映画と本の『たんぽぽ館』

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逃げきれた夢

2024年02月12日 | 映画(な行)

人と正面から向き合うこと

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定時制高校教頭を務める末永(光石研)。

元教え子・平賀南が働く定食屋を訪れ、記憶が薄れていく症状が出て、
支払いをせずに立ち去ってしまいます。

妻との仲は冷え切り、娘は始終スマホにを見ていて会話にはなりません。
旧友石田とも疎遠になってしまっています。
末永は、この病を機に、これまで適当にしていた人間関係を見つめ直そうとします。

末永はごく普通に真面目に仕事を続けてきたつもり。
高校の生徒たちともうまく向き合ってきたと思っています。
けれど、生徒に、いつでも何でも相談するようにと言ってみるものの、
生徒たちはそんなことばは単なるうわべだけのモノとわきまえているようです。
そしてまたそのことを生徒から言われて、確かにその通りだと思い当たってしまう末永。

記憶が薄れていくという症状が現れ、末永は退職を決意します。
それは、症状が酷くなる前に好きなこと、
これまでできなかったことをしようというような思いからではありません。
まあ、普通に、仕事で大きなミスをして迷惑をかけないように、とのことなのでしょう。
(実際の心境は語られないのですが)。
つまり、特別にやりたいことなど何もないのです。
けれどこのときになって、自分はこれまで
誰とも正面から向き合ってこなかったことに気づくのです。

さてさて、これはこの物語の末永の話。
けれど、多くの人がこんな風なのではないかなあ・・・と思えるのです。
少なくとも私はそうかも知れない。
たとえ病がきっかけではあっても、そうしたことに気づいて、
新たな一歩を踏み出せたのなら、それでオーライなのかも。

実に淡々と進む物語ですが、大切なことをいっていますね。

<Amazon prime videoにて>

「逃げきれた夢」

2023年/日本/96分

監督・脚本:二ノ宮隆太郎

出演:光石研、吉本実憂、工藤進、坂井真紀、松重豊

 

男の生き方度★★★★☆

満足度★★★.5

 



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