青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

東武鉄道、北の要衝

2020年11月28日 17時00分00秒 | 東武鉄道

(遥か海峡の騒めき@下今市駅)

下今市駅にて、先ほどSL大樹で下って来た14系客車がDE10に牽引されて入換作業。作業を終えたようで、デッキから係員氏が降りてきた。日光側のレトロな木造の跨線橋の雰囲気といい、青い客車にDE10となれば、もうこれはどう見ても青森駅ですよねえ・・・。元々東武で使ってる14系は急行はまなすの客車な訳ですが、これはもうはまなすのホームへの据え付け作業にしか見えません(笑)。DE10と14系客車の奏でる派手なディーゼルエンジンの音のアンサンブルの向こうに、微かに津軽海峡の波の騒めきが聞こえたような気がしました。栃木には、海はないのにね。

東武の目論見は国鉄の復活ではないか・・・と書きましたが、まあこの光景を見てしまうと、これが東武の駅とはとても思えなくて、脳内はすっかり青森駅に変換されてしまいました。青森で14系客車と言えば、はまなすの前の世代だと、まだ連絡船のある時代ならそれこそ急行八甲田や急行十和田とかね。東北本線回りが八甲田、常磐線回りが十和田だったっけ。座席車だけのハザ編成の夜行急行が、はくつる・ゆうづるの補完役として、そして周遊券を握りしめた旅行者たちを、北の大地へ誘うべく頑張っていました。

すっかり夜の帳が降りた下今市機関区。平日の夕方、もう展望デッキも閉まる頃合い。水銀灯に浮かび上がる赤レンガの扇形機関庫が絵になりますね。JRでは客車列車がほぼ絶滅したと言ってもいい中で、大手私鉄で旅客牽引機を擁する「機関区」が蘇ったってのは、改めて凄い事だなあと思います。東武鉄道は、全国の私鉄で最後まで貨物輸送を残していた会社で、伊勢崎線に杉戸機関区・東上線に坂戸機関区と2つの機関区を持っていた訳ですけど、平成になって下今市に機関区が新設されるなんて、10年前の東武ファンに聞いたら誰も信じてもらえないでしょうね。

庫内では、明日に備えてSLの点検作業が行われていました。ピットの中から車体を照らし、足回りの一つ一つを打検して行く作業員の姿。広い機関区の見学スペースに私一人だけ、カツンカツンという槌音だけがガラス窓の向こうから聞こえて来ます。動輪3つの小型タンク車といえど、「くろがねの馬」と言うにふさわしい蒸気機関車の何とも言えぬ迫力。機関区の見学時間の終了間際まで、少し冷たい風に吹かれながらゆっくりと見入ってしまいました。

下今市のホームに滑り込む区間急行の南栗橋行き。国鉄フォントの駅名標を添えて。6000系の機器流用車である6172Fが先頭です。平日夜の上りでは乗車率も疎らですが、ボックス席に浮かぶ乗客の姿も、古き良き急行列車と言う感じで絵になりますね。下今市の駅は、駅前に何がある訳でもない(ベイシアくらいか?)ですけど、こと運行上では鬼怒川と日光と言う一大金城湯地を束ねる東武鉄道の北の要衝。そういう意味では、国鉄で言えば新津や米原のような役割の駅と言っても差し支えないのかもしれません。

ホーム上に渡された番線に吊るされる優等列車の乗り場の表示。これも国鉄的アイテムですが、優等列車以外でも「10:37 急行だいや 東武日光 4号車」なんて手書きの札でも下げてくれたらもっと賑やかな感じでいいかもしれませんね。ってか、南栗橋~東武日光の急行に愛称とか付けたら楽しいかもだよなあ(笑)。土休日の午前中の下り急行3本だけ、それこそ「にっこう」「だいや」「ちゅうぜんじ」とかね。別にヘッドマークとか要らないので・・・。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東武日光黄昏時

2020年11月25日 17時00分00秒 | 東武鉄道

(夕暮れターミナル@東武日光駅)

秋の日は釣瓶落とし、国際観光都市・日光のターミナルに到着するリバティけごん。下今市で会津方面と分割されてからは3両編成になってしまいますが、今年のコロナ禍の中では平日の特急列車は閑古鳥が鳴いていましたので、スペーシアに比べて3両で動けるリバティは乗客流動に即した運用が組めると重宝されているようです。小田急におけるEXEやMSEのようなものか。「分割出来る」という使い勝手を優先すると、短編成の特急が走るようになりますけど、個人的には「優等列車は重厚長大を良しとする」という古風な考え方なので、正直格式としては下がるように思いますよね。リバティは、最近になって特急りょうもうの一部にも投入されているようですが、まありょうもうのようなビジネスユースの特急に使われる分には悪くないと思うのだけど。

駅舎側の旅客ホームから、大きくカーブしながら東武日光の駅を出て行く南栗橋行き急行。実際は4両なんですが、編成が長く見えるようにあえて後ろは切って撮影してみました。南栗橋までとはなってしまいましたが、オデコの2つの急行灯を光らせて夕暮れのターミナルを発つその姿は風格充分。快急「だいや」「おじか」時代の名残りを感じさせてくれます。まあ5700系とか6000系の快急時代は6両編成なので、実際は向かって右側の特急ホーム発着だったと思われる。少々頭の中の思い出を盛って想像していただく必要があるのかもしれませんが・・・(笑)。

軽やかな音を立てて、ミンデンドイツ式の台車が構内のポイントを渡って行きます。一昔前、特急が1720系DRCだった時代、「だいや」も「おじか」も非冷房車による旧態依然としたサービスだったにもかかわらず、一応は特別料金を徴収していたんですよね。5700系の快速急行はマニア的には非常に人気のあった列車だったそうですが・・・そう思えば1991年に登場した料金不要の6050系の会津快速ってのは、料金的にも設備的にも物凄い破格のサービス提供だったのだなと思いますね。

一説によれば、第三セクターで開業した野岩線の利用促進と沿線振興策の一環として「東京(浅草)直通の列車」を設定するのは、開業当時からの公約みたいなものだったらしい。まあ三セクってのはそーいう政治的な話も絡みますからな。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JNR’sノスタルジー

2020年11月22日 17時00分00秒 | 東武鉄道

(会津への道遥か@鬼怒川公園駅)

川治界隈で紅葉と野岩鉄道の見事な組み合わせを写真に収めた後は、一応の達成感もあってゆっくりと鬼怒川線界隈に戻ることに。鬼怒川公園の駅を出て行く会津田島行き。きれいに改築された鬼怒川温泉駅周辺に比べて、どうにもうらぶれた感じの目立つのが鬼怒川公園駅周辺。駅前の旅館からして廃旅館と言うのがやるせないのでありますが、話を聞くとコロナ自粛絡みで持たなかったらしい・・・。鬼怒川界隈も、震災以降はインバウンドオンリーで糊口を凌いでいた宿も少なくないらしく、そのインバウンドの入口がコロナで閉ざされてしまってはむべなるかな、と言う感じ。東武も鬼怒川温泉駅までは投資してるけど、鬼怒川公園はどうも放置してる感じがしなくもない。乗降客も20年前の3分の1になってしまったという事で、投資の選択と集中って事なんでしょうけど。

鬼怒川温泉駅南側の複線区間で「AIZUマウントエクスプレス」を。会津若松から乗り入れて来る気動車。大手私鉄で気動車が走っているのは全国でもここだけです。その昔は名鉄の「北アルプス」とか南海の「きのくに」、古くを遡れば小田急の御殿場線乗り入れ準急なんかが有名でしたけどね。そういや初代AIZUマウントエクスプレスは名鉄北アルプスで使ってたキハ8500でしたか。新製して10年で北アルプスが廃止になっちゃって会津送りになってしまったという悲運の気動車だったんだが、名鉄が経費削減のために何でもやってた頃でしたね。

SL大樹。カタツムリ的なツノ出し目玉が特徴のC11207を複線区間でかっつりと。東武鉄道は、蒸気・内燃・電気と3つの動力方式が走っているのが改めて凄いですね・・・。突然東武が「SL走らせる」とか言い始めた時はウソだろと思いましたが。SLもいいんだけど、どっちかってーと東武博物館に入れてるED5015を復活させるなり三岐からED5080を買い戻すなりして、EL大樹をやって欲しいんだよな(笑)。そうすりゃSL・DL・ELの三冠制覇じゃないですか。

小佐越駅にて交換待ちの6050系。国鉄フォントの駅名標を小道具に。小道具越しにボックスシートで微睡む乗客を見ていると、あたかも地方都市へ向かう国鉄急行列車のワンシーンのようでもある。SLを譲り受け、機関庫を作り、駅を改装し、14系客車を用意して、SLを買い足して・・・こういうのを見てると、東武のやりたい事ってのは「僕たちの国鉄の復活」なのではないかと思えなくもない。ある意味、関東一円に広大な営業エリアを持つ東武って小さな国鉄みたいなもんですからねえ。どこかクラシックでもありそこはかとなく封建的な感じがする東武の社風は、何となく「国鉄的なもの」への親和性が高いような気がする。SL大樹を中心とした日光鬼怒川界隈のリビルドは、そんな国鉄ノスタルジーに共感する上層部たちの仕掛けだとしたら言い過ぎかな。どうせ拘るなら、私鉄の中では強い東武労組の協力を仰いで、ストライキとかアジ電でもやってみたら面白いかもしれないね、と無茶な冗談を言ってみる(笑)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野岩一目錦秋

2020年11月20日 23時00分00秒 | 野岩鉄道・会津鉄道

(川治渓谷紅葉染@川治ダム俯瞰)

標高500mの川治の温泉街から、さらに標高を上げて標高630m。先ほど撮影していた野岩鉄道の高架橋を、今度は鬼怒川の流れを堰き止めた川治ダムの事務所脇から俯瞰します。今回の日帰り旅のクライマックスとも言えるすんばらしい紅葉です。当初は晴れ想定だったので、本当なら湯西川温泉駅付近から五十里湖の鉄橋を撮影する予定だったんだよね。川治ダム俯瞰は太陽が西に回ってしまうと山の陰影で撮影がしにくそうだなあ・・・なんて考えてたもんで。結局曇りベースで推移したので川治ダムまで上がって来ちゃったんだけど、来てよかったわあ。

サブカメでは眼下に流れる鬼怒の流れを入れ込んで。通過するのは特急リバティ会津。シャンパンゴールドにグリーンのラインをあしらった、会津ルートの新たなエース。座席指定制の特急と言う形を取っておきながら、下今市~会津田島間の利用であれば、空いている席の着席は可能と言う2制度並立は何かと物議の対象でもありますが・・・そんなこまけえ事はいいんだよ!というこの時期の車窓風景。これなら、特急料金払っても窓側を確保したくなるかもしれません。

湯西川温泉の道の駅で買った昼食代わりの菓子パンを食いながら、次なる通過電車を待つ。ダムの上で山の風に吹かれながら麦茶と一緒に頬張れば、ただの菓子パンでも極上の美味である。あくまでも食い物の味なんて気分と気配でどうとでも変わるものだ。谷底から堤体までそれなりの高さがあるので、下を覗き込んでしまうとそれなりの恐怖感があるのだが・・・(笑)。小一時間あってやって来たのは会津田島行きの普通電車。御望み通りの6050系。しっとりと翳る紅葉の山肌に似合うコーラルオレンジのライン。

遠景を撮ると、この日は少しモヤり気味で霞み気味でしたね。何分にも風景っぽく撮影する時は、空気のヌケってのが欠かせないものですが・・・奥に見えるのは、東北本線で言えば矢板の先辺りから見える高原山の山並みの一部。あの山を龍王峡から日塩もみじラインで向こうに越えて行くと、塩原新湯を経て塩原温泉に至ります。塩原温泉なんてそう言えば長い事行ってないなあ。アクセスのメインルートは新幹線の那須塩原駅からJRバスなんでしょうが、野岩鉄道からでも、上三依塩原温泉口駅からバスが出ていて塩原温泉へ行く事が出来ます。

鉄道写真の中でも、高いところから大きな景色を撮り込む「俯瞰」と言うジャンルは人気も高く、極めてる人は極めてますけど、2時間も3時間も道なき道を登って、目当ての列車を一発だけ切って帰るなんてそんなコマ単価の高い撮影はなかなか出来ません(笑)。そういう意味ではこの川治ダム俯瞰はクルマで直付け出来るお手軽俯瞰ですね。実は野岩線には「川治の鉄塔俯瞰」と言う名撮影地がありまして、この写真の左側の山に立つ高圧線の鉄塔の作業路から撮影することが出来るのですが、そこまでの斜面の直登がとてもじゃないけど大変そうで、滑落でもしたらシャレにならんので行きませんでした(笑)。あーいうのは先達が必要だなあ。来年誰か連れてって下さいな。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

錦秋の山映えて

2020年11月16日 17時00分00秒 | 野岩鉄道・会津鉄道

(東武のみちのく@新藤原駅)

鬼怒川線沿線をゆるゆるとロケハンしながら北上。したのですが、案外鬼怒川線沿線って住宅が入り込んでいるのと、架線柱が密に入り込んでいて撮影がしづらいのね。という事で、鬼怒川温泉の駅から鬼怒川公園を通過して新藤原まで来てしまいました。東武鉄道の北の最果て、まさしく「東武のみちのく(道の奥)」という駅です。ここから線路は会津に向かって野岩鉄道に変わります。山もかなりな色付きを見せていて、まさに秋真っ盛りの美しさ。特急リバティ浅草行きが出発を待っていました。

国道121号をさらに北へ。紅葉を探しつつ龍王峡を抜け、川治温泉周辺に入って来ると、周囲の様相はまさしく燃ゆる山々、全山盛りの紅葉と言った感じ。温泉街を斜めに見下ろす展望台付近からは、野岩鉄道の線路が見えます。ここと五十里湖を渡る鉄橋が野岩線の一番の撮影ポイントかな?という事で、展望台にクルマを止めて三脚を出してみることに。

春は桜、夏は青葉、秋は紅葉、冬は白銀。鉄道の写真を追い続けると、季節の巡りが早いですよね。気候変動の激しい昨今。季節の風物の大事さというか有難みは、以前にも増してより深く感じられるようになりました。今年は秋の台風シーズンに台風の上陸が一度もなかったという事もあって、山の紅葉の色の乗りが非常に良いように思います。コロナさえなければ、この素晴らしい紅葉をもっと多くの人が愛でに来たのかと思うと勿体ないような。平日ともあり、錦織なす風景を独り占めです。

個人的にも今年の紅葉は、もちろんシーズンに合わせて日光川治方面に来たってのもあるけれど、久し振りに出色の出来映えなのではないかな、と思います。深山の中を真っすぐに貫くPCコンクリート橋、この路線の魅力は、土木と自然のマリアージュ。 鉄建公団線らしい高規格ですよね。入念に2台態勢で三脚を並べてレリーズ集中。ファインダーの中を、秋色のカラーリングを身に纏った2連の6050系が通過して行きました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする