映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ソローキンの見た桜

2020年04月05日 | 映画(さ行)

“今”につながる心と心

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駆け出しのテレビディレクターの桜子(阿部純子)は、
松山のロシア兵墓地関係の取材でロシアへ行くことになっていたのですが、
興味を持てずにいました。
そんな彼女が、当時の出来事と自らの身の上に関連があると知り、
前向きに歴史を追い始めます。



松山に日本初のロシア兵捕虜収容所ができたのが1904年。
日本は世界から一流国として認められようとして、ハーグ条約遵守を意識し、
日露戦争におけるロシア兵捕虜をかなり優遇しました。
ロシア兵は自由に外出ができ、温泉や観劇、遊郭などにも出入りできたのです。
もしかすると貧しい農村の出の兵士ならば、本国の生活よりも豊かな生活だったかも・・・。
そんな中、看護師として働くゆい(阿部純子・二役)は、
戦争で弟を亡くしており、ロシア兵に対しては複雑な思いを抱いていました。

そんな思いを知るロシア軍少尉ソローキン(ロデオン・ガリュチェンコ)とゆいは、
次第に心惹かれていきます。
しかしゆいには親から結婚を決められた相手がいて・・・。

松山には今も、当時捕虜となりながらついにそのまま亡くなった兵たちの墓があって、
地元の人々に大切に守られているのだとか。
日本の若者も見知らぬ国で命を落とした者もいるわけで、
そうしたことを思えば、たとえ敵国の兵士であっても、
その望郷の念や無念さは人々に厳かな思いを呼び起こすものなのでしょう。

そして又ここに描かれるソローキンとゆい。
100年以上昔の美しくもはかない愛が、桜の花とともに描き出されます。
そうした事実を現代の桜子が探り当てる。
なんともロマンティック!!
そして本作はちょうどそのとき、ロシアが帝政から革命へ突き進んでいくそのさなか、
というのがポイントでもあります。
歴史の大きなうねり。
しかしそのような危ういときだからこそ二人は巡り会えたわけです。
時代を超えても、遠い地を隔てても、人を愛する心は変わらないものですね。

<WOWOW視聴にて>
「ソローキンの見た桜」
2019年/日本/111分
監督:井上雅貴
原作:田中和彦
出演:阿部純子、ロデオン・ガリュチェンコ、山本陽子、イッセー尾形、斎藤工

歴史発掘度★★★★☆
ロマンス度★★★★★
満足度★★★★.5

 



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