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 『居場所を探して  累犯障害者たち』

2013-02-06 | 読書

居場所を探して―累犯障害者たち
長崎新聞社「累犯障害者問題取材班」
長崎新聞社

本の紹介      『居場所を探して     累犯障害者たち』

 最近、中国新聞や日新聞などに書評が載っていましたのですでにご存じの方も多いかもしれません。

 今月の私のお勧めの一冊は『居場所を探して 累犯障害者たち』(長崎新聞社)です。

 これは2011年7月から、約一年間、長崎新聞に連載されたものを一冊にまとめたもので、とても分かりやすく読みやすい本です。

 今、私は広島県地域生活定着支援センターのお手伝いをしています。刑務所や少年院を出てくる高齢者や障害者を福祉と結ぶ仕事です。

 3年余りの活動の中で感じることは、福祉のサービスに出会うことのなかった障害者や高齢者がいかに軽微な犯罪を繰り返して矯正施設の中へ戻っているということです。

 知的・精神障害がある人たちでも重い障害のある人たちは福祉とつながっています。

 でも、日本の福祉はすべてが申請主義ですから、サービスとつながらなかった人たちは、そんなサービスがあることも伝えられないまま、社会の中で働き、暮らし、何かの拍子で躓いたらなかなか立ち直るきっかけを得られません。

この本の第3部は「あるろうあ者の裁判」が取り上げられています。

64歳の彼は20代の前半から盗みを繰り返すようになり計19回、通算で22年余り服役した彼は2010年9月にアパートから現金を盗んだとして福岡地裁で懲役10月の判決を受けました。

ろう学校は卒業していますが、ろう者の集団の中にもなじめず、刑務所を出たり入ったりしていました。

犯罪を繰り返すことを累犯(るいはん)といいます。同じ犯罪でも刑の執行を終わってから5年以内に再犯をおかすと刑が加重され、たとえ390円の牛丼の無銭飲食でも2年ほどの懲役刑を受ける人も出てきます。

彼は検査の中で知的障害も併せ持っていると判定されます(私はコミュニケーションが成り立たない中での知的検査は器質的な障害以上の大きな障害数値を表すと思いますが)。

第一審後、彼は長崎県の更生保護施設で生活を始めます。

手話のわかる職員が配置され、職員や他の入所者とのコミュニケーションが始まる中でこれの持つ手話語彙はとても大きく増加したそうです。

そして第二審では、執行猶予の判決を受け、刑務所ではなく福祉サイドでの更生へ向けての暮らしを続けています。

これまでの福祉施設や福祉運動は罪を犯した障害者や高齢者にどちらかといえば距離を置いてきました。

彼の場合にも、国選の弁護人は障害者団体や関係団体へも働きかけたけれども反応は鈍かったと聞きます。

ずいぶん以前の岡山のMさん事件でもそうだったような気がします。

でも、ほんの少しの支援をすることで罪を犯さなくても済む障害者や高齢者はたくさんいます。

この本は、ある意味私たちの生き方や福祉運動の姿を問うているようです。

(長崎新聞社刊・1680円 5冊に限り手話センターひろしまで1500円で扱っていただいておりますので、ぜひお買い求めください。)

広島ブログ

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