映画と本の『たんぽぽ館』

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ノースマン 導かれし復讐者

2023年09月14日 | 映画(な行)

毒母!!

* * * * * * * * * * * *

舞台は9世紀。
スカンジナビア地域のとある島国。

10歳アムレートは、父オーヴァンディル(イーサン・ホーク)王を
叔父・フィヨルニルに殺され、
母・グートルン(ニコール・キッドマン)王妃も連れ去られてしまいます。
一人で祖国を脱出したアムレートは、父の復讐と母の奪還を心に誓う。

数年後、アムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)は
ヴァイキングの一員となっています。
フィヨルニルがアイスランドの農場を営んでいることを知り、
奴隷に変装してアイスランドに向かう・・・。

本作は、シェイクスピアの「ハムレット」のもととなった
12世紀の作家・サクソの「アムレート」伝説を元にしています。
ヴァイキングが力を振るった時代の生活や文化がリアルに再現されています。

人々が迷信や暴力、略奪等の混沌の中で生きていた時代。

オーヴァンディルが支配していた国を、その義弟・フィヨルニルが奪ったわけですが、
その後さらにまた別の者が国を奪い、
フィヨルニルは祖国から逃れてアイスランドの辺境の地で農場を営んでいる、
という皮肉な運命も、実にさらりと語られます。
でもまあ、大きな農場の当主として、そこそこ支配的立場にあるわけです。
そこに奴隷としてやって来たアムレート。
しばらくは正体を隠し、復讐のチャンスを狙います。

しかし、驚くべきは終盤の、母・グートルンの吐く言葉。

彼女は決して亡き王にも行方不明の息子にも心残りなどなく、
というよりもそもそも王殺しを焚きつけたのが彼女で、
つまりは彼女は自らの欲望のままに、やりたいようにやって生きていたというわけ。
コワイコワイ・・・。

私には、復讐譚よりもこの魔女的王妃像が心に刺さったのでした。

男の付属物でありがちな、こんな時代の女性にして、
ここまで「自己」中心の強烈な個性には圧倒されてしまう。

ま、それもいいか。

 

<WOWOW視聴にて>

ノースマン 導かれし復讐者

2022年/アメリカ/137分

監督:ロバート・エガース

出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ニコール・キッドマン、
   クレス・バング、イーサン・ホーク、ビョーク、ウィレム・デフォー

暗黒の時代度★★★★★

毒母度★★★★☆

満足度★★★.5



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