青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

裏六甲、奥の細道。

2023年07月30日 10時00分00秒 | 神戸電鉄

(お得に美味しい@神鉄おもてなしきっぷ)

今回の神戸電鉄訪問に使用したのが、企画乗車券の「神鉄おもてなしきっぷ」。神戸電鉄の1日フリー乗車券と、沿線の飲食店で特典メニューがいただけて1,200円と大変お得なキップになっている。確か前回来た時にも似たような企画乗車券を買っているのだが、その時は折角の特典も使わずに、ひたすら全線乗り潰しに向かってしまったのを覚えているのだが、そこまで急ぐ旅でもなし・・・ということで、再び神鉄電車の人に。

午前中は長田と鵯越の駅でがっつり電車撮りをしていたら、あっという間にお昼。フルーツを並べた駅前商店が迎える箕谷の駅で、早速「おもてなしきっぷ」の権利行使を目論む。箕谷は、六甲山の北麓にある谷あいの街で、背後には山と神戸の都市高速が迫るニュータウン。駅前から三ノ宮駅前行きの直行バスが出ていて、朝ラッシュ7時台10分に1本・乗り換えなし30分450円。神鉄、朝ラッシュ12分に1本・新開地回りで乗り換えあり40分580円。どっちにどのくらいのニーズがあるのだろう。この「バスとの闘い」というものは、神戸電鉄全線に言えることで、有馬・三田線では神戸市交、神姫、阪急バスと、粟生線では圧倒的に神姫バスとのシェア争いが続いていて、長年会社の収益の圧迫要因ともなっています。

湊川から鈴蘭台へは六甲山地を縦断し、そして鈴蘭台から有馬・三田方面へは裏六甲に開発された山間地のニュータウンを走る神鉄有馬線。鬱蒼とした裏六甲の山中、奥の細道といった雰囲気のカーブを曲がり、50‰の急勾配になだれ込んでくる最新鋭の6000系。構図からは切っていますが、この上を高い高架で阪神高速7号北神戸線が通っています。山があれば長いトンネルを、谷があれば高架橋を掛けている高速道路と比べると、鉄道はそれこそ開業した1928年(昭和3年)時点の線形を基本的には踏襲していることから、列車の高速化も出来ているとは言えません。線路はこの辺り山の中をなんとか50‰で収めようとあっちへ曲がりこっちへ曲がりしていて、往時の建設の苦労がしのばれます。

そして、箕谷駅を出て鈴蘭台へ向けて50‰の勾配に立ち向かう1360Fリバイバル。基本的に4両運転が大半の有馬・三田線、3連が多数を占める1000系列を捕まえたかったら粟生線方面に行ったほうがいいんですが、リバイバルの4連をスカッと編成で撮りたかったんよね。先ほど鵯越の駅で見送った編成を、三田から戻ってくる時間を見計らってパチリ。床下の艤装が武骨でクラシックで、うーん・・・好きです!ってなるよね。

お目当てのリバイバルを手堅く編成でまとめて、駅前にあった「伝統自家製麺・いけや食堂」さんへ。「神鉄おもてなしきっぷ」適用店舗のうどん屋さん。ちょうど三連休のお昼時とあって外まで並ぶ混雑であったが、しょせん一人なので空いた隙間のカウンターに滑り込んだ。大盛りとり天ぶっかけうどん。これが特典のチケットでいただけてしまうのだから恐れ多い。冷たく締めたうどんもコシがあって美味しかったが、上に乗っているとり天がバカ旨く、持って帰る人もいるみたいで、名物なんですかねえ。ともあれ、ごちそうさまでしたなのであります。

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源平の 歴史に残る 逆落とし。

2023年07月28日 17時00分00秒 | 神戸電鉄

(鵯越の坂落とし@鵯越駅)

時は1184年(元暦元年)。数々の戦いの中で功を遂げ、朝廷に近い位置に上り詰めて権勢栄華を極める平家一族。傍若無人さを極める圧政に苦しむ中、平家の総大将ともいえる平清盛に立ち向かったのが源頼朝・義経を中心にした源氏の一族。国を東西に分かつ戦いの中で、両軍が相まみえた摂津国一ノ谷。陣を張る平家側の兵士たちを、松明をくくりつけた鹿とともに断崖絶壁の上から急襲し平家側を撃破した源氏軍。その危険を顧みぬ勇猛な進撃は、「鵯越の坂落とし」と呼ばれ、後世に語り継がれる源平の戦いの一幕ともなっています。

そんな歴史に名を遺す「鵯越」の地を、50‰の急勾配で越えて行く神鉄の電車たち。トンネルの向こうのレールが見えないあたりに、その勾配の厳しさが窺い知れます。神鉄の勾配は最大で50‰となっていて、1kmで50mを登るくらいの坂道が最大値になっています。急勾配をどこもきっちり50‰で収めているところを見ると、おそらく最大で50‰を超えないような規格で建設されたと思われるのですが、神鉄の恐ろしいところは総延長約70kmの営業距離の約8割が勾配区間で、そのうち2割が50‰。ひたすら山坂を上り下りしている路線ということになる。なんともまあ、足腰の鍛えられる路線だこと。

準急は通過し、たまに思い出したように普通列車がやって来て、六甲山系に登るハイカーたちを降ろしていく。この駅から登るのであれば、菊水山だろうか。菊水山と言えば、それこそ鵯越から鈴蘭台にかけての六甲山中に菊水山駅という秘境駅があったのですが、平成17年に休止。ほぼ、菊水山に上るハイカーしか使わなかったと聞き及びますが、どっこい駅は廃駅となった今でも設備が現存していて、車窓からその姿をお手軽に見ることが出来ます。

駅前にあった「ひよどり商店」という茶店兼酒店。昔ながらのコカ・コーラの看板があって、いかにも古くからの街の景色を見守っているようだった。休日はやっていないようだったけど、かつてはハイカーたちの喉を潤し、一服つけるような駅前のオアシスだったのだろうか。以前来たときは、人の暮らしと住民の顔がもう少し見えたように思う鵯越の駅。「里山キッチン」の看板を掲げた弁当屋をはじめ、周辺の店も軒並みシャッターが降りていて、かなり利用状況には厳しさがあるのは気がかりなところ。

リバイバル塗装が、歴史の谷を越えて行きます。

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シンテツ・ダウンタウン・アンダーグラウンド。

2023年07月26日 17時00分00秒 | 神戸電鉄

(急傾斜地の住宅街@神戸電鉄・長田駅)

湊川から乗った西鈴蘭台行きの各駅停車を、長田で降りる。湊川から1コしか乗ってない。湊川から長田の駅間距離は1.9km、距離だけであれば歩いても来れそう・・・となるのですけど、標高0mの湊川を出るとすぐさま六甲山地越えに向けての急勾配に差し掛かる神鉄電車。長田までで約70mの標高を稼ぐため、駅間の平均勾配は35‰を超えます。この蒸し暑さの中、とてもじゃないがそんな登り坂を歩いて来れるほど元気はありません。長田の駅は住宅街の中の無人駅。かつては駅員配置だったんでしょうけど、神鉄もだいぶ合理化が進んでると見え。自動改札を導入して駅は無人化、鈴蘭台のお客様センターで集中管理みたいなパターンの駅がほとんどですね。

駅前からは六甲山地に向けての前山を切り開いた住宅街と、海へ続く坂道に高層公団住宅が立ち並ぶ様子が見え、イメージとしては京急で言うところの京急田浦や安針塚とか逸見のような、そんな風景。そしてこの駅の南側には、線路に沿って公団住宅へ続く歩行者用の小道が続いていて、房王子町の踏切を抜けて長田の駅へ入ってくるカーブを抜ける列車を撮る事が出来ます。この長田カーブは神鉄定番の撮影地ですが、カーブの内側には桜並木が続いているので、春の時期には実に良い撮影ポイントになるんでしょうね。湊川からの坂道をスイスイと登って来た神鉄5000系。三田線・粟生線ともこの車両が中心選手って感じで、神鉄初のインバータ制御&オール電動車。山坂の多い線形に対応するため、定速運転のシステムが搭載されています。

神鉄と言えば・・・なこの車両、神鉄1000系。この1000系列は1000・1070・1100・1150・1200・1250・1300・1500etc・・・と各系列に亘り製造年次から仕様から組成から様々な車両が作られていて、そこがまた面白みの一つ。ざっくり言えば1965年の製造開始から1970年代前半にかけて製造された2ドアタイプと、その後に製造された3ドアタイプに分けることが出来ます。高度経済成長の中、沿線の開発ラッシュによる乗客の増加を増備増結で支え、神鉄の中でも一大ファミリーであった1000系列。しかしながら、老朽化と5000~6000系の新車導入による代替わりにより徐々にその数を減らしているのが現状。やって来た1105先頭の小野行き。1000系の中でも、真ん中にサハ車を挟み両側に前パン先頭電動車をくっつけた1100系列が一番カッコいいですかね。

神戸電鉄・中興の祖とも言える車両がこの3000系。自分なんかの小さい頃は、この3000系が「神鉄の最新型電車」であった。特徴的なのは、各車両のドア上にある出っ張りで、ここに物はさみ防止センサーみたいなのが付いていて、乗降の安全を補助する装置ともなっています。1975年から1991年まで16年間に亘る長期間の増備を経ている辺りは、伊豆箱根の3000系とか、中規模の私鉄にはよくある話。この3017編成が1991年に作られた最終増備車ですが、もう30年以上走り続けているんですね。

1000系シリーズ、1300系の4連。準急の三田行き。神鉄の優等列車には特快速・急行・準急と三つの種別がありますが、現行ダイヤだと特快速は有馬線方面からの平日朝の上り2本だけ。前回訪問した際は、夕方の粟生線にも下り特快速とかあったんですけど、コロナ減便の余波ですかねえ・・・ちなみに優等で唯一終日運転されているのがこの「準急」で、長田から鈴蘭台の間の丸山・鵯越を通過するのみのささやかな優等列車になっています。

1151編成のメモリアルトレイン。井の頭線を思わせるような淡いグリーンのカラーリング。神戸電鉄の鉄道開業90周年記念事業として、4連の1360編成が「オレンジ×シルバーグレー」そしてこの1151編成が「スプリンググリーン×シルバーグレー」というかつて使用されていた塗装に身を包んでいます。2018年からの塗装変更なので、もう走り出してから結構長いんだな。神鉄というと、基本的にはオレンジ系のカラーリングで走っている印象が強いので、こんな涼やかな塗色で走っていたとは驚きます。戦後間もないころの一部車両に使われていた塗装なのだそうで。

山に向かって延びて行く住宅街、神戸らしい風景のある長田の街。それも、高級住宅街や異人館が広がる生田や山手のいわゆる「六甲モダニズム」の風景ではなく、どちらかと言えば港で働く労働者や夜のネオンの街で働く人々の暮らしというか、ダウンタウン然としたアンダーグラウンドな切り口の神戸がある。観光客や外国人には決して見せない、しかしながらそれも確かに神戸の顔。そんな少し斜に構えたような街並みを登っていく神鉄電車。昔も今も、庶民の足なのでしょうね。

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メトロに揺られて~新神戸から湊川~

2023年07月24日 17時00分00秒 | 神戸市営地下鉄

(ミナト神戸は坂の街@新神戸駅)

連休初日のひかり533号は西へ。新横浜を6:00に出て、新神戸が8:30少し前なんだから、まあ新幹線ってのは速い。チャーハン弁当とレモンサワーでウトウトして、車販のお姉ちゃんから買ったアイスコーヒーをチューチューしてたらあっという間に着いてしまった。そうそう、ひかり533号、どっちかって言えば始発の新横浜より途中の小田原・静岡からのニーズがかなり高い。どちらからもかなり大勢のお客が乗って来て、そういう需要が多いんだなあって思いましたよね。両駅にとって、新大阪以西へ出る最速の始発列車なのだからさもありなんと言った感じなのだが・・・

新神戸から神戸市営地下鉄へ。神戸に来たのも久し振りだ。久しぶりに来たら、新神戸から谷上に向かう北神急行が市営になっていた。「山を越えて北区」のキャッチフレーズは、当然ながら「北区」と「帰宅」を掛けているのだろうが、北神急行線は六甲トンネルの掘削にかかる建設費が高額でしてねえ。建設した阪急阪神HDの借入負担も重く、運賃が下げられないという話は聞いていましたけど、市営にするというウルトラCで運賃問題を解決。谷上→三宮が550円から280円は圧倒的改革だ。新神戸の駅に停車する神戸市交1000系。神戸の地下鉄と言えば、なこの顔ですが、聞けば8月をメドに現行の主力である6000系に使用車両を統一し、1000系は定期運用を外れてしまうのだとか。神戸市電から引き継いだといわれる独特のカギっぽい車番のフォントがカッコいいです。

神戸市交の1000系は昭和52年の開業当時からの車両ですが、なんか異国情緒ある顔で、神戸らしいクルマだなあと思っていて。自分は未だに海外に行ったことないけど、「ヨーロッパのどこぞの街の地下鉄です」なんて言われたら「そっかー」ってなるくらいの説得力があったんよね。地下鉄の車両ってのは、都市デザインにおいては街の顔たるべきものなので、神戸の車両はその意味では街の雰囲気にマッチしていたと思うなあ。

新神戸から10分ちょっと、湊川公園で地下鉄を降りて地上へ。神戸電鉄湊川駅。前回来たのが平成27年の夏なので、だいぶご無沙汰である。ただ、神鉄の湊川駅の重厚な佇まいは変わっていない。現在の神鉄線は神戸高速線に乗り入れて新開地まで直通しておりますが、名義上の起点は湊川。アタクシ不勉強で、神鉄の湊川の駅ってのは神戸高速線と接続するために地下化したのかと思ってたのだけど、昭和3年の開業当時から地下駅だったのね。もっとも、その当時は今より少し北側の場所の地下にあったらしいのですが。黄色いホンダビートのお姉さん、決まってるね。

いつも地下鉄から神鉄にパッパと乗り換えてしまうだけなので、あまりつぶさに見たことのなかった湊川の駅。かつての神鉄のターミナルだった地下駅の上は、「神鉄横丁」なんていう一軒飲み屋街になっています。土曜の朝っぱらでもあり、当然ながら何の店も開いてはいなかったのだが、それにしても昭和の味わい深いガード下の飲み屋街然とした雰囲気に惹かれる。正確に言うとガード下ではなく地下鉄線上なのだが、三宮で働いてるサラリーマンが、帰宅途中に市電から神鉄に乗り換えるタイミングでちょっと一杯・・・的なね。そういうニーズがあったんだと思う。往時と比べてだいぶお店は間引かれているようですが、勿論現役の飲み屋街なので、夜にネオンが入ればまた雰囲気が違うのかもしれません。

駅の窓口氏から一日フリー切符を購入し、7年ぶりの神鉄行脚。そして、少し薄暗くて陰鬱な感じは7年前と特に変わらない湊川の駅。轟轟と音を立て、少し塗装の褪せたウルトラマンこと3000系が、「K」のマークを輝かせて湊川のホームに滑り込みます。

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夏の関西、ひかりに乗って。

2023年07月22日 19時00分00秒 | JR

(相鉄民の恩恵@新横浜駅)

普段は、横浜行き直通の削減に、東急線の遅延に引きずられての遅延増大と、まあ碌なことのない相鉄新横浜線。東急の下に置かれたかのような我々が相鉄新横浜線の恩恵を受ける瞬間というのが、年に何回あるか分かりませんが「新横浜から新幹線に乗る時」なのは間違いありません。今までは相鉄の始発に乗ってかないと間に合わなかった新横浜始発のひかり533号。お馴染みの神奈川県民の乗り得列車ですが、家を出る時間が20分くらい遅くなりました。早朝時間帯の20分ってデカいよ。朝4時起きが、4時半くらいでもギリギリ間に合うようになったから。

さて、GWからこっち、約70日くらい連休のない日々を過ごして、待ちに待った三連休。前半二日の外出を家族に取り付ける。中国~北九州地方、そして今回は北東北の日本海側と今年も例年のごとくの梅雨末期の豪雨災害は憂うべき状況にあり・・・あまり被害の出ていない地域を中心に行き先をチョイスしたのですが、結局また関西方面に。四国でもよかったんだけど、高速バスの予約が間に合わんでな。関西でも色々あるけど、南紀でオーシャンアローでも撮ろうかな?はたまた近鉄でも濃ゆく撮り尽くそうかな?などと色々考えたんですけど、南紀も大阪市内もお宿が高い・・・!いやはや、コロナ規制解除、インバウンド解放&円安での日本への海外勢流入は引き続きという感じで、結局取れたのは大阪を通り越しての姫路駅前。遠っ。まあ、関西圏の交通ネットワークを考えたらよっぽどの山の中でも行かなきゃ何とかなっちゃうんだけどさ。

相鉄・東急新横浜線が開通してから初めての新幹線。三連休の初日でもあり、どんだけの客が来るんだか未知数だったのですが、6:00発のひかりに続いて6:03に続行で新横浜発の臨時のぞみが出るので、混雑は上手く分散されている感じ。難なく自由席窓側をチョイス。しかし6:00発のひかりに乗るのに駅の売店が5:50オープンというのは少し商売っ気が足らんなJR東海。あれやこれやと品定めして進まない列にやきもきしながら何とか横浜チャーハン弁当とレモンサワーをゲット。総員配置につけたところで新幹線が動き出しました。聞き納め近い、テンテンテンテテン・・・の「BE AMBITHIOUS」のメロディに乗って、「今日も、新幹線をご利用いただきまして、ありがとうございます・・・」のいつものアナウンス。プシュリと開けて、グビリと一口。素敵な旅の始まりです。

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