武士でも食べなくちゃね。
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戦に焼けた京の町で炊き出しをすることになった新選組、料理ができる者がいない。
滅法まずいその粥に文句をつけた菅沼鉢四郎は、
原田左之助の命により剣を握らぬ「賄方」として新選組に入隊することに。
菅沼は数々の難題に直面しながら、隊士の暮らしや愛憎、組織の矛盾を間近で目にしていく。
「まかない専門」隊士が炊事場から見た、新選組の暮らし、嫉妬、家族愛とは。
食べ、生き、戦い、やがて歴史の波間に消える新選組を新視点から描く。
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門井慶喜さんが描く新選組、というのに興味を持ちました。
ところが本作文庫の解説で「新選組颯爽録」が先に書かれているので
そちらを先に読んだ方が良い、とありました。
が~ん!
でもまあ、実際は、こちらを先に読んでもなんの問題もありませんでした。
本作は、新選組の「賄い方」すなわち料理担当の
菅沼鉢四郎の視点から描かれています。
彼は剣術の腕などは全然ダメ、まさに料理だけが取り柄という男なので、
京の街の治安にも長州藩士の人斬りにも関係してしないのですが、
新選組の内部をよく知っています。
彼の直接の上司に当たるのが原田左之助で、彼のことも詳しく描かれます。
新選組がどんなことを考え、役目に当たっていたのか、生きていたのか、
そんなことが垣間見えます。
私が嬉しかったのは、終盤、渋沢篤太夫が登場したこと。
徳川慶喜に仕え、この度徳川昭武に同行しパリへ旅立つ寸前という所でした。
わ~い、お懐かしい。
会いたかったよ~、吉沢亮くん(違うっ!!)
ここのところは2017年に書かれているので、
大河ドラマに影響されて出てきたわけではないですね。
著者の研究熱心なところがうかがえます。
五代さんもほんのちょっぴり登場。
新選組の物語は幕末期の様々な人物が現れてくるので、やはり面白い。
そして、隊員たちが滅びの道を歩むところがまた、
人々の心を捉えて放さないのでしょう。
「新選組の料理人」門井慶喜 光文社文庫
満足度★★★.5
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