青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

からっ風と、筑波おろしの中を。

2024年01月13日 10時00分00秒 | 東武鉄道

(首都圏最終防衛ライン@川間駅)

8111Fを、東武野田線随一の撮影地である江戸川の鉄橋で撮影するべく、電車を川間の駅で降りる。以前、クルマに乗って撮りに来たことのある場所だけど、電車で来るのは初めてだな。川間の駅前、駅前に「ちばぎん」があるので千葉県であることが分かるのだが、雰囲気としては東葛・・・というよりは北埼玉寄り。駅前からは関宿方面に向かうコミュニティバスが出ていた。首都圏の北東方向の周縁部をなぞるように走る東武野田線は、東京を中心とする鉄道交通の最後の防波堤という感じがあって、アーバンパークラインっつーか首都圏最終防衛ラインって感じなんだよな・・・野田線の外側、特に柏~春日部のラインから外側って以前はかなりの鉄道交通僻地でしたよね。今は野田市と合併してしまったけど、旧関宿町の住民だけでなく、利根川を越えた茨城県の旧岩井市あたりの住民なんかもかつて東京に出るのは野田線が頼りで、バスで芽吹大橋を越えて野田市駅まで出て来ることが多かったようだ。今は守谷あたりにクルマで出て、つくばエクスプレスで東京まで行く流動の方が主流になってるんでしょうかね。

初春の川間の路地を歩く。お飾りを付けたしもた屋風の酒店の前を、8000系の電車がガタコンと通り過ぎて行く。昭和の時代にはどこにでもあった酒屋兼タバコ屋。まだ現役っぽい「TOBACCO」のカウンターがいい。小さい頃は、こういうお店にオヤジのお使いを頼まれて、200円持ってセブンスター買った残りの20円を駄菓子に化けさせていたものだ。昔はそれなりに一日ひとハコくらい嗜む愛煙家ではありましたが、医者に言われてタバコをやめてから既に10年近くになる。禁煙出来るか出来ないか、人によってそれぞれでしょうけど、自分は「やめよう」となったら意外にスパッとやめられたな。やめてから暫くは、ふとした瞬間にタバコの幻影が見えることはあって、それこそコーヒーやお酒を飲んだ時の一瞬よぎるあの口さみしさ!みたいなねえ。それもいつの間にかなくなっていた。結局「医者に言われた」ってのがクリティカルだったなあ。自発的だったらやめてなかったかも。

川間の駅から7~8分、住宅街の路地を歩いて行くと突然土手の向こうに空が開け、千葉と埼玉の間を分かつ東武野田線の江戸川橋梁に出る。野田線内では最大の鉄橋で、全長は約380m。野田線の前身である総武鉄道によって架橋された橋梁ですが、昭和30年代に堤防のかさ上げ工事により橋の場所は15m程度下流に移されているのだそうな。ちょっと見づらいかもしれませんが、千葉県側から2つめの川の中州に立っている橋桁の上流側には、かつての橋の橋台部分が残っていたりします。上流では千葉県と埼玉県、下流では千葉県と東京都の境を流れる江戸川は、江戸時代に「利根川の東遷事業」により流路が銚子へ変えられるまでは、こちらがかつての利根川であったのは有名な話。川岸に灌木と草原の広がる風景は、葛飾とか松戸・市川あたりの利根川と比べると、随分とのんびり感があるね。

ああ、それにしても、この江戸川の空よ。正月からの日本に起こった嫌なことを、ひとときでも洗い流してくれそうな青い空である。関東平野の冬なんてものは、 茶色く枯れた稲の切り株が残った田んぼと、枯れたススキとズボンにやたらとくっついてくるセンダングサみたいなのが生い茂った草むらと、葉が落ちたシケた坊主の木ばっかでねえ。それでいて風だけはピューピュー強くてねえ。ただひたすら冷たい風の中で、水っぱな垂らしたガキがゲイラカイトを上げている・・・そんなイメージがあるのだけど、とにかく空だけは世界で一番青いんだよな。空を突き抜け、宇宙まで透けて見えそうな、そういう青さだ。カリフォルニアよりニューカレドニアより、青く澄んで天国に一番近いのが、関東平野の冬の空であるように思う。

この東武8111Fが纏っているのは、「インターナショナルオレンジ」と言う色らしい。
お世辞にもおしゃれとは言えない野暮ったいカラーリングの電車が、からっ風と筑波おろしの混じったような風の中を走って行く。
東武鉄道の電車というものは、関東平野の冬枯れの風景に実にマッチしているのではないだろうか。


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