支配の禁止」を撤廃したとしても、情報の「多様性」「多元性」「地域性」が損なわれる状況にないのは明らか】だと主張する。
しかし、そのような主張は自らの役割をおとしめるものでしかない。
すなわち、問題は、大手の新聞、テレビに匹敵するような取材力を持つメディアがほかにあるだろうか、ということだ。フリーペーパーや、SNSが大手新聞、テレビと同様の取材力を持っているというのであれば、フリーペーパーなどがあるから、新聞やテレビが同一資本に支配されても報道の自由は維持できることになる。
しかし、現実には、大手新聞、テレビに匹敵する取材力を持つメディアは存在しないし、少なくとも当分の間は存在しえないだろう。
そうだとすると、取材力を持つメディアである新聞、テレビが同一資本に握られ、系列化している状況では、真に市民に必要な情報は報道されないことになってしまう。何度も述べてきたとおりだ(※2)。
したがって、新聞協会の主張はまったく説得力がないというほかない。
ちなみに、新聞協会は、この意見書を発表する3日前には、「『個人情報の保護に関する基本方針の一部改正案』に関する意見」(※3)を発表している。
その中で、新聞協会は、個人情報保護の行き過ぎや個人情報保護を口実とした情報隠蔽について問題視し、【報道機関への情報提供は法の適用除外であること】などについて注意喚起するよう求めている。
確かに、【千葉市教委は、06年7月に下着などの窃盗容疑で書類送検され懲戒免職処分を受けた小学校教諭について、実名発表が原則であるにもかかわらず「被害者からの希望」を理由に匿名で発表したが、被害者側の抗議により虚偽発表を認めた】というような事態はゆゆしきことであり、虚偽発表した責任者は辞任するべきほどの重大な問題だと思う。
だからこそ、【報道機関への情報提供は法の適用除外であること】を徹底する必要があることも分かる。
しかし、ここでいう報道機関とは何を指すのか?それは、記者クラブに加盟している新聞、テレビを指すのではないのか?
なぜ、利権を得ようとする場面では自分たちはフリーペーパーと同じだなどと主張し、報道の自由を求める場面では報道機関としての自分たちの役割を強調するのか?
明らかに矛盾している。そういう見え透いたことをするから、世間からマスゴミだなどと揶揄されるのではないか?
実は、系列化を解消して出直すくらいのことを宣言してほしいくらいの重大な節目を迎えようとしている。
放送と通信を融合する法体系について、2月15日、情報通信審議会へ諮問されたのだ(※4)。この新しい法体系は2010年には国会に提案される予定だ。成立したら、インターネット版の紙面を発行する新聞社も規制対象とされる。ホームページやブログも対象とされる。フィルタリングと称して政治的な情報は閉ざされてしまいかねない(※5)。そこまでの危機を前にマスメディアはまだ自らの利権に汲々とするのか。戦前、戦争報道による利益に走ったことへの反省はもう神棚に祭り上げたのか。
今度は言論人が崖っぷちで止まるよう期待したいし、そうなるよう声を上げ続けたい。
※1:http://www.pressnet.or.jp/info/seimei/iken20080218.html
※2:http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/59df2623d2dbe2c0c3569bd9862508df
※3:http://www.pressnet.or.jp/info/seimei/iken20080215.pdf
※4:http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080215_7.html
※5:http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/e56c43179a9c5589008569ee1db62e3b
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。転載、引用大歓迎です。
なお、こちらで(←クリック)、350円、1000万人寄付運動を展開していましたが、井原氏落選の結果を受けてペンディング状態です(こちら参照)。バナーは、SOBAさんの提供です。手のひらに何も乗っていない猫の手には、実は、知恵、呼びかける力など賛同するパワーが乗っているということです。まさに、今回の運動にぴったりですね。
1月17日にはNPJ/PEOPLE’S PRESS設立記念集会を開催し、多くの方に来場いただきました。ありがとうございました。近く、生中継していただいたアワープラネットTVでオンデマンド放送される予定です(http://www.ourplanet-tv.org/whats/2008/20080117_17.html)。
しかし、新聞協会が反対意見の中で述べた理屈に対しては、問題点を指摘しなければならない。
新聞協会は、
【マスメディア集中排除原則が制定された1959年には、数多くの人たちにニュースや情報を伝えるメディアの主役は新聞、雑誌、ラジオ、テレビに限られていました。しかし今日では、人々が情報を入手する手段は当時と比べて格段に増えています。ケーブルテレビやBS、CSなどの放送メディアはもとより、インターネットの急速な普及に伴ってパソコンや携帯電話などの通信メディアを通じても、多種多様な情報が世界中で大量に流通しています。加えて、検索エンジンをはじめとする情報通信技術の進展で、必要な情報を簡便かつ瞬時に取り出すことも可能な時代になってい】ること、
【地域に密着したフリーペーパーの発行部数は今や3億部に迫り、コミュニティーFM局も200局を超え、コミュニティーや生活情報が中心のSNSやブログも隆盛を極めてい】ることから、
【「三事業支配の禁止」を撤廃したとしても、情報の「多様性」「多元性」「地域性」が損なわれる状況にないのは明らか】だと主張する。
しかし、そのような主張は自らの役割をおとしめるものでしかない。
すなわち、問題は、大手の新聞、テレビに匹敵するような取材力を持つメディアがほかにあるだろうか、ということだ。フリーペーパーや、SNSが大手新聞、テレビと同様の取材力を持っているというのであれば、フリーペーパーなどがあるから、新聞やテレビが同一資本に支配されても報道の自由は維持できることになる。
しかし、現実には、大手新聞、テレビに匹敵する取材力を持つメディアは存在しないし、少なくとも当分の間は存在しえないだろう。
そうだとすると、取材力を持つメディアである新聞、テレビが同一資本に握られ、系列化している状況では、真に市民に必要な情報は報道されないことになってしまう。何度も述べてきたとおりだ(※2)。
したがって、新聞協会の主張はまったく説得力がないというほかない。
ちなみに、新聞協会は、この意見書を発表する3日前には、「『個人情報の保護に関する基本方針の一部改正案』に関する意見」(※3)を発表している。
その中で、新聞協会は、個人情報保護の行き過ぎや個人情報保護を口実とした情報隠蔽について問題視し、【報道機関への情報提供は法の適用除外であること】などについて注意喚起するよう求めている。
確かに、【千葉市教委は、06年7月に下着などの窃盗容疑で書類送検され懲戒免職処分を受けた小学校教諭について、実名発表が原則であるにもかかわらず「被害者からの希望」を理由に匿名で発表したが、被害者側の抗議により虚偽発表を認めた】というような事態はゆゆしきことであり、虚偽発表した責任者は辞任するべきほどの重大な問題だと思う。
だからこそ、【報道機関への情報提供は法の適用除外であること】を徹底する必要があることも分かる。
しかし、ここでいう報道機関とは何を指すのか?それは、記者クラブに加盟している新聞、テレビを指すのではないのか?
なぜ、利権を得ようとする場面では自分たちはフリーペーパーと同じだなどと主張し、報道の自由を求める場面では報道機関としての自分たちの役割を強調するのか?
明らかに矛盾している。そういう見え透いたことをするから、世間からマスゴミだなどと揶揄されるのではないか?
実は、系列化を解消して出直すくらいのことを宣言してほしいくらいの重大な節目を迎えようとしている。
放送と通信を融合する法体系について、2月15日、情報通信審議会へ諮問されたのだ(※4)。この新しい法体系は2010年には国会に提案される予定だ。成立したら、インターネット版の紙面を発行する新聞社も規制対象とされる。ホームページやブログも対象とされる。フィルタリングと称して政治的な情報は閉ざされてしまいかねない(※5)。そこまでの危機を前にマスメディアはまだ自らの利権に汲々とするのか。戦前、戦争報道による利益に走ったことへの反省はもう神棚に祭り上げたのか。
今度は言論人が崖っぷちで止まるよう期待したいし、そうなるよう声を上げ続けたい。
※1:http://www.pressnet.or.jp/info/seimei/iken20080218.html
※2:http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/59df2623d2dbe2c0c3569bd9862508df
※3:http://www.pressnet.or.jp/info/seimei/iken20080215.pdf
※4:http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/080215_7.html
※5:http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/e56c43179a9c5589008569ee1db62e3b
★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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なお、こちらで(←クリック)、350円、1000万人寄付運動を展開していましたが、井原氏落選の結果を受けてペンディング状態です(こちら参照)。バナーは、SOBAさんの提供です。手のひらに何も乗っていない猫の手には、実は、知恵、呼びかける力など賛同するパワーが乗っているということです。まさに、今回の運動にぴったりですね。
1月17日にはNPJ/PEOPLE’S PRESS設立記念集会を開催し、多くの方に来場いただきました。ありがとうございました。近く、生中継していただいたアワープラネットTVでオンデマンド放送される予定です(http://www.ourplanet-tv.org/whats/2008/20080117_17.html)。
資源ゴミの日のゴミステーションに、フリーペーパーが山積みされてる光景も皆無です。