車泊で「ご当地マンホール」

北は山形から南は大分まで、10年間の車泊旅はマンホールに名所・旧跡・寺社・狛犬・・思い出の旅、ご一緒しませんか。

年の初めの神楽三昧「山姥」

2022年01月16日 10時00分00秒 | 日本の伝統・芸能・技の美

鬼に鬼女と続いたところで、今日は少し毛色を変えて「母と子」がテーマの神楽。と言っても人を捕り食らう「山姥(やまんば)」となれば、鬼と大差ありませんが(^^;)

2013年7月6日「安芸高田神楽特別公演」、「佐々部神楽団(安芸高田市)」による【子持ち山姥】

東国の賊徒を平定するため、信州明山へと差し掛かった『源頼光』『卜部季武』主従。しかしその山には、旅人を捕り食らう恐ろしい『山姥』が隠れ住んでいたのです。舞台に登場したのは長刀を手にする老婆と、いまだ幼さの残る少年。実はこの二人こそ、旅人を襲い悪逆の限りを尽くす山賊の女頭目と、その一子『怪童丸』

「ここが恐ろしい山姥の住処とも知らず、のこのこと入り込んできたのが運の尽き。良き獲物がやってきたわ~」とばかり襲い掛かったものの、思いもかけない手強い二人に、遂に『山姥』の本性を現す老婆。

しかし武勇でならし、これまで幾多の鬼神を相手に戦ってきたた頼光主従、山姥ごときに怯むはずもなく、いざ成敗!と刀を振り上げたその時!

母の危機と見るやとっさに駆け寄り、二人に立ち向かう『怪童丸』。その隙にと母を逃がします。が、相手は都でも武勇名高き『源頼光』と『卜部季武』。あらん限りの力を振り絞って二人に立ち向かいますが、我が母でさえも叶わぬ相手に、しょせん太刀打ちできる筈もなく・・

あわや『怪童丸』!とその時、二人の刃の前に身を投げ出す『山姥』。「我ら二人、もとは都に住いした「北面の武士」の妻なれど、夫の勝手によって離別され、一子を抱え都を追われ、頼るものとて無く、世を呪い人を恨んだあげく山賊に成り下がった身の上。この上は、どうぞこの命と引き換えに、我が子『怪童丸』だけは、どうか、どうかお助け下され」

子を思う母の心。また母をかばう子の心根。人に有らざるものとなっても変わりない親子の情愛。頼光は『怪童丸』を手元に置いて家来にすると約束し、母親には二度と人を襲うなと諭して立ち去るように命じます。

最期の別れを惜しむ母と子・・・母はこの山深くにひっそりと身を隠し、そなたが立派な武人に育つよう祈り暮らそうゆえ・・互いを思いやり涙する母と子・・こうして『源頼光』の家来となった『怪童丸』、後に四天王の1人『坂田金時』として頼光に仕え、武勇を馳せることとなります。

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2013年7月7日「安芸高田神楽特別公演」、「青神神楽団(安芸高田市)」による【山姥】。
舞台に登場した『山姥』『怪童丸』。ここでは『怪童丸』の獲物が斧である事に注目。ある程度の内容を知っていれば、これが物語の展開に大きく関与する演出である事がわかります。

それにしても前回に引き続き、今回の『怪童丸』君も、中々のイケメン。しかも何故か黒ガッソが似合ってる(笑)

でいきなりの乱闘場面・・・何故に故に、そこに至る経緯がないのか、本人にもわかっていません(^^;)  中々に手強い山姥と怪童丸ですが、音に聞こえた『源頼光』『卜部季武』

しかし所詮は落ちぶれた山賊風情、天下にその名を知られた頼光にかなう筈もなく・・斧を奪い取られた『怪童丸』、今まさに成敗!のその瞬間、刃の下に身を投げ出す山姥。そこには旅人を恐怖に震え上がらせた化け物の姿はなく、一途に我が子を護ろうとする母の顔が・・

この身はいかようにされましょうとも、どうかこの子の命だけはと伏し拝む姿からは、山姥と恐れられた面影は微塵もなく、ただただ、我が子の命をひたすらに請い願う母の姿に、怪童丸もまた深く首を垂れます。  昨日見たばかりの演目なので展開は分かっている筈ですが、親子の情愛が日本人の心をくすぐるのか・・目の奥がツ~~~~~ン(´;ω;`)ウッ…

山姥のこれまでの悪行を思えば本来は許しがたき事ではあるが、子を思う親としての心根は哀れである。この上は己のこれまでの悪行を悔い改めて静かに過ごせよと諭す頼光。

母の心情を汲み取り、怪童丸を家来にすると約束する源頼光、こういう経緯があれば、そりゃぁ、後の『坂田金時』、何ぞ何事がおころうとも『源頼光』に命がけで仕えるはずです。何というか・・頼光さん、おっとこ前~~!!

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最後は2015年4月19日「因原神楽交流大会」、「琴庄神楽団(北広島町)」による【山姥】

舞台に登場した『山姥』『怪童丸』。もと名のある武士の妻であった名残なのか、手には立派な薙刀が握られています。

まだ子供の面影が残る怪童丸ですが、黒ガッソが結構似合ってます。母をかばうように常に前に立ちはだかる姿には、怪物といえども親子の情愛が・・

賊徒平定のため、信州に向かう頼光主従。山あいの夜は早や暮れ落ち、辺りは夜の闇に・・遠くに明かりを見つけた二人、たどり着いた山家に一夜の宿を求めます。

二人が寝静まるのを見届けた『山姥』親子。正体を現し襲い掛かりますが、相手は武勇に秀でた『源頼光』『卜部季武』・・・こればっかり(笑)

やすやすと二人の手にかかる様な相手ではなく、山姥も遂に化け物の本性を見せて長刀を振るいますが・・

無論、到底叶う相手ではなく、遂に『頼光』の刃の下に投げ出されます。もはやこれまで・・なれどこの子にだけはどうかお慈悲をと泣いて頼む山姥・・いや、哀れな母の姿。 頼光は母の必死の願いを聞き届け、怪童丸を家来にすると約束します。頼光の慈悲に、深く心を打たれる怪童丸。

この先、二度と相まみえる事のない母子の別れ。深々と頭を下げる怪童丸に今生の別れを告げるのは、今はただ年老いて見える母親。その後、旅人を恐れさせた山姥は、二度と現れる事はありませんでした。

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さてここで『源頼光』の四天王について・・まずは四天王の筆頭とされる『渡辺綱』。京都の一条戻り橋の上で鬼の腕を切り落とした逸話は特に有名。続いて『卜部季武』。弓の名手として知られています。三人目が『碓井貞光』。身の丈7尺(約2m)の大男と伝えられており、碓氷峠の大蛇を大鎌で退治した話が有名です。そして四人目が今回の主人公『坂田金時』。実は私『碓井貞光』だけは、今回調べて初めて知った名前なんです。今まで頼光さんを入れての四人だとばかり・・(^^;) それじゃ四天王にはなりませんよね。

終わりにもう一つ、『山姥』を捨てた夫「北面武士」について。これは、院御所の北面、つまり「北側の部屋」の下に詰め、上皇の身辺警衛や、御幸に供奉した武士の事を言います。
11世紀末に白河法皇が創設した 院の直属軍と言う事で、それなりの地位であったと思われます。

松の外になってしまいました(^^;) 一月十六日

 


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