映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

クロワッサンで朝食を

2013年09月16日 | 映画(か行)
クロワッサンはスーパーでなく、パン屋で買うものよ。



* * * * * * * * * *

老齢人口の増加は、世界共通であるらしく、
いかに“老い”を生きるか、
そういうテーマの作品がとても多いですね。
いえ、自分がそういう年齢になりつつあるからこそ、
気になってしまうのかもしれません。


エストニアで、長い介護生活の末、母親を看取ったアンヌ。
ちょっと放心状態だったのですが、
あこがれのパリで、家政婦の仕事があると聞き、パリにやって来ました。
その家の主は高級アパートに一人住まい、実に気難しい老女フリーダ。
彼女はエストニア出身で、自由奔放に生きてきたのですが、
まあ、言い換えれば身勝手で、わがまま。
友人らしい友人もいなく、孤独です。

しかし、かつての年下の恋人ステファンだけが、
彼女のことを気遣い、彼女のもとに家政婦をよこしたのでした。
まあつまり、ステファンはフリーダの若きツバメであったわけですが、
その彼も今では立派な中年。



さてフリーダは、アンヌが来た早々、
「家政婦なんか要らない」と、クビを言い渡します。
アンヌがステファンにそれを告げると、
今までもそんな調子で何人もの人が辞めていったことが明かされます。
しかし、このまま何もせず逃げ出すのか、とも。
それで、もう少し頑張ってみようかなと引き返すアンヌ。


パリのご婦人が、クロワッサンを食べたいといえば、
どんなものがいいかもよくわかっていなかったアンヌも、
まあ、田舎育ちで仕方ないのですが・・・。
ああ、そういえばアンヌはフリーダの家で外靴を脱いだのですが、
脱がなくてもいいのだと教えられていました。
日本人でもやってしまいそうです。
少なくとも、部屋履きには絶対履き替えたい! 
エストニアでは室内で靴を脱ぐのが普通だそうで、
親近感が湧いてしまいました。



まあとにかく、少しずつフリーダがアンヌに心を開いて行く、
そういうストーリーです。
でもそれは、単にフリーダがアンヌに歩み寄るというわけではないのですよね。
アンヌの方も、少しずつフリーダのこれまでの人生や、好みや、気性を理解し、
共感していくのです。


老いても自分らしく生きよう。
周りに迎合なんかしなくていい。
本作はそういうメッセージであると思いました。
作中アンヌはフリーダについ、こう言ってしまいます。
「あなたが今孤独なのは、過去のあなたの行いの責任よ。」
まさしく、事実です。
だからといって、いまさら自分を変えられるのか? 
過去を消すこともできないし・・・。
自分のことは自分で引き受けるしかないのだと、
厳しい現実ですが、そのことを受け入れた時にようやく心に平安が訪れる。
そういうものかもしれません。
ただし、既にフリーダにはアンヌとステファンという友人がいるのでした。
お金もあるし・・・。
ウラヤマシイくらいの老後なんですけどねえ・・・。



2012年/フランス・エストニア・ベルギー/95分
監督・脚本:イルマル・ラーグ
出演:ジャンヌ・モロー、ライネ・マギ、パトリック・ピノー、フランソワ・ブークラー
フレデリック・エポー

共感度★★★★☆
満足度★★★★☆


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