TENZANBOKKA78

アウトドアライフを中心に近況や、時には「天山歩荷」の頃の懐かしい思い出を、写真とともに気ままに綴っています。

迎仙閣と吉井勇

2019年11月24日 | 吉井勇
11月24日 雨
天気予報を何度も見るも日中は雨の予報
雨の中を行くのか自問したが、今日行かなければ次は1年後となるので傘をさしてでも見学することにした。
今、吉井勇について調べているが、ここは吉井勇の歌碑が建っていることが分かったからだ。

目的地は「迎仙閣」、「ぎょうせんかく」と読む。
ここは私邸で、公開されるのは年に2日だけ、知る人ぞ知る紅葉スポットである。
公開期間の短さから「プラチナスポット」と表現しているサイトもある。
入場料は無料。

迎仙閣と吉井の関係



歩いて迎仙閣に向かう。
雨は小降りになり、迎仙閣の由来になっている迎仙嶽(行仙嶽)が顔を出している。






入口 




中は閑散としていた。
昨日は1000人を越える入場者だったそうだが、天気のせいだろう。

台湾から訪れたという2人組だけ


奥に見える山が迎仙嶽 ここの庭園はこの山を借景に造られているという。
その山が一番見えるところに吉井勇の歌碑は建っていた。




あった!



 うつし世にやすらぎあれと今日もまた行仙嶽を見つゝ祈りぬ  吉井勇


邸宅
































この庭園の管理を任されている庭師の方から話を聞くことができた。
今年は台風の影響で、橘湾からの潮風を受けたので紅葉の色が悪いと言うことだった。塩害だそうだ。
入園者が少なかったので、例の台湾からのお嬢さん達と一緒に庭師さんにガイドをしてもらった。
庭木の1本1本に愛情を持って接していらっしゃることが言葉の端々から伝わってきた。




四方竹(シホウチク) 茎が四角の竹





まだ黄色で紅葉はもう少し先だが、一般公開は昨日と今日だけ。
ふだんは会社の接待で使っているそうだが、こういうところに泊まれる人がうらやましい。
せっかくのきれいな庭園なのでもう少し公開したらと言ったら、「多くの人が来ると荒れるので…」と庭師さんはおっしゃった。
2日だけだけど、無料で公開するのは社長さんの好意だそうだ。













一緒にまわった台湾からの観光客



高浜虚子の俳句 (石碑も写したが逆光で真っ黒…)



「吉井勇先生選 迎仙閣」と刻まれた石碑 (これも黒くなって読みづらいが…)



最後にもう一度 吉井勇の歌碑



それは山が見える一番いいところに建てられ、紅葉が彩りを添えてくれていた。



うつし世にやすらぎあれと今日もまた行仙嶽を見つゝ祈りぬ


「やすらぎ」は「平和」と読み替えることもできる。今日は折しもローマ教皇が来崎された日。
教皇も平和公園で祈りを捧げられたが、世界が平和になりますように…




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吉井勇が詠んだ英彦山

2019年11月24日 | 吉井勇
 吉井勇が英彦山を訪ねたのは1936年(昭和11年)のことである。この年、吉井は141日にも及ぶ大歌行脚の旅に出ている。歌行脚といえば聞こえはいいが、その実傷心旅行であった。記録には、6月15日に小倉に着き「戸畑、八幡に赴き、更にまた會田氏等とともに英彦山に登る。山上の宿坊にひとり残りて、二泊の後小倉に帰る。」とある。英彦山に「ひとり」残ったところに吉井の悲しみの深さが感じられる。

「冬夜独座」というタイトルの中に次の歌がある。

 夜もすがら身を責め心さいなむをわれのこの世の荒行とせむ


 さて、ここからが英彦山を詠んだ歌である。中でも強烈なのが

 寂しければ酒ほがひせむこよひかも彦山天狗あらはれて来よ

英彦山に住むと伝えられる天狗でもいいから酒の相手をしてくれというような、やけっぱち感が強く伝わってくる。自ら求めて孤独になりながら、やはり寂しいという胸中の吐露となっている。
あるいは自分と同じように、深い悲しみを抱きながら山に隠棲している天狗に親近感を覚えたのかも知れない。

この歌は棟方志功の版画になっているので、そのことでも広く知られている。




歌集「天彦」の中には彦山を詠んだ歌が、上記のも含め十首収められている。
山の上に2泊もしたからだろうか、雲や霧を詠んだのが四首ある。

吉井は実は寂しがり屋である。求めて孤独の世界に自分を置いているが人恋しくてたまらないのである。歌集「天彦」は巻頭に「寂しければ」で始まる歌が72首も続く。その筆頭が「寂しければ人にはあらぬ雲にさへしたしむ心しばし湧きたり」で、この歌からもそのことが窺える。
「英彦山」の中では、雲や霧について次のように詠っている。

 英彦山にたたなはる雲をはろばろと見はるかしつつもの思ふなり
 
 見るほどに鷹の巣山も宙に浮き七谷八峡雲わたり来る


(鷹の巣山)


朝な夕なの低い雲がこの鷹の巣山の麓に湧いたのだろう、山が宙に浮いて見えるほどに。


 彦山の荒山伏のあくびよりこれや湧き来し雲にあらぬか

よほど特徴的な雲で、「あっ、あっ、あ…」と大胆なあくびを連想させるような、まるまるとした雲がポツン、ポツン、ポツン…と、ほどよい距離で連なっていたのであろう。
(本文中で「英彦山」、「彦山」、「英彦の山」と表記が混在しているが、これは原文のまま)


 さむざむと霧のひまよりあらはれし英彦の山の山の骨かも








 彦山の杉の雫に立ちぬれぬ妹を待つ身にあらなくにわれ

この歌はあまりにも悲しいものになっている。若い頃の「酒ほがひ」に収められた青春の放埒の歌とは対照的で、自虐的な歌だ。
万葉集、大津皇子の「あしひきの山のしづくに妹待つとわが立ち濡れし山のしづくに」を元にしたのだろう。




 見がまえて豊前坊みちいそぐなり天狗礫も降り来とばかり

「豊前坊」は日本八代天狗の豊前坊天狗なのか、それとも豊前坊高住神社なのか?高住神社のことを豊前坊と言うし…

豊前坊へと続く昔ながらの道


怪しげで、どこからともなく天狗礫が飛んできそう。身構えながら豊前坊へと急ぎ足で行っているのか?
それとも豊前坊天狗が、石が飛んでくるならきてみろと身構えながら歩いているのか?

豊前坊(高住神社)へと続く石段


豊前坊




豊前坊の御神木「天狗杉」




英彦山のお土産 天狗が描かれているお菓子。

英彦山の名物に「英彦山がらがら」がある。これは土鈴としては日本最古で800年の歴史があるが、これも歌に詠み込んでいる。


 天狗風にはかに吹き来あなやわが詠草飛ぶと土鈴(つちすず)を置く



 英彦山(ひこやま)ちむろの谷は見ざれども心は遠く空にこそ飛べ





「天彦」には載っていないが、次の歌も詠んでいる。

 彦山に来て夜がたりに聴くときは山岳教もおもしろきかな



「山上の宿坊」に2泊したとあるが、その時のことだろうか。



 英彦山はおもしろき山杉の山天狗棲む山むささびの山






ゆくりなくこの山に来て見まゐらす役の行者の像のこごしさ




最後に、吉井勇が英彦山に登った20年後に出された歌集「形影抄」に収められた英彦山の歌


 酒汲みてあらたなる世を語らむ彦山天狗わが往くを待て


襲いかかる不幸に出口さえ見えず旅に出たのが1936年で、その時の歌と1956年の「形影抄」の歌を比較すると吉井が精神的にも社会的にも復活できたことが伝わってくる希望に満ちた歌となっている。

 
 寂しければ酒ほがひせむこよひかも彦山天狗あらはれて
 酒汲みてあらたなる世を語らむ彦山天狗わが往くを待て

「妹を待つ身にあらなくにわれ」と歌っていた吉井は英彦山に登った翌年の1937年に孝子夫人と再婚している。このことを吉井は「孝子と結ばれたのは運命の神様が私を見棄てなかったためと言ってよく、これを転機として…)」と述懐している。
人目を避けるため猪野に隠棲していた吉井が孝子夫人との結婚を機に高知市内へ、その後京都に移り住んだ。そして歌会始の選者、日本芸術院会員へと返り咲き、吉井の歌は以下のように評価された。
「人生を味解したものの諦観がその歌に色濃く匂うて来、いよいよ老境の滋味を示しはじめていた。勇調は年とともに深化を加えて潜光を放つに至った」(木俣修「吉井勇研究」)
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天佑寺の紅葉'19

2019年11月22日 | 上山の四季
急に気温が下がり、日に日に紅葉の赤みが増していっています。
通勤路にある天佑寺の紅葉が気になり仕事帰りに寄ってみました。

天佑寺は上山登山口の北口駐車場と隣り合わせで、カテゴリーとしては「上山の四季」です。
もっとも、上山自体が以前は天佑寺を菩提寺とする諫早家の直轄の山でした。



大門へ


石垣に生えていたツワブキの花


山門 紅葉には早かった…


赤くなっていた土塀に絡んだツタ


回廊


諫早家墓所前


上り藤(諫早家の家紋)


虚空蔵堂側の門


イチョウの黄葉




ここは年中青々としている竹林


再び、山門(内側から撮影) 境内のイチョウの黄葉も見頃はもう少し後




紅葉とツワブキの黄色


再び、大門(ゴール)



天佑寺は気高さが漂う凜としたお寺です。
ここの紅葉や黄葉は来週が見頃でしょう。


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11月7日の上山

2019年11月21日 | 上山の四季
久しぶりの上山記事は、2週間ほど前の11月7日のことです。
いつものように歩いていたら、この日も高校生ランナー達に会いました。
上山では見慣れた光景ですが、「えっ、今日も?」と驚きました。
というのは、前日の11月6日は県高校駅伝大会だったからです。
大会翌日、彼女達は自主練で来ていたのでしょうか…







県大会23年連続優勝、全国大会でも優勝実績がある地元諫早高校陸上部、その県大会連続優勝記録が途絶えたのが1年前のことでした。
そして先日11月6日、1年前に悔し涙を流した彼女たちはみごと優勝に返り咲きました。しかも、全区間区間賞というすばらしい成績で。
そんな大会のあった次の日、またいつものように上山の山道を走っていることに驚きました。彼女たちが前日のレースに出ていたのかどうか、これが部の練習なのか自主練なのかは分かりませんが、すれ違いざまにいつものように「こんにちは」と挨拶を交わしてくれる彼女達には、「頑張れよ」とエールを送らないではいられません(心の中で)。


若者の頑張りを目の当たりにし、すがすがしい気持ちで山頂に立つと









西の空に夕焼けが広がろうとしていました。
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英彦山のアフター登山に正面参道へ

2019年11月12日 | 山(県外)
豊前坊からの英彦山登山を無事に終えたのが15時を少しまわったところでした。
あと2時間は活動できるとふんで、銅鳥居からの正面参道に行くことにしました。
英彦山のアフター登山も英彦山です。

懐かしの銅鳥居




部分的な紅葉はありましたが、全体的には少し早かったようです。
豊前坊から登ったものの、ここの紅葉が気になっていました。1年前、初めてここを訪ねたときの紅葉があまりにもきれいだったからです。





紅葉の見頃は10日後くらいでしょうか






「荒城の月」の歌詞のようなこの寂れた景色がたまらなく好きです。
栄枯盛衰、ああ昔の光今いずこ…




そして参道の中間地点にあるお土産屋さん


1年前の初めての英彦山では、弁当を買いそびれて困り果てていたのですが、通りかかったこの売店にあったお土産用のせんべいと饅頭でなんとかピンチをしのいだのです。


あの時のお礼を言おうと訪ねたら、オーナーが替わってらっしゃいました。新しいオーナーといろんなお話をした後、1年前に助けられたあのせんべいとお饅頭を今度はお土産として買いました。

それがこれです!


せんべいといえば地味なイメージがありますが(実際、地味ですね)、これがけっこう美味しいんです。全身に天狗パワーがみなぎる感じでした(あくまでも個人の感想)。


こちらは古い絵地図


紅葉にはちょっと早かったのでここで引き返し、お風呂に入りに近くのシャクナゲ荘に向かいました。

シャクナゲ荘 


来年の1月にはここで同期会があります。
英彦山登山も計画されています。久しぶりにみんなで登って(登れるのかな?)楽しい酒を飲みましょう。

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英彦山へ

2019年11月11日 | 山(県外)
約1年ぶりに英彦山へ。
今回は豊前坊から登りました。

諫早を7時前に出発。
1年前に登ったときは登山口の近くでお昼ご飯を買おうとして失敗したので、今回は高速道路のSAでお弁当を買いました。

10時 駐車場に到着。駐車場の周囲はきれいに紅葉しており、テンション上がりまくりでした。。


豊前坊


杉の木立の中、歴史を感じさせる石段を登っていく。
はたして天狗はいるのか?



ひときわ大きな杉 その名も「天狗杉」


境内に用意されていたお茶を有難くいただく


うっすら黄葉した中、逆鉾岩、屏風岩、筆立岩の奇岩が続く


そして望雲台 何だこの人だかりは… そこに待ち構えていたのはディズニーランド並の順番待ち


デポされていた団体さんのザック


一人ずつ登っていたら時間がかかり過ぎるので、まとめて登ることになりました。
「蜘蛛の糸」か!


さらに崖をよじ登って…


そこに待っていた絶景 ブラボー!


でも、足下を見ると目がくらむほどの断崖絶壁


もう少しいい構図で写したかったが、怖くてこれが限界


望雲台に満足し元の登山道に戻り、黄葉の中をどんどん高度を上げていきます


万里の長城か!


ほどなく北岳に到着


12時をまわったのでここで昼食
山田SAで買った豪華な「天領日田の鶏唐めし」


この後、尾根伝いに中岳を目指す


ほどなく中岳到着


予定ではここから北西尾根を下る予定でしたが、その入り口を見付けることができませんでした。
しかたなく、奉弊殿への正面登山道を途中まで下り、中宮手前からのバードライン(野鳥観察路)から豊前坊に帰ることにしました。



はじめは立派な杉林でしたが、しばらく歩くと景色は一変。



予定外のコースでしたが、黄葉に包まれたそれはそれは静かな山道でした。



高度が下がるにつれ少しずつ緑が益してきます。




下りきったところは一面のススキ


ここからは九州自然歩道を歩きます。


かって山伏が歩いた道だそうですが、どこかに天狗が隠れていそうな雰囲気です。
どうか石が飛んできませんように…

  身がまえて豊前坊みちいそぐなり天狗礫(つぶて)も来(こ)とばかり  吉井勇

そして駐車場の紅葉が目に飛び込んできました。


ここがスタート地点でありゴールでもある豊前坊


午後3時をまわったところです。
早く下山できたので、車で銅鳥居のある正面登山道に向かいました。
参道の紅葉が気になったのと、前回お世話になった土産物屋さんに行きたかったからです。

- 続く -


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薔薇と蛙

2019年11月04日 | 畑・園芸・工芸・片付け
実家の裏の畑でのこと

挿し木で育てた菊が花を咲かせていました。
台風でなぎ倒されていたのがよくぞここまでと感無量です。










満足して畑を後にしようとしたとき、別の場所の薔薇に目がとまり、「えっ!」



アマガエルが薔薇の花の中にいるではないですか。







薔薇の花びらに包まれて気持ちよさそうに。
これは珍しいことなのかとネットで検索したら、よくあることのようでした。
薔薇の花に寄ってきた虫を食べるとか…

「美しい薔薇には棘がある」よりも怖い
「美しい薔薇には蛙がいる」

「バラとカエル」という題で、イソップ調の童話が書けそう。
美しい女性と仲よくなりかけたら怖い男が隠れていたというような…

せっかくのメルヘンチックな「薔薇と蛙」の写真でしたが、夢のない話になってしまいました。
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