長い髪を乾かすのは億劫。それに、ゴーグルも嫌い。
だからもっぱら、水中を歩く。
時々飽きて、顔を上げたまま平泳ぎ。
けれどほとんど、ひたすら歩いている。
緑の中にある区立プールはガラス張りで、開閉式の天井は高く、
太陽燦々。毎日のように来てる人は真っ黒だ。
肋骨の骨折やらで、長い間こわばっていた体がほぐれてゆく。
水は優しい。水に心身ともに預けて、放浪者のように、
夢遊病者のように、ただただ歩く。
時にこの時間がもったいないような気がして、
あれこれ考えをまとめようとか、歌詞を覚えようとか、
ながら族の私は試みてみるのだが、
駄目。一向に、まるっきり、駄目。
あれ、今私何考えていたっけ?と思い出そうとしても、
何も無い。何も考えてない?そんな訳無いよなぁ。
けれど、1往復、いや、片道終わった時点で振り返ってみても、
何も無い。不思議。
何も考えないでいる、ということが私に出来るとは思えないのだが、
水の中ではそうなのだ。完全に「無」の境地。
空っぽの私。
ああ、だから浮くのかなぁ。
体をほぐすために通ってたつもりが、
すっかり心をほぐされているのに気づく。
皆さまも、お試しあれ。