(ねじり橋・めがね橋@楚原~麻生田間)
三岐鉄道訪問記、東藤原への往復の後は三重のゲスト氏に無理を言って北勢線の楚原付近まで車で送っていただきました。本当だったら伊勢治田から阿下喜まで歩いて楚原まで行こうと思ってたから助かったわあ。時刻は既に夕方、日帰り旅行に残された時間は少なく、ここからは北勢線の土木遺産を急いで見学する事に致します。楚原と麻生田の間の田園地帯に架かる二つの橋・明智川拱橋(きょうきょう)と六把野井水(ろっぱのゆすい)拱橋は、どちらも大正初期の北勢線開業当時に架橋されたコンクリートブロックの橋。まだ大正初期だとレンガ全盛期だと思うんだが、コンクリートブロック積みってのがやっぱお土地柄なのかねえ。あ、「きょうきょう」と言うのは「橋梁」と違うのかって話ですが、「拱橋」は橋の中でも主にアーチ型の橋を指す言葉らしい。
橋の近くまで氏に送っていただき、苦もなくアクセス。
日本の近代産業土木遺産フェチとしてはそれなりの経験を積んだつもりの私ではありますが、まあなんだね、地味だね(笑)。って言ったらミもフタもないんだけど、見て来た正直な感想なんだからしょうがない。下を流れる明智川は夏草に隠れ、夕日射す草叢の向こうにほんのかわいい三連アーチのコンクリート造りの橋。コンクリートアーチ橋の鉄道構造物では北海道のタウシュベツ川とか未完成に終わった根北線の第一幾品川橋梁なんかが有名ですが、あれをうんとミニチュアにしたと言うか。北勢線は言わずと知れた軌間762mmのナローゲージですから、北勢線のサイズに合ったかわいらしい橋と言えば言えるのかもしれない。
ガタゴトとミニチュアのようなナローの旅路は、この辺りからクライマックスなのかな。
員弁川の河岸段丘の縁をなぞるように、キイキイと車体をきしませてゆっくりゆっくりと列車が明智川のアーチ橋を渡って行きます。夕暮れ間近の夏の日差し、実りの秋を前にした田んぼを一足お先に黄金色に染め上げて行きます。夕日がレールとアーチ橋まで届かなかったのが残念だけど、確かに雰囲気はいいよね。
明智川の橋から100m程度楚原寄りにある六把野井水拱橋。
員弁川の水を上流から取り入れ、河岸段丘の上を灌漑し流れて行く六把野井水に架橋されたこのアーチ橋は、灌漑用水に対し斜めにかかっているその作りから「ねじりまんぽ」と呼ばれているそうな。
用水に対して斜めに架かってるから「ねじり」なのかと思いきや、橋自体の構造がねじれている(笑)。
これは明智川の三連アーチ橋の地味さ加減に比べると、分かりやすくすげえ!って思いますよ。
なんつーか、三次元を二次元で表記した場合の遠近感と言うか、規則性があるようでない幾何学的なそのブロック積みがねえ。時空が歪んでる感じがしてどうにも不思議ですねこれ。なんかでこう言うの見た事あるよなあ…と少し考えて思い当たるに、この不思議な感じは「クラインのつぼ」のようだなあ。一個一個の石を組み上げてねじった上で橋としての強度を出すってどういう技術なんだろ?と思って調べたら、レンガや石積みで斜めに橋をかける場合には一番力のかかるアーチの頂点を上部路と直交させる積み方にするため、裾からは頂点を直交積みにするため斜めにねじりながら積み上げて行くものなんだそうな。へえー。
見学を終えて六把野のねじりまんぽに繋がる草むした道を出ると、山並みの向こうに夕日が落ちて荘厳な眺め。
ねじりまんぽは、あたかも不思議空間へのタイムトンネルのように思えたりして…
まじまじと見過ぎて、楚原の駅に向かって歩く目の前の道が少し歪んで見えました(笑)。