(僕たちの未来へ@富山駅前)
上市から電車に乗って、電鉄富山に出て来ました。折角フリーきっぷを買ったので、ちょっくら市内電車巡り。お馴染みのラバーズコンチェルトのメロディに乗せて、富山駅前電停を行き交うトラム。岩瀬浜から大学前・南富山までの大きなネットワークになった市内電車。市内交通の柱として、地鉄の収益源ともなっています。朝から岩瀬浜に向かう親子連れ、子供の目に映る未来の富山は、どうなっているのだろうか。
やはりコロナ禍のせいか、何となく閑散とした街を往く市内線。お気に入りの、緑とベージュのツートン7018号が早速やって来ました。相変わらずの「笹谷クリニック」の広告を付けて。最近はどこの鉄道会社もリバイバルブームと言うか、かつての塗装を復活させて懐かしさで耳目を集めるような企画が花盛りですけど、この7018号に関して言えば、昔から引き続いてずーっとこの地鉄市内線カラーを保っているのだとか。リバイバルでない、ホンモノの矜持ってヤツでしょうか。
7018の前に、南富山方面から大学前行きの7016が。クリームに赤帯裾緑の地鉄市内線標準色ですが、最近お色直しをしたのかツヤツヤしている。そして広告看板が入っていないな。駅前を出て行くセントラムと、三つの車両が駅前で並びました。路面電車のある街では、こんな感じの車両同士が密に接した運行形態は珍しくないんだろうけど、普段とこういう光景を見ないのでなんだかワクワクしてしまいますね(笑)。
富山駅前電停へ滑り込んだ7018号を富山駅改札口方向から眺める。真新しい電停と、古風な路面電車のコントラスト。上部の黒ゴムで固定されたバス窓と、出入口のプレスドアが時代を感じさせます。僅かながらに乗車していた富山大学の女子大生らしき乗客が降りると、南富山方面行きは私一人だけを乗せて、富山の街を駆け出しました。静かな車内に、騒がしいほどの車内アナウンス。そしてツリカケ音。堪能・・・なんだけど、少し寂しくもある。
堀川小泉で降りて、南富山駅前で折り返して来る7018を撮影。堀川小泉は、7018の車体広告に付いている「篁内科外科病院」の最寄り電停。南富山~富山駅前間は、所要時間は鉄道線が早いものの本数は圧倒的に市内電車が上。料金も鉄道線320円に対し市内線210円とこれまた圧倒的です。堀川小泉の辺りまで来ると総曲輪の繁華街とは違って、富山市の郊外の住宅街の中。近くには高校もあります。電停で同じ単車の8000形とすれ違い。
後続の市内電車で南富山駅前に移動すると、小雪が舞って来た。この日の午前中は、晴れたり曇ったり雪が降ったりの猫の目天気であった。突然降り出した早春の雪に、思わず肩をすぼめる富山市民。今年の冬はもう雪はいいわ、と言うくらい降ったそうだが、さすがにこの時期の雪は降っても積もるほどではなく、優しい名残り雪と言う感じがします。
チラつく雪の中を、再び7018号。おへその一灯ライトが絵になる。除雪車が待機した南富山駅前。1月に富山市内で1m以上の積雪を記録した時は、市内電車もあちこちで立ち往生したそうな。特に最近の新型車両は低床化が進んでいますので、床下に雪が入り込んで身動きが取れず、救援の電車でも牽引が困難。結局除雪車に引っ張られて脱出を図るなど大変だったらしい。雪と戦う北国の路面電車・・・そんな様子も写真に収めてみたいけど、まあそんなん地元に住んでないとなかなか遭遇はしないのでしょうな。
不二越・上滝線の南富山駅ホームに隣接した南富山駅前電停。風の冷たさに頬を赤らめて電車を降りる親子連れ。年月が染みたモルタル塗りの南富山の駅ビル、そしていつものように駅前で客待ちをしている地鉄タクシー。南富山のいつもの風景・・・なのですが、地鉄タクシーは新型コロナに係る需要の落ち込みのため、3月末で廃業することを先日発表しました。県を代表する公共交通の要とも言える地鉄グループが、交通部門の一角を占めるタクシー事業を廃業するという事は結構衝撃的なニュース。
飲食、レジャー、宿泊産業、どこをとっても厳しいのだろうけど、報道は飲食店への制限措置や苦境を伝えるばかりではなく、交通事業者の苦境の声も拾ってはくれぬか。そして、売り上げが蒸発している交通事業者に、政治はしっかり支援をしているか。いつ明けるとも知らないコロナの闇。闇の先のどこかに光はあるのだろうけど、その光が見える日まで、公共交通は持ちこたえられるのか・・・地鉄タクシーの廃業は、既に1年を超える長さになったコロナ禍が、交通事業者の経営に大きく重くのしかかっている事を感じて、暗澹たる気持ちになります。
ああ、ぼんぼりに、雪が降り。
富山駅構内の市内電車の停留所は、これから先の交通の一つの形だと納得できるようなものだと感じます。
地方私鉄を訪ねるとつい、侘び寂びばかりを追ってしまいますが、富山地鉄の中に未来が見えたようで、初めて見たときにはとても嬉しく思いました。
一方で、昔から変わらない古い電車や、南富山駅の情景もいいものですね。
新旧混交で多様な表情を見せてくれる地鉄、ファンになってしまいます。
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