(雪の立山、轍を踏んで@千垣駅)
横江から千垣へ、一駅歩みを進めただけで、雪は深くそして激しさを増してきた。雪の行軍、轍を踏んで・・・ではないが、さきほど薄日の差した鋳物師沢で眺めたレッドアローがイカついライトを光らせながら山を下りて来た。雪が凄いと見えて、定刻から5分程度の遅れ。ここまで雪が降ってしまうと、列車の音などは全く聞こえない。放送が入る訳でもないので、よく目を凝らしていないと気付かないうちに電車がやって来る。それにしても、雪の中で雪をずっと見ているのは案外目に来るもので、なんというかこう・・・目がシパシパしてくるね。実際、スキー場などでずっと雪の照り返しを受けていると、雪焼けもそうなんだけど目が紫外線にやられてしまうことがあるらしい。そういうのを「雪目(電気性眼炎)」というのだそうだが。そして、千垣の鉄橋では、大雪にまみれながら三脚を立て、撮影に勤しんでいる同業者がいた。自分も千垣の鉄橋は当然検討したアングルなんだけど、この雪ではひょっとしたら視界が効かずに撮れないのでは・・・と思ってパスしてしまった。素敵な一枚が撮れていたのだとしたら、ご同慶の至りだ。
有峰口。さらに雪は深く。駅へ向かう路地に積もる雪が、その高さを増してゆく。岩峅寺から先、立山までずっと無人駅になっているのだけれど、有峰口は岩峅寺~立山間の唯一の交換駅となっているので、除雪のための保線係員が待機していることがあります。ポイントのトングレールにはヒーターが入ってはいるのでしょうけど、降雪でポイント不転換とかなったら大変でしょうからね。途中の千垣の鉄橋は10km/h程度の超徐行なので、ゆっくりと有峰口の駅に進入する60形。乗客は、カメラを持った数人のマニアのみで、沿線住民らしき乗客の姿はなかった。立山方面で沿線住民が居住しているのってギリギリで本宮辺りまでですけど、有峰口もね、基本的に鉄道で来る人って有峰湖や薬師岳に向かう登山客がほとんど。全く沿線住民の利用がないとまでは言えませんが、基本的に現在はアルペンルートへの観光路線という機能に特化していて、地元住民の流動はごく僅かという状態が続いています。
そんな中で、先日恒例の4月15日のダイヤ改正が発表されました。色々と厳しい地鉄の現状を訴えるような極めて緊縮的な減便ダイヤです。公式から発表された文章を読み、そして実際のダイヤを眺めていて、何とも暗澹たる思いに苛まれるような厳しい内容にクラクラしてしまうのでありますが、現実を見るためにとりあえず内容をまとめておきます。
【本 線】電鉄富山発
(現行)平日70本 土休日68本
(改正後)平日64本(▲6本)土休日45本(▲23本)
【上滝線】電鉄富山発
(現行)平日27本 土休日24本
(改正後)平日25本(▲2本)土休日20本(▲4本)
まず本線と上滝線。両線とも平日は僅かな減便で維持されたものの、大きく縮減しているのが本線筋の土休日のダイヤで、特に電鉄富山口では改正前から▲23本の大減便となります。これは20本あった上市行きの区間運転を7本(▲13本)に削減した影響が大きく、土休日では一番のボリュームゾーンである電鉄富山~寺田間でも30分間隔の時間帯が発生します。終電もこれまでの23:30発上市行きが23:00発と30分繰り上がることにより、東京からの最終の新幹線である「かがやき519号(富山23:12着)」からの接続はなくなりました。また、日中の宇奈月温泉行きの減便により、本線では上市~新魚津間が大きく間引かれ、全日8~15時台で90~120分間隔になります。黒部側では新魚津~宇奈月温泉間で3本の区間運転を設定しているので、あいの風と並行する上市~滑川~新魚津間の利用者減に伴う苦境がダイヤ上からも浮き彫りとなりました。2時間に1本となると、流石に公共交通として利用できる危険水域を超えてきていると思われるのであるが、「対富山」ということを見据えた時に、黒部・魚津・滑川方面からは時間も運賃も本数も圧勝のあい鉄には全く太刀打ちできず、かつ黒部・宇奈月方面は北陸新幹線との競争にも負けてしまったということなのでしょう。
【富山・電鉄富山~魚津・新魚津】
地鉄・・・約1時間780円 あい鉄・・・約25分600円
【富山・電鉄富山~黒部宇奈月温泉・新黒部】
地鉄・・・約1時間20分1,200円 北陸新幹線・・・12分1,470円(自由席特急料金込み)
地鉄側の上市でスイッチバックする線形の悪さはあれど、どう贔屓目に見たところで勝負にならない。特に対黒部の新幹線との落差は、料金こそ地鉄に僅かに軍配が上がってはいるものの、1時間20分と12分では270円の差など爆散してしまうだろう。同時に富山をスタートしたとて、黒部宇奈月温泉に新幹線が着く頃に、地鉄の電車は常願寺川を渡ってまだ越中三郷あたりをウロウロしているのだから。
【立山線】寺田発
(現行)平日28本 土休日26本
(改正後)平日27本(▲1本) 土休日22本(▲4本)
(備考)冬ダイヤでの岩峅寺以遠の部分運休実施 岩峅寺発で平日9:01~14:32、土休日9:01~14:42まで運転なし
そして立山線。寺田発では平日はそこまで本数は変わりませんが、土休日は8時台と16時台が整理されての減便です。そして今回のダイヤ改正で一番衝撃的だったのは、冬ダイヤにおける岩峅寺~立山間の日中部分運休でしょうか(上部時刻表ピンク地が冬ダイヤ運休)。確かに、アルペンルートが閉ざされるこの時期の立山線、もとより岩峅寺から先なぞは細々としたスキー需要(立山山麓スキー場)以外はマニアオンリーの空気輸送なんですけども、ついに大ナタが振るわれることになります。千垣駅から芦峅寺の集落へ向かう立山町のコミュバスも、この冬から定期運行を止め、「要請があった時のみ運行する」というデマンドタイプへの実証実験がおこなわれていて、ようはこの区間は春から秋のアルペンルートの一部として機能すればよく、地元民への公共交通としてのオーダーは相当薄れているのでしょう。勿論冬季の荒天時の除雪対応や日中の保守管理の間合いの確保、単純に行路短縮による乗務員の負担減、冬期の豪雪地帯を走行する消費電力の抑制など、地鉄側にとってもメリットの大きい話であるのだが・・・それと、地味に朝イチの快速急行KB301が消滅してるのね。冬ダイヤでは岩峅寺行きの普通電車になってしまったのは悲しい。
このダイヤ改正。「富山県の交通体系の一元化」「(官営鉄道とは)並行すれども競争せず」「立山貫光」という地鉄の理念が大きく崩れかけているのを目の当たりにして、天国の佐伯宗義翁ならばこの窮地をどう切り抜けようと思うのだろうか。民営鉄道の衰退は時代の流れと諦めるか、それこそさらなる大同団結を目指して、一県一鉄道体制へ向けて舵を切るか。ぜひとも聞いてみたいものである。
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