闇に響くノクターン

いっしょにノクターンを聴いてみませんか。どこまで続くかわからない暗闇のなかで…。

ニースのフランス人から掛け軸の注文

2009-08-11 22:31:10 | 雑記
このところ無味乾燥な話題が続いたので、たまには夢のある話を書いてみよう。
といっても、これは現在進行形のメールのやり取りの話だ。

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部屋探しの件で右往左往していた一昨日、私のもとへフランスのニースから一通のメールが届いた。先方(仮にニコル夫人としておこう)がどのようにして私のメール・アドレスを知ったのかはわからない。
メールの内容を簡単に要約すると、自分の家の壁を飾るために日本の文字が書かれた掛け軸を探しているがどのようにしたら手に入るかわからない、何かいい方法を知らないか、このメールがうまく届くかどうかわからないが、手紙を壜に詰めて海に流す人のような気持ちで、心ある誰かが開いて自分の意図が通じればいいとおもいながらこのメールを出してみる、とある。

先方のことは何もわからないが、悪い人ではなさそうだし、それにこちらには彼女の希望を満たす手段が何もないわけではないので、もう少し具体的にどのような掛け軸を欲しているのか知りたい、知人に相談して掛け軸を作成してもらうことも不可能ではないが、あなたが探しているのは新しい掛け軸でいいのか、それとも古い掛け軸を探しているのかとすぐに返事を出した。

翌日ニコル夫人から第二信が届き、自分の希望が実現するかどうかもあやふやだったのに、それが実現する可能性があるということを知ったこと、しかもその返事がすぐにもらえて驚くと同時に非常に喜んでいると書いてある。そして掛け軸のことも具体的に記しているのだがそれがまた非常におもしろい。
ニースにあるニコル夫人の家は、モダンなつくりで、内部の色調は基本的に黒、赤、灰色、白のカラーで統一してあるという(いったいどんな家なんだろう?)。そのなかにちょっとした壁があり、その感じが不完全なので、完全化するためには掛け軸がいるとおもったというのだ。すぐには想像できないちょっと変わった感覚だが、おもうに、彼女の家は装飾品がほとんどないシンプルなつくりの家ではないかという気がする。だからそこに具体的な「モノ」を描いた美術品を置くと雰囲気がこわれてしまうし、かといって単なる模様やデザインで埋めたくもない。そこでおもいついたのが、ほんとうは有意味なのだが印象としてはあくまでも無機的な記号(日本の文字)で埋めるということではないだろうか。
彼女にはさらなる希望があって、できればその掛け軸は壁と統一感のあるライトグレーの紙に墨で文字を書いて欲しいという。またそのサイズは高さ5メートルが希望だという。いったいどんな壁にその掛け軸を掛けようというのだろうか?

彼女の希望を満たすことができる書家にちょっと心当たりがあったので、その希望を実現するのはまったく不可能というわけではない。ただしどのくらいの費用を考えているのかと返信し、その一方で、タックスノットにも作品を展示している書家のAさんに、この変わった依頼を受ける気があるか連絡をとろうとおもっている。