tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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まろやか味のうどんが食べたい!(6)中間まとめ

2014年12月04日 | グルメガイド
最近、「うどんのルーツは奈良にあった」という説が提起され、地元で話題になっている。平安時代、春日大社で餺飥(はくたく)という切り麺が提供され、それがうどんの元祖だという説で、「春日はくたくうどん」として「郷土料理しきしき」(奈良市・新大宮駅前)で食べることができる(数が少ないので、予約が無難)。今後、お土産用も開発される予定だ。
※トップ写真は山の音(おと)(生駒市東生駒)のきつねうどん(600円)。ツユはまろやか、麺はモチモチ


こちらは、春日はくたくうどんの試作品

そんな話題のうどんだが、5年前(2009年)にツユの味の変化に気づき、当ブログで「まろやか味のうどんが食べたい!」というタイトルの記事を5本書いた。今回、中間報告として、新たに判明した事実を加えて再構成したので、うどん好きの皆さんは、ぜひお読みいただきたい。


老舗・栄すし(桜井市三輪)の海老天うどん(700円)。もちろんまろやか味

(参考:これまでの記事)第1回ツユが辛くなった?、第2回カップ麺・東西比較
第3回奈良のうどん事情、第4回東京のツユは真っ黒か、第5回東西の味が融合

きっかけは、大阪と京都で立て続けにツユの辛い(塩味が濃い)うどんに遭遇し、面食らったこと。色は薄い飴色なのに、なぜこんなに塩辛くするのか。白醤油を多用しているのだろうが、関西のうどんツユがこんなに辛いと、お先真っ暗ではないか!

カップうどんは、東西でツユの味を変えている、というよく知られた話がある。それは今も続いているのかと、東京からカップうどんを取り寄せてみた。確かに定番の「どん兵衛」(日清食品)と「赤いきつね」(東洋水産)は、東西でツユの味が違った(製造工場のマークも違う)。東のツユは醤油味も塩味も濃い。対して、西はまろやか味だ。しかし驚くべきことに「ごんぶと きつねうどん生タイプめん」(日清食品)と「どん兵衛 特盛りかき揚げうどん」(同)は、東も西も同じ「まろやか味」だった! 製造工場のマークも同じだ。これはなぜか。


家族亭学園前店のきつねうどん(670円)。こちらもまろやか味

新聞記事検索をかけてみると「近ごろ都に流行るもの 讃岐うどんチェーン 東京人の味覚に変化!?」(産経新聞 2002.8.31付)という記事がヒットした。《「東京のうどん」といえば「真っ黒なしょっぱい汁にソフト麺」が定番だ。だが、その牙城(?)に「透明な薄味汁にシコシコ麺」という讃岐うどんの進出が目立ってきた》。

JR恵比寿駅構内の《「あじさいの客は、そば8割に対してうどん2割でしたが、従来の濃いつゆに加えて薄味の関西風も選べるようにしたところ、うどん客のほぼ全員が薄味を選ぶ現象が現れた。関東圏でも、関西風志向が強まっている。麺もダシも本格的な讃岐うどんなら、潜在的なうどん需要がもっと掘り起こせると思った」と日本レストランエンタプライズでは話す》。

讃岐うどんブームのおかげで、東京でもまろやか味のツユが浸透しているのだ。日清食品の2つのカップうどんは、それを受けて商品開発したのだろう。ヒガシマルのうどんスープ(まろやか味の代表格)も、首都圏で支持されているようだ(「ヒガシマル醤油の関西風味『うどんスープ』発売40周年 首都圏でブレイク」産経新聞04.3.31付)。

その後、上京の折にうどんを食べてみたところ、まろやか味のうどん店が結構多いことに驚かされた。ただし厨房スペースの狭い「立ち食いそば屋」では、たいてい、かけうどんにも「そばツユ」を使うので、まっ黒ツユのそば屋では必然的にうどんツユもまっ黒になる(「小諸そば」のように、うどんとそばでツユを分けている店もあるが、まだ少数派)。


うどん・そば・おでん 越後(奈良市学園大和町)の「きつねうどん」580円は、まろやかで美味しい

ここでふと、「名古屋のきしめんのツユはどうなっているのか」という疑問が浮上した。FacebookにMさんが「今は名古屋のきしめんの方が味が濃いように思います」とコメントされたのだ。なので、名古屋周辺に出かけたついでに食べることにした(11/29)。まずは名古屋駅ビル1階(改札の外)の「驛釜きしめん」へ。ま新しい店で、よく流行っている。ここで「かけきしめん」620円をいただいた。出てきたのが写真のきしめんである。濃口醤油を使っているのだろう、色は濃い。いただいてみると、見かけほどではなく許容範囲内ではあるが、やはり醤油味も塩味も濃い。また関西人としては、昆布や削り節のダシがあまり利いていないのが不満だ。



1軒だけで即断するのも乱暴なので、もう一軒。ホームの立ち食い店「住よし」へ。老舗の人気店のようだ。ここの「かけきしめん」は350円と安い。ツユをひと口。うーん、辛くはない、しかし、やはりダシの味がしない。薄味と言うより水っぽいのだ。きしめんは鰹節をトッピングするので、ダシは利かさないのだろうか。



閑話休題。改めて地元・奈良のうどんを食べ歩いたところ、ほとんどが「まろやか味」だった。京都や大阪の「立ち食いうどん」の老舗も訪ねたが、こちらもまろやか味だった。では、なぜ冒頭に挙げたようなツユの辛い店に(運悪く)ブチ当たったのだろうか。1つの傾向が見えてきた。

■関西では、最近出店したばかりの店、および店主が代替わりした店は、辛い味を好みがちな若者などの好みを反映してか、ツユを辛くする傾向がある。ただし依然として関西では色の濃いツユは敬遠されるので、白醤油や塩で味付けしているので、見た目では区別がつかない。

東京のうどんツユがまろやか味になっているのは、やはり讃岐うどんブームの余波だろう。東京人も、関西風の昆布ダシの利いたまろやかツユの美味しさに気がついたのだ。つまり

■東京では、讃岐うどんブームのおかげで、まろやか味のうどんツユが次第に浸透している。しかし、それは最近出店したばかりの店や大手チェーン店が中心であり、旧来の「立ち食いそば屋」の多くは、濃口のそばツユをそのまま使った「濃口のうどんツユ」を提供している。


東京・秋葉原の立ち食いそば(岩本町スタンドそば)。うどんツユも真っ黒だ

私のFacebookにも、Nさんから《25年前に私が東京に居たころは激しい差でしたが、最近は駅の立ち食いを除けばあまり差を感じません。おっしゃるとおり、関西のだしの味の変化と塩辛さの方が気になります》、Mさんから《丸亀製麺さんのような讃岐うどんの全国チェーンが出てきてから、東と西の味の差がなくなってきているように思います》というコメントをいただいた。


小諸そば(東京・三越前店)の「きつねうどん」340円。見事に関西風!

■関西の「塩辛化」、東京の「まろやか化」の結果、東西でうどんツユの融合が進んでいる。関西の薄口醤油(および白醤油)、東京の濃口醤油という違いはあるが、おそらくこのままだと、何年後かには味はソックリなものになり、カップうどんの東西の区別もなくなるかも知れない。

私もこれから何年もしぶとく生き残って、毎年のうどんツユの変化をリサーチしていきたい。うどん好きの皆さん、ぜひご意見をお寄せ下さい!

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 日の出製麺所
 有限会社 日の出製麺所

(12/4追記)奈良県内の醤油屋さんのKさんから、こんなメールをいただいた。
ブログ拝見しました。まろやか味のうどんを関東人が受け入れつつある。実感です。弊店でも関東のお客様がうすくち(淡色天然醸造醤油)をご注文になる例が増えています。そろそろ関東人はこいくち と決めつけるのは終わりになるのかもしれません。良いもの、美味しいものは広まり、味の嗜好は変化していくということなんでしょうね。
そういう私も、「薄口醤油は煮物用で、つけ・かけ用は濃口醤油」と信じこんでいたが、Kさんの店の「淡色天然醸造醤油」を豆腐にかけて、その美味しさに驚いた。醤油の美味しさは、薄口醤油で引き立つのだ。ただし、これは「天然醸造醤油」に限った話だろうが…。
コメント
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