特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第455話 絆・ミッドナイトコールに殺しの匂い!

2008年12月26日 03時07分42秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 宮越澄
1986年3月6日放送

【あらすじ】
深夜、犬養の部屋に掛かってきた電話。それは独り暮らしの孤独な老人が、話し相手を求め、電話帳から手当たり次第に掛けたものだった。快く会話に応じた犬養を、老人は体育教師と勘違いし、以来、互いの素性も知らぬままの奇妙な関係が続いていた。
そんななか、強盗殺人事件が発生。犯人の指紋は、迷宮入りとなった昨年の強盗殺人事件のものと一致する。昨年の被害者は役者で、現場からは舞台衣装が盗まれていた。指紋や毛髪から、犯人は左利きの30代の男と推定されたが、その後の捜査は難航する。
そんなある夜、いつものように老人からの電話に応じた犬養は、老人の息子と事件の関係性に気づく。老人の身許を探ろうとする犬養だが、老人は「粋じゃない」と応じない。神代の指示で、逆探知で老人の身許を調べることになるが、犬養は罪悪感を拭えなかった。
逆探知で割り出した老人の自宅を訪ねる橘たち。犬養がにらんだとおり、息子が老人に贈った着物は、昨年の被害者のものだった。息子は実家にめったに寄り付かないため、指紋を採取できず、犯人と断定はできなかったが、頑固一徹な老人は「倅が本当に殺人犯なら、さっさと逮捕して死刑にしてくれ」と橘に語る。
息子の行方を追う一方で、老人のもとを張り込む特命課。犬養は老人を心配する福祉施設の女に接触。老人はかつて女に「自分は息子に借りがある」と語っていたという。報告を受けた桜井は、犬養に老人から息子の情報を引き出すよう指示。「これ以上あの老人を騙したくない」と言う犬養を「捜査に感傷を持ち込むな」と叱責する桜井。「人を騙してまで犯人を逮捕するのが特命課ですか」と反発する犬養に、桜井は「後が辛くなるような真似はするな」と忠告する。
その夜、老人は「倅が人を殺したかもしれねぇ」と犬養にこぼし、「代わりに俺が死刑になってやりてぇ」と本音を語る。「息子さんを探し出して確かめるんだ」との犬養の説得に、老人は息子の預金通帳を受け取りに来た女を思い出す。老人の記憶を頼りに、女を探し出した特命課は、息子の指紋を採取。犯人のものと一致したことで、息子を犯人と断定する。
福祉施設の女から、老人の古い知り合いだという老女を紹介される犬養。老女によれば、息子は老人の亡き妻の連れ子だった。妻の前夫は自殺しており、その原因は妻と老人との浮気にあった。「息子への借り」が理解できたものの、犬養は息子が実子でなかったことに、一抹の安堵感を抱く。
引き続き老人の張り込みを続ける特命課の前に、息子が姿を現す。図らずも老人の目の前で息子を逮捕することになる犬養。息子に「てめぇ、タレこみやがったな!くたばっちまえ」と罵られ、その場に崩れ落ちる老人。居合わせた福祉施設の女は、「ひどすぎます!お爺ちゃんの目の前で捕まえるなんて」と犬養の頬を張る。
特命課での取調べに、老人への恨みを語る息子。だが、時田は意外な事実を明かす。老人は息子の実の父親だった。老人は自殺した前夫の名誉のため、その事実を息子にも伏せていたのだ。幸い、老人は犬養が刑事と気づくことはなく、事件解決後も二人の奇妙な関係は続いた。強がって笑う老人の声を、犬養は複雑な思いで聞くのだった。

【感想など】
孤独な老人と犬養との奇妙な「絆」を描いた一本。DVD-BOX6に「後期の隠れた傑作」として収録されているだけに期待していたものの、見所と言えば、花沢徳衛さんが演じる老人の頑固親父っぷりと、犬養こと三ツ木氏の奥様である坂上美和さん(福祉施設の女)との競演ぐらい。個人的には期待はずれに終わりました。

何が不満かと言えば、やはり老人に犬養が刑事だとバレないこと。桜井に「後が辛くなるような真似はするな」と言わせておきながら、最後まで良好な関係が続いていては、視聴者としては肩透かしをくらったようなもの。本来の(あるいは夜十時台の)特捜であれば、気の優しい青年と信じていた相手が刑事だったと知った老人の怒りと哀しみ、そしてその憎悪を黙って受け止めるしかない犬養、という、ある意味で定番の展開が待っていたはずであり、女にひっぱたかれて終わり、では余りに甘すぎます。
そもそも、息子を逮捕するシーンで、老人が犬養の声を聞いていながら電話の相手と気づかないのは「甘い」を通り越して不自然。さらに残念だったのが、ラストで犬養から老人に電話をかけたこと。「おいおい、それじゃあ刑事だとバレちゃうだろう」と画面に突っ込みを入れてしまいました(でも、やっぱりバレませんでした)。

老人と息子が実の親子かどうかという話題も、正直なところ、どうでもいい(というか、実の親子云々の話題が2話連続するのは、どうにかならんものかと思います)。実際、その事実が明かされた際の、息子や犬養の反応が中途半端であり、ドラマ的に消化されていない印象です。そもそも(前話と同じような感想で恐縮ですが)、「実の息子が殺人犯だと辛い」「義理の息子だから殺人犯でも辛くない」という刑事たちの(というか脚本家の)勝手な理屈が理解できないので、余計に不毛な話題という印象です。

ここのところの「展開の甘さ」や「勝手な理屈の押し付け」を見ていると、番組自体の方向性が変わってしまった印象が否めません。それが時間帯によるものなのか、それとも時代の変化によるものなのかは定かではありませんが、このままの路線が続くのであれば、個人的には残念というほかありません。残り約50話のなかに、「見続けていて良かった」と思えるエピソードが多少なりともあることを、心から願います。

4 コメント

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孤独・ミッドナイトはAVの上映会! (影の王子)
2008-12-28 07:58:45
犬養って中途半端なキャラですよね。
「甘ちゃん」のポジションなんでしょうけど…
これで先輩方の捜査への厳しさを学び
刑事としても人間的に成長していく…
というのならまだ納得できますが
そんな展開もなかったし。
おやっさんと吉野は「人情派」だけれども
刑事としてはエリートというのがしっかり描かれ
そのエリートの彼らが「うっかり情に・・・」
だからドラマが生きるのです。
「甘ちゃん」の犬養だと「またか」で終わります。
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仰るとおり (袋小路)
2009-01-13 01:51:01
演じた三ツ木氏の責任というより、脚本のせいだと思うのですが、全くもって仰るとおり。時田がそれなりに描かれているにもかかわらず、なんでこんな薄っぺらい人間として描かれてしまっているのでしょう?
やはり時代がこういうキャラを求めていた、ということなのでしょうか?だとしたら悲しいですね。
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Unknown (リュウジ)
2009-02-06 15:32:25
全く持って同感です。
息子を助けるためにおじいちゃんは犬養にしがみついた時に
「あー、声を聞かれたからばれたな」と思ったのですが
その後も変わらず電話を続けてるのにはびっくりしました。
昔の特撮のような突き放すようなラスト、後味の悪さ
みたいなのが感じられません。
毎回そんな終わり方は嫌ですが、それも特捜の魅力のひとつだと思います。
「自供・檻の中の野獣!」のような、衝撃のラストはもうないんですかねえ。
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同感です。 (袋小路)
2009-02-10 02:40:48
リュウジさん、こんばんわ。いつもコメントありがとうございます。

ご指摘の箇所ですが、視聴者の予想を覆す、といえば聞こえは良いですが、視聴者に「それはないやろう」と突っ込まれるような展開は感心できませんよね。

また、ラストの後味の悪さというのは、確かに特捜の魅力の一つだと思います。それが許されなくなった時代というのもあるのでしょうが、だとすれば、その時代に特捜を続ける意義が既にないのかもしれませんね。悲しいことですが・・・
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