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同時進行!平城遷都1300年(14)ツアーガイドボランティア候補者研修

2009年09月09日 | 平城遷都1300年祭
平城遷都1300年祭も、今年(09年)の4月に事業計画が示され、ようやく全貌が明らかになってきた。
※平城遷都1300年祭 事業計画(社団法人平城遷都1300年記念事業協会のホームページ)
http://www.1300.jp/jigyou/2008/04/1300.html

この事業では2010年4/24~11/7の期間中、平城宮跡において「平城宮跡探訪ツアー」が行われる。このツアーは《宮跡の復原施設・遺構やそれらの歴史的背景、平城京の歴史の厚みや広がりを体験的に楽習できる機会を提供します》(平城遷都1300年祭 事業計画)というものである。

8/22(土)、これに関する「ツアーガイドボランテイア候補者研修」の第1回研修(全体研修) が行われた。先頃「奈良まほろばソムリエ検定」奈良通1級以上の合格者など、約300人の対象者の中から、約170人がボランティアガイドの候補者に選ばれた。中には千葉や岡山の方もいらっしゃるという。これら候補者に対し、年内に5回の研修(候補者研修)を施してガイド登録させたあと、1月以降、3回の研修(登録者研修)を経てガイドツアーを実施する、という念の入った仕組みである。

私は運良く「候補者」に選ばれたので、この全体研修に参加した。「ボランティアガイドの心得」を教えていただき、とても参考になったので、以下に概要を紹介する。

【第1講】ボランティアガイドに期待すること(9:20~)
主催者挨拶のあと、第1講は千田稔氏(県立図書情報館 館長)による講話(平城宮跡探訪ツアーのボランティアガイドに期待すること)。まず千田氏は、このようなガイドツアーは画期的なことであり、全国のモデルになる事業だと言う(パビリオン型の博覧会はもう終わった。パビリオンは文化的な厚みに乏しい)。宮跡の草っ原に立って説明できれば、ガイドとしてピカ一である。草っ原からイメージをふくらませることが大切である。発掘というのは腹を切る(外科手術する)こと。切らずに分かることが大切だ。復原しないことの意味を分かってほしい。


千田稔氏(画像はすべて8/22撮影)

平城宮跡は1921年、中心部分が民間の資金によって買い取られ、国に寄付された(1922年に国の史跡に指定)。1960年代、近鉄の検車庫問題と国道建設問題に対する2度の国民的保存運動が起こった(亀井勝一郎が先鋒)。ときの首相・池田勇人は、土地を買い上げて平城宮跡を守った。現在は、ほぼ本来の平城宮跡地が指定され保存されている。

観光客は健康な人とは限らない。ゆっくり歩く、歩調を合わすことが良い印象を与える。あまり詳しく話してはいけない(知っていることをすべて話してはいけない)。要点をうまく話さなければいけない。案内される側とする側の関心の違いを、一瞬で読み取れるか。相手を立てよ。難しい言葉はやさしく言い換えよ。例えば『続日本紀(しょくにほんぎ)』は「日本書紀の続編」。

目線を下に持つ(同じ目線になる)こと。故高田好胤師(薬師寺の元管長)は、高校別に記載された大学進学情報の本を持ち、来る学校のレベルに合わせて話をした。例えば、学力レベルの低い高校の生徒には「勉強だけが人生ではない」等々(なお師は、修学旅行で訪れた女生徒と交際を続け、1954年に結婚。薬師寺の歴史で初めての妻帯僧となった)。

ガイドは先生ではない。ガイドという「芸」を披露せよ。日本人には苦手だが、ユーモラスに話すように。笑ってもらうには、自分を落とす(自分を笑ってもらう)ことが最も早道。

自分なりの見解が持てるよう、勉強してほしい(それを表に出すかどうかは別)。年表を持ってガイドせよ。天皇の系図なども。相手は安心する(この人は間違わない、と思ってくれる)。最後に、ガイドは愉快に楽しくやって下さい。

【第2講】ボランティアガイドに求められるもの(10:10~)
第2講は、パネルディスカッションだった。コーディネーターは福井昌平氏(同協会チーフプロデューサー)、ゲスト(パネラー)は伊部和徳氏(NPO法人 平城宮跡サポートネットワーク理事長)、永田久武氏(NPO法人 なら・観光ボランティアガイドの会 理事長)、松村洋子氏(奈良SGGクラブ副会長)。テーマは「ボランティアガイドに求められるもの」。
主な発言を拾ってみる。


向かって左から、福井氏、伊部氏、永田氏、松村氏(トップ写真とも)

伊部氏:「NPO法人 平城宮跡サポートネットワーク」は、宮跡内の5か所で「定点ガイド」を行っている(原則として、通常のツアーは行わない)。小学生の団体(50~100人)を案内するケースが多い(予約は、ある場合もない場合もある)。宮跡を歩いて案内する場合は、4kmほど歩くので、約3時間かかる(それでも1~2か所の案内で終わる)。
http://www.heijyonet.org/

永田氏:「NPO法人 なら・観光ボランティアガイドの会」は、1997年(平成9年)、「奈良大好き人間」たちによって設立。02年にNPO法人化、通称「朱雀の会」。近鉄奈良駅ビルの「ならなら館」の運営も行っている。昨年は7万7千人をガイドし、出動回数は6600回に上る。メンバーは137人なので、1人当たり48回出動したことになる。近々、170名の組織体制となる。修学旅行を中心に(学校からの)予約制でやっている。行程アドバイスもする。何度も利用される学校が多い。出会いは第一印象が大切。笑顔で始まり、笑顔で終わるよう心がけている。
http://www.e-suzaku.net/

松村氏:「奈良SGGクラブ」は外国人が対象。1983年3月から活動している。会員数は107名。奈良市(2か所)と奈良県(1か所)の観光案内所に詰め、正月を除く毎日、案内している。他にもツアーに同行し、お手伝いしている。忍耐力、辛抱強さが求められる。ベテランのガイドは目線(スタート位置)が高いが、これはダメ。相手のレベルに合わせることが大切。西暦に直したり、○○世紀と言い換えたりすべき。
http://narashikanko.jp/sgg/jap.html

伊部氏:平城宮跡に来られる方は、春と秋が多い。真夏には家族連れが来る。冬(12~3月前半)は少ない(北風が強く、歩けない)。熱心に話を聞かれる方が多い。

松村氏:国によって文化が違うので、中国人は1300年を古いと思わないが、オーストラリア人だととても驚く。アメリカ人は鹿を見ると“Shoot!”(撃て)という(庭を荒らす害獣だから)。「鹿を食べないのですか」という質問には「神様のお使いですので」と答えている。日本人でも、鹿の角(つの)切りを「かくぎり」と読んだりする。

永田氏:チームで仕事をするので、1.共通の目標を持つ、2.責任と役割を持つ、3.参画意識を持つ、ということが大切。

松村氏:あと、4.情報を共有する、5.申し送り・引き継ぎを忘れない、ということも。地域を愛しているから、魅力のあるツアーができる。だから、1.まず平城宮跡を愛してほしい、2.日々新しい発見を、3.参加型のイベントをする、という気持ちを持ってほしい。お寺の案内などでは、必ず「異説」がある。その場合はお寺の説明に合わせ「ご住職が、そのようにおっしゃっていますので」と申し添える。

福井氏(コーディネーター):以前、上野誠氏(奈良大学教授)が、宮跡で「では、みんなで元明天皇の『遷都の詔(みことのり)』を読みましょう」と言って、皆で読んだ。遷都の思いが伝わってきた。これも「芸」。

永田氏:「体験型」として、旅館に出張してガイドすることもある。説明には「キャッチフレーズ」を入れると分かってもらいやすい。毎日が出会いなので、好奇心を持続することが大切。

伊部氏:歴史学者ではないし、来る人も素人なので、しゃべり過ぎてはいけない。

松村氏:言葉はハッキリと、声ははつらつと。ガイドはしゃべり過ぎないこと。新しい発見、新しい仲間を見つけてほしい。

ざっと以上のような研修であった。「知っていることをすべて話してはいけない」「相手のレベルに合わせることが大切」「しゃべり過ぎてはいけない」「ユーモラスに話す」というあたりには、納得させられた。「日々新しい発見を」「草っ原からイメージをふくらませることが大切」というくだりも、こういう機会がないと聞けない貴重な話だった。

「平城宮跡探訪ツアー」は、修学旅行生や校外学習の生徒を主な対象としている。1日8回出発(45分間隔)、1グループ20名まで(同時出発は80名まで)という大規模なツアーである。研修は来年3月末までの長丁場だが、得がたい機会なので、じっくり勉強して身につけたいと思う。
※同時進行!平城遷都1300年(13)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/s/%C6%B1%BB%FE%BF%CA%B9%D4%A1%AA%CA%BF%BE%EB%C1%AB%C5%D41300%C7%AF

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4 コメント

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ガイドさんはむずかしい (畳薦)
2009-09-09 11:50:14
 史跡のガイドさん養成講座、そうそうたるメンバ・・・私はご遠慮申し上げました。あれはむずかしい、相手が多様、、教室で拘束された同質の生徒を相手にするのもむずかしいのに、大人相手は厄介だ。さらに知るためには自分で調べないと分からない。その上で知った人に疑問をぶつける。
 教室でも「芸」がいる。上野誠教授は、「芸」入りの講義をされる。鹿の鳴き声をいれたりする。

 いつか平城宮跡の資料館へ行ったらガイドさんが寄ってきて・・・・私は一人で静かに見たいので、お断りもうしあげた。

 朱雀門の基壇にたって、大極殿を見晴るかし、南面して朱雀大路を想像して・・・・ロマンそのものですな。
返信する
ガイドの重責 (tetsuda)
2009-09-10 05:50:03
畳薦(たたみこも)さん、コメント有り難うございました。

> ご遠慮申し上げました。あれはむずかしい、相手が多様、教室で拘束
> された同質の生徒を相手にするのもむずかしいのに、大人相手は厄介だ。

ソムリエ合格の畳薦さんでも、辞退されましたか。うーん、私が引き受けて良かったのかなぁ。

> 教室でも「芸」がいる。上野誠教授は、「芸」
> 入りの講義をされる。鹿の鳴き声をいれたりする。

やはり「芸」ですか。私たちはいくら勉強しても所詮素人ですから、観光客がすぐ理解できるような創意工夫が必要ですね。
返信する
ガイドさんがんばって (ikaru(尼御前))
2009-09-10 22:06:51
こんばんは。
以前私も飛鳥で1人散歩を楽しもうとしていたら、
「案内するから」としつこく言われたことがあります。
この方は単なる知識の押し売りでしたが。

ガイドさんにとって難しいのは、
観光客が興味を持つ話題やレベルがどこにあるか
即座に判断することですね。
お互いの縁ですから、
楽しく過ごしたいものです。
観光客の表情を良く観察して、
奈良の魅力に引き込んでいただきたいです。

私は現状では条件がきつすぎるので、
応募できませんでした。
皆さんのご活躍をお祈りいたします。
返信する
上から目線 (tetsuda)
2009-09-11 05:46:55
ikaru(尼御前)さん、コメント有り難うございました。

> 「案内するから」としつこく言われたことがあります。この方は単なる
> 知識の押し売りでしたが。ガイドさんにとって難しいのは、観光客が
> 興味を持つ話題やレベルがどこにあるか 即座に判断することですね。

「上から目線」で偉そうな態度を取ったり、逆に知識不足だったりと、評判の悪いガイドもいるようですね。幸い私は、そんな人に当たったことはありませんが。

> 私は現状では条件がきつすぎるので、応募できま
> せんでした。皆さんのご活躍をお祈りいたします。

千葉や岡山の方もいらっしゃるようですが、ikaru(尼御前)さんは遠方にお住まいですので、仕方ありませんね。しっかりしなければいけないのは、やはり地元民ですので、なんとか頑張ってみます。
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