特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第287話 リミット1.5秒!

2007年02月15日 22時09分02秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳、監督 天野利彦

ある雨の夜、若い女が足の悪い男に連れ去られた。同じ頃、特命課に一人残っていた桜井の元に、女から助けを求める電話が入る。指示された場所に向かった桜井は、何者かに背後から殴られ、昏倒する。翌日、行方不明の桜井を気遣う特命課では、桜井が電話の内容を走り書きしたメモに気づく。そこには呼び出した女の名と呼び出し先が記されており、その場所を捜索したところ、桜井の血痕が残されていた。
女と桜井とのつながりを調べる特命課に、新たな事件の情報がもたらされる。足の悪い男に連れ去られそうになった老人が道路に転倒し、車に引かれて死亡したというのだ。やがて、老人が元警察の人事担当者であったことが判明。女も警察関係者ではないかと調べたところ、8年前に桜井の上司であった刑事の娘の名が、メモに残された女の名と一致した。
その頃、意識を取り戻した桜井は、手錠で拘束されたまま、足の悪い男が女を暴行するのを見せつけられていた。足の悪い男に見覚えがなく、目的がつかめない桜井だが、続いて現れた主犯格の男は、8年前に同僚だった元刑事だった。8年前、桜井と出世レースを争っていた元刑事は、ある誘拐事件を内偵中に犯人グループに拉致され、数日にわたり激しい責め苦を受けた後、救出のために現場に踏み込んできた警官を、犯人と見間違えて射殺してしまった。懲罰委員会から証言を求められた桜井は「数日間も肉体的、精神的に痛めつけられた者の心理は、当人にしか分からない」と言って証言を拒む。しかし、委員会は停職処分を決定。元刑事は「桜井が自分を陥れる証言をした」と信じ込み、警察を去った。
当時の資料から事件の全容をつかんだ神代は、「桜井の最大の弱点は、他人に対する優しさだ。犯人はその弱点をつくつもりだ」と危惧する。神代の危惧したとおり、元刑事は女の悲鳴を桜井に聞かせ続けることで、精神的に追い詰めていく。「これは裁判だ」とうそぶく元刑事に「彼女は関係ない、開放しろ」と迫る桜井。しかし、元刑事は「彼女は死んだ上司の代理だ。俺の妹も、あの事件のせいで苦労したんだ」と自分勝手に言い放つ。
ようやく元刑事の居所をつかんだ神代は、当時の懲罰委員会の資料を見せつけ、桜井を恨むのは誤解だと訴える。頭から信用しない元刑事に、神代は「8年前も今も、貴様は間違っている。拳銃を持つ者は、たとえどんな場合でも冷静さを失ってはならない」と説得する。しかし、元刑事は同行を拒んで行方をくらますと、捜査中の吉野の足を撃ち、入院した吉野のもとに桜井の居所を示したメモを届ける。吉野が姿を消したことを知った神代らは、元刑事の狙いに気づく。足を負傷した吉野を足の悪い部下と見間違わせることで、桜井に吉野を射殺させ、8年前の自分の行為が間違いではなかったと証明しようというのだ。
心身ともにボロボロの桜井に、女が拳銃を渡し「奴らから奪ってきたの、これで一緒に逃げて」と哀願する。実は女は元上司の娘ではなく、元刑事の妹だった。そうとは知らない桜井は、拳銃を手に監禁現場に踏み込んできた吉野に銃口を向ける。しかし桜井は冷静さを失っていなかった。引き金を引かない桜井に、元刑事はついに敗北を認めるのだった。

277話、279話に続いて、プロット公募をもとに長坂氏がシナリオ化した一本。粗筋からは割愛しましたが、各事件の現場に残された数字が、元刑事の警察時代のIDナンバーだったなど、あまり本筋に関係なく、かつ意図が不明な要素もあって、やや詰め込み過ぎな感のある仕上がりです。ちなみにタイトルの「1.5秒」とはドラマ中盤、神代が元刑事を説得しようとしたシーンの「貴様ほどの銃の腕があれば、あと1秒待てば、撃つ必要が無いとわかったはず。冷静さを失い、その1秒を待てなかった貴様のミスだ」という台詞と、ラストでその1秒+アルファを待つことができた桜井を意味しているのでしょうが、正直ちょっと伝わりにくいです。また、人質の女が実は共犯だったことにしたのは、視聴者に対する優しさでしょうが、あっさり敗北を認めるラストも含め、犯人に対する怒りが興ざめしてしまうのが残念なところです。