(市内電車の黄昏時@赤岩口車庫)
市内電車は、きれいに整備された豊橋駅の北口ターミナルから発車します。料金は全線一律150円。じーちゃんばーちゃんと学生と言う地方都市ではおなじみの鉄道利用者を乗せて発車する車両には見覚えが…たぶん元名鉄の岐阜市内線とか美濃町線を走ってた車両ですよねコレ。まあ豊鉄自体が名鉄の子会社だから譲渡の話も早かったんでしょう。
発車した路面電車は駅前大通を走った後、国道259号を左折。官庁街を走って市役所前から国道1号線に入ります。昔は各都市にあった路面電車ですが、現在国道1号の上を走る路面電車はここ豊橋だけ。確かに免許取って一番最初に黄色の矢印信号を見たのは豊橋市内だった事を思い出すのだが、一応教習で教わるけど実生活上ではほぼ出て来ないよな~。緑の矢印信号と同じだと思ってアクセル踏むとマジで路面電車とぶつかりますので、気になる人はもう一度教習所でもらった本を読み直してみてね(笑)。
1号線の上を実にトロトロと走り、東八町から県道4号線へ。東田と言う街を坂道で行くのだが、この坂道が軌道の部分が石畳でなかなか雰囲気が良い。写真を撮ってる時間がないのが残念だが。と言うか目の前に座った意外にもかわいい女子大生を前にして狭い車内ではカメラを出し辛い雰囲気がありw営業所のある競輪場前から、運動公園線が分岐する井原を過ぎると市内電車は終点の赤岩口へ。
赤岩口ではほとんど折り返しの時間もなく、支度をしてすぐ発車して行く駅前行きのモ780型。基本的に豊橋市内線の車両は全面広告のものばかりで、オリジナルカラーが何なのかがイマイチ分かりにくい。1990年代後半に名鉄の岐阜市内線に投入されたものの、10年足らずで名鉄が岐阜市内線から撤退。設備投資としては相当勿体ないと思うのだが、子会社の豊鉄と系列会社の福井鉄道に譲渡された上で二つの会社の車両の近代化に寄与する結果になりました。赤岩口の駅には豊橋鉄道赤岩口分区がありまして、全ての市内線車両の寝ぐらになっております。夕照に光る車庫のレールと、春霞の中で佇む豊橋の路面電車たち。なんだか黄昏気分。
赤岩口の駅。県道の真ん中に狭い狭いホームがあり、駅と言うよりは電停って感じの雰囲気。目の前の道は愛知県道4号線の多米街道と言い、豊橋から多米峠を越えて湖西市北部へ向かう道です。赤岩口はその峠に連なる山が迫った場所にあります。もうすぐ太陽が沈みそうな頃あい、写真を撮る自分の影が伸びて来た。返しはまた渋好みの古ーい車両が来ましたな!モ3200型、昭和31年製の50年選手です。
木製の引き戸に緑色のモケット。重々しいマスコンはディッカー式ですね。マスコンを回すたびに古いテレビのチャンネルを回すようなガリガリガリ!と言う音が響いて、路面電車らしい強烈な吊りかけ音を轟かせながら夕暮れの豊橋の街を賑やかに走って行きます。ちなみに競輪場前駅から運転士が女性に変わったのだが、結構重たそうなマスコンなんで女性には運転しづらい車両なんじゃないのかなあ。とぼんやり乗ってたら電車の直前に道路からはみ出て来た車が!大きな警笛と非常制動でギリギリのところで止まったのだが、あっぶねえ。
夕暮れの豊橋の街を往く古豪3200型が、最新鋭車両のT1000型「ほっトラム」とすれ違う。向こうはアルナ車両の次世代路面電車「リトルダンサー」シリーズ。豊橋鉄道としては80ウン年ぶりの市内線における自社発注車両なのだとか…距離自体も5km程度だし、そんな車両数も必要ないからコストのかかる自社発注は必要なかったんでしょうねえ。ちなみに少し前に町屋駅前辺りを走ってた都電7000型も豊橋に来てますので、ちょっと懐かしかったりする。
豊橋駅前に到着。赤岩口からは片道25分くらいですか。乗降はそんなにないけれど、信号待ちしたり渋滞してたりで意外に時間がかかる。専用軌道がないからしょうがないのかもしれないが…それでも大正14年からかれこれ90年近くの市民の足。車社会のこの三河の地でよく頑張っていると思うのだが、これからも健闘のほどをお祈り申し上げる次第で。
新豊橋の駅に戻ると、すっかり雰囲気は帰宅ラッシュ…
ホームに待つのはしでこぶし&桜編成。先発の桜編成で車を止めてある高師に向かいますが、車内は3両立ち客が出る混雑ぶり。部活帰りの高校生、買い物帰りの家族連れを乗せて、夕暮れ迫る渥美線はどこにでもあるよーな都会の電車の車内風景。ま、一応中京圏にある人口40万近くの都市ですからね。駅ビルで買った家への土産物は「豊橋名物ヤマサのちくわ」。本当なら「知立藤田屋の大あんまき」が良かったんだが、売ってる場所忘れちゃったよ。
夕陽が高師の駅の窓を染めて、どっとホームに押し出された乗客が家路へ。
東三河に90年の歴史を持つ鉄道、豊橋鉄道渥美線&豊橋市内線の旅でした。